「別のコマをコントロールする」という12色112個のコマを使った超複雑なチェスの新しい遊び方「ソブリンチェス」のルールを徹底解説

GIGAZINE



数学教授マーク・ベイツ氏によって考案された、通常のチェスルールを拡張した新しいチェスの遊び方が「ソブリンチェス」です。ボードの大きさは通常の4倍、白と黒に加えて10色のコマが追加されており、一番のポイントは「他の色のコマをコントロールできるようになる」というものです。2人対戦と4人対戦が可能ですが、今回は2人対戦のルールを解説します。

SC Rules — Infinite Pi Games
https://www.infinitepigames.com/sc-rules

How to play Sovereign Chess – YouTube
[embedded content]

◆ボードとコマ
通常は8×8のボードでプレイされるところ、ソブリンチェスは16×16のボードでプレイされます。使用されるコマは合計112個で、その内訳は以下の通り。

・無彩色コマ
白、黒:キング1個、クイーン1個、ルーク2個、ビショップ2個、ナイト2個、ポーン8個。
灰色、スレート(暗い灰色):クイーン2個、ルーク2個、ビショップ2個、ナイト2個。灰色とスレートのコマは4人対戦時のみ使用します。

・有彩色コマ
ピンク、赤、オレンジ、黄、緑、シアン、ネイビー、バイオレット:クイーン1個、ルーク1個、ビショップ1個、ナイト1個、ポーン4個。

配置図は以下の通りです。e1~l1、e2~l2には白のコマ、e15~l15、e16~l16には黒のコマを通常のチェスと同じように配置。他のコマをボードの周囲を取り囲むように配置します。また、ボード中央付近のマスにはコマと対応する色が塗られており、ここに自分のコマを到達させれば色に対応するコマをコントロールできます。

by PiGuy216

色のパターンは中央を挟んで点対称になっているため、向かい合うプレイヤーが各色に等しくコマを到達させられるようになっています。ゲーム開始時、プレイヤーが動かせるのはメインカラーである白もしくは黒のコマのみ。他の色は「ニュートラル」として扱われます。

◆基本ルール
ソブリンチェスの最大の特長が「他の色のコマをコントロールできる」というもの。色付きのマスに自分がコントロールするコマを置けば、色に対応するコマをコントロールできます。

以下の図を見ると、白のポーンがネイビーのマス(e5)とピンクのマス(i6)に置かれているのが分かります。このため、白のプレイヤーは白に加えてネイビーとピンクのコマをコントロールできます。また、ピンクのポーンがシアンのマス(k9)に置かれているため、ピンクのコマをコントロールする白のプレイヤーはシアンのコマもコントロールできます。


次に黒のコマを見てみます。黒のポーンが赤のマス(e12)に置かれており、赤のポーンが緑のマス(k11)に置かれているため、黒のプレイヤーは黒、赤、緑のコマをコントロールすることができている状態。なお、黒のクイーンが中央の白のマスに置かれていますが、白のコマは白のプレイヤーのメインカラーであるため、黒のプレイヤーがコントロールを奪うことはできません。


コントロールには重要なルールがいくつか存在します。まず1つは「色付きのマスからコマを外した場合、コマのコントロールを失う」というもの。例えば白のコマをネイビーのマスに、ネイビーのコマを赤のマスに置いた状態で、ネイビーのマスから白のコマを動かすと、ネイビーのコントロール権を失います。そして、ネイビーのコマによってコントロールされていた赤のコマのコントロール権も同時に失うことになります。

もう1つは「ある色マスにコマが置かれている場合、同じ色のもう1つのマスにはコマを置くことができない」というもの。これはコマを置いているのが自分でも相手でも同様で、例えば以下の場合、黒のポーンが赤のマス(e12)に置かれているため、白のプレイヤーはもう1つの赤マス(i5)にコマを置くことができません。白のプレイヤーが赤のコマをコントロールするためには、相手がコマをe12から外すまで待つか、自分のコマでe12のコマを取りに行く必要があります。


最後は「コマと同じ色のマスにはコマを置けない」というルール。例として以下のように相手(白)のキングを取れる距離にいるルークですが、黒のマスに黒のコマは置けないというルールから、実際にキングを取ることはできません。


