ロシア経済の崩壊が「ドミノ倒し」のように次の世界的な経済危機につながる可能性

GIGAZINE
2022年04月10日 20時00分
メモ



GDPで見ると、ギリシャの経済は日本の埼玉県を少し上回る規模ですが、ギリシャが債務不履行(デフォルト)寸前に陥った2010年のギリシャ経済危機はヨーロッパ全土の危機、ひいては世界的な金融問題に発展しました。ギリシャよりはるかに経済の規模が大きいロシアが、2022年2月からのウクライナ侵攻に対する制裁などで破綻した場合に発生しうる事態について、経済学者が解説しています。

Could the Ukraine invasion spark a global financial crisis?
https://theconversation.com/could-the-ukraine-invasion-spark-a-global-financial-crisis-178340

ロシアによるウクライナ侵攻に対し、西側諸国はロシア企業やオリガルヒと呼ばれる財閥の資産凍結、国際決済システム「SWIFT」からの締め出し、ロシア中央銀行が持つ約6300億ドル(約77兆円)の外貨準備の凍結といったさまざまな経済制裁を打ち出しました。

このような動きを受けて、複数の格付け会社がロシア政府が発行する国債の信用格付けを「ジャンク」に引き下げることを決定したか、近日中に引き下げる予定としています。ウェールズのカーディフ・メトロポリタン大学で経済と金融を教えているナシル・アミヌ氏によると、ロシアの格付けがジャンクに引き下げられるということは、ロシアがデフォルトに陥る可能性が高まっているとの認識が反映されたものだとのこと。これを裏付けるかのように、国際金融協会はロシアがデフォルトになる可能性が「極めて高い」との見方を示しています。


もし、ロシアがデフォルトした場合、真っ先にあおりを受けるのがロシア向けエクスポージャー、つまりロシアへの債権を保有している世界各国の金融機関です。特に影響が大きいのがヨーロッパの銀行で、国際決済銀行(BIS)の統計によると、フランスとオーストラアの銀行がロシアに対して保有する未払いの債権は約250億ドル(約3兆円)、イタリアの銀行は約175億ドル(約2兆円)あるとのこと。また、ロシアだけでなく、ロシアの攻撃で国中が大打撃を受けたウクライナにもデフォルトのリスクがあります。

ロシアがデフォルトし、ロシアに資金を貸していた銀行の債権が回収不能になると、その銀行の支払い能力が危ぶまれるようになります。これが原因で、銀行が互いへの融資を渋るようになると、世界金融危機の時に発生したような流動性危機、つまり信用不安から銀行の取引が収縮してしまう問題が引き起こされる可能性もあると考えられています。

世界各国の銀行が保有している資産全体から見れば、ロシアやウクライナ向けのエクスポージャーの金額はごくわずかなので、仮に両国がデフォルトしても各国の銀行が受ける直接的なダメージはさほど重大ではないとされています。それでも、欧州・アメリカ・日本の銀行が受ける損失は合計で1500億ドル(約18兆6000億円)にのぼるとされているため、影響は避けられません。また、スイス・キプロス・イギリスなどの銀行は、海外に資産を保有しようとするロシアのオリガルヒの預金を大量に引き受けているため、制裁によりロシアからの資金が入らなくなると、そうした金融機関の業績が大きく悪化する可能性もあります。


銀行だけでなく、ロシアと関係があるほかの業界の企業も、ロシアとウクライナの戦争によって大きな損害を受けます。なぜなら、制裁によりロシアと自国との経済的な結びつきがなくなれば、それらの企業がロシアに所有している資産や、ロシア企業との間の取引も失われるからです。

例えば、イギリスの石油会社であるシェルやBPなどは、ロシアにある資産を売却すると発表しているほか、ロシアの石油会社に多額の出資をしているスイスのグレンコアといった企業も、資産の売却を検討中としています。しかし、これらの資産に妥当な値段がつかず、二束三文で手放すことになれば大きな痛手となります。

そして最も危険なのは、ロシアの戦争によって損害を被った企業の株が下落してパニック売りが行われ、ドミノ倒しのように世界経済が崩壊することです。前述の世界金融危機も、アメリカの投資会社であるリーマン・ブラザーズが経営破綻したことを発端とする危機、いわゆるリーマンショックが大きな要因の1つでした。

アミヌ氏は、最後に「要するに、この戦争がもたらす波及的な影響は甚大だということです。今後、短期間のうちにさらに多くの問題が表面化するでしょう。世界経済は新型コロナウイルス感染症のパンデミックからまだ立ち直っておらず、すでに大幅なインフレ、つまり物価の急激な上昇に見舞われており、金融市場も非常に不安定な状態です。ロシアのウクライナ侵攻がこうした状況の悪化に拍車をかけているので、金融界は今後の展開に神経をとがらせることになるでしょう」と述べました。

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