「パンデミックのさなかに慈善団体への寄付額が増えた」という意外な研究結果が報告される

GIGAZINE
2022年04月29日 20時00分
メモ



新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、多くの人が身近な人を失ったり、家族や友人に会えない時間に苦しんだりしました。また、仕事を失うなどして収入を絶たれた人も少なくありません。しかし、そんなパンデミック期間中に慈善団体が受け取った寄付の額を調べた研究により、パンデミック期間中の慈善団体への寄付額は減るどころか増えていたことが分かりました。

Increased generosity under COVID-19 threat | Scientific Reports
https://www.nature.com/articles/s41598-022-08748-2

Giving Increased During the Pandemic in Areas Hit Hardest by COVID-19
https://ucsdnews.ucsd.edu/pressrelease/giving-increased-during-the-pandemic-in-areas-hit-hardest-by-covid-19

カリフォルニア大学サンディエゴ校で行動マーケティングを研究しているアリエル・フリッドマン氏らの研究チームは、パンデミック初期にトイレットペーパーやマスク、消毒液などの物資を買い占めるという思いやりのない行動が顕著に見られたことから、危機的状況であるパンデミックが人の自己中心的な行動にどのような影響を与えるかの研究に乗り出しました。

新型コロナウイルスパニックによるトイレットペーパーや消毒剤の買い占めが海外でも発生、闇市場が形成される可能性も – GIGAZINE


調査を開始したフリッドマン氏らはまず、ジョンズホプキンス大学が公開している新型コロナウイルス感染症による死亡者のデータを元に、パンデミックの脅威度が高かった地域を洗い出しました。そして、慈善団体の財政状況などをとりまとめている団体であるCharity Navigatorのデータと照合して、パンデミックの影響が強かった地域で慈善団体への寄付がどのように変化したのかを分析しました。

その結果、2020年3月~8月の調査期間中にパンデミックの脅威度が高かった郡の78%で、慈善団体への寄付額が増加したことが明らかになりました。パンデミックの脅威度が低かった郡でも寄付額は増加していましたが、その割合は55%でした。つまり、パンデミックの脅威度が高い地域ほど慈善団体への寄付が増加する傾向があったことになります。

慈善事業の種類ごとに見ると、ホームレスの人や飢餓に苦しむ人の保護、高齢者や幼児への福祉活動などを行っている団体に対する寄付が特に大きく増えていましたが、教育や環境問題など、他のあらゆるカテゴリの慈善団体への寄付も増加していたそうです。

この結果は、フリッドマン氏らの予想を大きく裏切るものでした。なぜなら、経済状況が悪化すると人々は利己的な行動を増加させるという先行研究と明らかに矛盾していたからです。この点について、フリッドマン氏は「調査期間中にアメリカ人の大半が経済状況の悪化に見舞われていたことを考えると、驚くべきことです。例えば、2008年の金融危機の際には慈善事業への寄付が減少しました」とコメントしました。


Charity Navigatorのデータには、寄付の理由も含まれており、これにより「誰かをしのんで」という理由で行われた寄付の割合は、パンデミック以前と比べて有意に増えていたことが分かりました。これは、人々がパンデミックのさなかに亡くなった人や、パンデミックの影響を受けた人に敬意を払うために寄付をしていたことを示しているとのことです。

寄付が増えた理由について、研究チームは論文の中で「パンデミックにより同情の気持ちが高まった結果、人々はより多くの寄付をしようと思ったのかもしれません。また、自分ではどうすることもできないと感じる状況の中で、自分の主体性を取り戻したいと願った可能性もあります。あるいは、パンデミックにより死を身近に感じるようになったことや、ストレスを多く感じる中でポジティブな感情に接しようと思ったことが寄付につながったとも考えられます」と述べました。

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