もっとすっぱいお酢に出会いたい

デイリーポータルZ

昔からお酢がすきだ。

普段からラーメン屋チャーハンにかけて嗜んでいる。

コンビニのあんかけ焼きそばを買う時だって、付属のパックのお酢じゃもちろん物足りないので、常備しているミツカン酢1L瓶で必ず追いお酢をする。

お酢がすきな気持ちに体がついていかず、おいしいと思っているのにむせてしまうこともしばしばである。

そんなお酢好きの筆者が抱える夢がある。

もっとすっぱいお酢に出会いたい。

ということで、普段ミツカンだよりの筆者がお酢8種を味わい、すっぱいお酢を探してみました。

お酢のカルチャーショック

すっぱいお酢があるんじゃないか、と思い始めたのは大学生のころ、ドイツに留学していたときである。

現地のスーパーで買ったお酢が、日本で慣れ親しんできたミツカン酢よりすっぱいような気がしたのだ。

自炊したジャージャー麵に、いつものようにたっぷりとお酢をかけて啜ったところ、かなり盛大に噎せてしまった。

なんというか、するどいすっぱさで、喉にカーッとくる感じがあったと記憶している。

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留学時代に愛用していたお酢。ハインツのホワイトビネガー

黒酢がなんとなくマイルドであまりすっぱくないな、と感じていたことはあった。

でも、ここまで明確にすっぱさの種類を意識したことがなかった。かなりのカルチャーショックだった。

酸度というものがあるらしい

と、こんなエピソードからすっぱいお酢を探したいです、と担当編集の古賀さんにご相談したところ、「どうやら酸度を公表しているお酢があるようです」と教えてもらった。

酸度……?と思いながらミツカン酢を手に取ると確かに書いてある。

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アルコール度数みたいにさらっと書いてある。知らなかった。

酸度の記載のあるお酢を輸入スーパーでいくつか購入した。

わざわざ輸入スーパーにいったのはすっぱさを意識した初体験から、外国のお酢のほうがすっぱい説を導き出したからだ。

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穀物酢(ミツカン)、ホワイトビネガー、モルト酢、赤ワイン酢、白ワイン酢、リンゴ酢、白バルサミコ酢、バルサミコ酢。

ちなみにいろんなお酢の特徴やおいしい嗜み方についてはネッシーあやこさんが連載で紹介してくれている。是非お読みいただきたい。

今回集めたお酢の酸度並べてみるとこんな感じ。

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ワイン酢やバルサミコ酢といったぶどうの入っているものの酸度が高いようだ。ミツカンの穀物酢とバルサミコ酢では1.8%酸度に違いがあるが、この差が大きいのか小さいのか、よくわからない。

ホワイトビネガーのすっぱさに驚いた身としてはもっと大きな差が出るのではと思ったが、拍子抜けなデータだ。どうして……。

pHと酸度の違い、そして糖度というトラップ

そもそも酸度ってなんだ。「酸」といえばpHが思いつくが、pHとは違うのか。調べてみた。

pHは酸性・アルカリ性の度合いを数値で表している。

酸度はお酢や果実のなかに酸の成分がどれくらいの比率で含まれているかを表すようだ。

じゃあ、酸度が高ければpHの値も酸性寄りの値を表すんじゃないかという気がするが、そうでもないらしい。

酸度計メーカーの株式会社アタゴのサイトにはこうある。

実は、pHと酸度は関係がありますが、考え方が異なります。
pHは溶液中の水素イオン(H+)濃度です。

塩酸のような強酸の場合、pHからおおよその酸度を予測することはできますが、有機酸など弱酸の場合、pHから酸度を予測することは困難です。

たとえば、糖度は同じで酸度が異なるオレンジAとオレンジBがあり、片方はとてもすっぱく感じたとします。

しかし、オレンジAとオレンジBの酸度や味覚が大きく違っても、pHの値はそこまで大きく違うことはありません。
(引用元:https://www.atago.net/guide_acid/faq.html

炭素の含まれた有機酸はpHの厳密な予測が難しいらしい。

炭素が含まれるものってもうほぼすべての食べ物のことである。

そしてこれら有機酸は弱酸と書いてあるが、つまりはpHが3以上6未満のものということだ。

人が口にできる程度のすっぱさのものはpHにそこまで大きな違いはなくて、このpH3~6(未満)のうちのどれに当てはまるかを言い当てるのは難しいってことだ。なるほどそりゃそうか。

あと、「このみかんすっぺ~!」と「わ~あたりだ、あま~い!」のみかんが同じ糖度である場合もあるということに驚きが隠せない。

となるとさっきのお酢たち、酸度が同じでも糖度が高ければマイルドに感じるし、低ければストレートにすっぱいということだろう。

うおー!なんか理解してきたぞ。

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甘みを感じるバルサミコ酢には濃縮ぶどう果汁が入ってる。これはぶどうの糖度が影響してるということだろう。
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一番すっぱいのはどいつだ味くらべ

ここまで調べて思ったこと。結局信じられるのは自分の舌だけ。

単体で舐めるだけだと面白くない。というか途中でわからなくなってしまって評価ができない気がする。

今回は餃子のタレとピクルスのつけ汁として使用して味を比較し、各お酢の簡単な所感と、料理とのマッチ度、甘味~酸味を座標に表した。

お肉との相性がモノを言う~餃子のタレ部門~

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餃子を囲むお酢たち。儀式でも始まりそうだ。

なるべく酸味をわかりやすく感じるためにお酢+白コショウのみ。

結果をお見せするとこんな感じだ。

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・ハインツホワイトビネガーの酸味がやっぱり強い!コショウ多めでパンチの利いた最高の味に
・赤ワイン酢のお肉との相性抜群さ。さすがです。
・リンゴ酢のさわやかさが餃子に微妙に合わない。にんにくなし餃子には合うかも
・バルサミコ陣の甘さがすごい。お酒に合う。

多少予想はしていたものの、同じお酢でここまで違うかとかなりの衝撃だった。

図に表してみると、やはり同じ酸度でも、酸っぱさの感じ方が全然違う。果実味があるほど甘さを感じるのだ。

実はモルト酢もミツカン酢も同じ穀物酢なのだが、モルト酢の方が深みとうまみを感じ取ることができた。まろやかな酸味であるところは似ている。

黒いバルサミコ酢は白コショウの主張をまるっと打ち消していたのだが、タバスコと合わせて水餃子で食べたら絶対おいしいだろうな、という発見もできた。

おいおいお酢、楽しいぞ。このまま次に行ってみよう。

バルサミコの甘さ本領発揮~ピクルス部門~

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きゅうり、にんじん、大根、パプリカ、トマトのピクルスたち。

つけ汁のレシピは萩野菜の洋風味のピクルス液を参考にした。酢の他に使ったのは砂糖とハーブ類のみだ。

餃子は肉の脂とのマリアージュだが今回は野菜との相性だ。結果はこちら。

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・ハインツホワイトビネガーの安定感。すっきりとして大人向け
・モルト酢の深みとコクが心地いい。これだけで一晩中飲めちゃう
・赤ワインがびっくりするほどすっぱい。甘みもあるが圧倒的にすっぱい。スパイスとの相性抜群
・バルサミコ陣、めちゃくちゃ甘い…!!!少し温められた分、酸っぱさがふっ飛び、もはや甘さしか感じない。

ミツカン、モルト、ホワイトビネガーといった非果実由来のものは餃子部門とあまり変化がなかった。

対照的にリンゴ酢、ワイン酢の変わりようがすごい。

同じぶどうを使った赤ワインとバルサミコ酢で正反対の結果となった。酸度も同じなのに。

正直、黒い方のバルサミコ酢に関してはちょっと食べきるのが厳しいと思ってしまうくらいに甘い。そして見た目のインパクトがすごい。

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柴漬け?いいえ、とってもあまいピクルスです。

そもそも甘めのお酢に、砂糖が合わさり、さらにほんのり加熱したことでどえらいことになった。トマトなんてほとんどスイーツだ。

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8つの瓶にぎっしり詰め込んだピクルスたち。しばらくつまみに困らないぞ。

お酢の「すっぱい」は何と食べるかで変わる

ここまでのまとめとして、お酢に関して3つのことが分かった

  • 同じ酸度でも感じるすっぱさが違う(糖度の影響)
  • 果実由来のお酢は合わせる食べ物ですっぱさが変わる
  • バルサミコ酢はずっとあまい

そして筆者の舌頼りにはなるが、結果として、ハインツのホワイトビネガーは餃子と合わせても、ピクルスにしてもすっぱさが強いことがわかった。やっぱりミツカンよりすっぱいお酢はあったんだ!

すっきりとしたストレートな酸味がすきなので、今後の愛用酢はホワイトビネガーとしたいと思う。推しお酢ができました。

ピクルスはだいたい何に入れてもおいしい

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刻んだピクルスをたっぷりいれたブリトー。美味です。

 

残されたピクルスたちは少しずつ、サラダにしたり、ブリトーに入れたりしておいしくいただいている。

カレーの福神漬け代わりにも使えるし、刻んでマヨネーズと混ぜたらタルタルソースだってできちゃう。うれしい。また作ろう。

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