加えて「コマを取る」という動作にも制約が課せられます。各プレイヤーは「相手がコントロールしているコマ」のみ取ることが可能で、誰にもコントロールされていないコマを取ったり、自分がコントロールしているコマ同士で取り合ったりすることはできません。

◆コマの動かし方
コマの動かし方は基本的に通常のチェスと同じ。ただし、ゲーム開始時、先手のプレーヤーは最初に必ず白のコマを動かし、後手のプレイヤーは黒としてプレイするか、白としてプレイするかを選択するというルールになっています。黒を選択した場合は通常通り黒いコマを動かします。白を選択した場合は相手が動かしたコマを受け入れ、順番を相手に譲り、その後は通常通り交代にコマを動かしていきます。相手がコントロールするキングをチェックメイトしたプレイヤーの勝利です。

クイーン、ビショップ、ルークが移動できるのは8マス先まで。8マスを超えて移動することはできません。


最も複雑な動きをするのがポーンです。通常であれば前進(直進・斜め前移動)しかできないポーンですが、ソブリンチェスでは「前進あるいは横移動」が可能。ただし、「必ず中央に向かって移動する」という制約が課せられます。

ソブリンチェスのボードには、以下に赤枠で示すとおり十字型に茶色の補助線が引かれています。ポーンはこの補助線を頼りに、中央から離れないように動かす必要があり、また補助線を越えて動かすことはできません。ただし「相手のコマを取る」という動きの時は例外で、この場合のみ補助線を越えて動かすことが可能です。


また、ポーンは通常「初めて動かす場合」のみ2マスまで動かせるという特性を持っていますが、ソブリンチェスでは「ポーンが最外周(a1~p1、a16~p16、a1~a16、p1~p16)およびその1つ内側の周(b2~o2、b15~o15、b2~b15、o2~o15)に位置しており、かつ最も近いボードの端から離れるように動かす場合」のみ2マスまで動かせます。


ポーンの動かし方の例が以下。赤枠1のポーンは補助線に隣接しており、白い矢印で示すとおり補助線を越えず、中央から離れない方向にのみ進むことができます。ただし黒い矢印で示すとおり、他のコマを取る場合のみ補助線を越えることができます。赤枠2のポーンは最外周の1つ内側の周に位置しているため、最も近いボードの端(この場合手前)から離れる場合のみ2マス移動できます。


ポーンが中央の4×4マスに到達した場合、プロモーション(成る)を行う必要があります。ソブリンチェスの場合はクイーン、ビショップ、ナイト、ルーク、キングに昇格させることが可能。メインカラーのポーンをキングに昇格させた場合、すでにコントロールしているキングを直ちにボードから除外します。これを「クーデター(Coup d’Etat)」と呼びます。

なお、ソブリンチェスにおいてアンパッサンは禁じられています。

キャスリングは通常通り同じランク(横列)にいるルークとキングで行うことができ、自分がコントロールするものであれば別の色同士で行うこともできます。


◆レジーム・チェンジ
元からあったキングを消し、別のキングを誕生させることを「レジーム・チェンジ」と呼びます。レジーム・チェンジには「クーデター」「転覆(Overthrow)」「亡命(Defection)」の3種類があります。

・クーデター
前述のプロモーション(成る)を指します。

・転覆
プレイヤーがメインカラー以外のポーンでプロモーションを行う時、そのポーンと同じ色のキングに昇格させることができます。これを「転覆」と呼び、それ以降昇格したキングの色がプレイヤーのメインカラーとなります。そして、それまでコントロールしていたキングは直ちにボードから除外します。メインカラーとなったコマは常にコントロール可能で、例えメインカラーのマスからコマを外したとしても継続してコントロールできます。ただし、それまでコントロールしていたメインカラーのコマは自分のコントロール下から離れることになります。

・亡命
自分がコントロールするキングを、自分がコントロールする別の色のキングへと変更することを「亡命」と呼びます。亡命は自分の手番にのみ、コマを移動させる代わりに行うことができ、1度亡命を行った時点で手番が終了します。1ゲーム中の亡命宣言回数に制限はありません。また、亡命によるキングの変更はキャスリングのルールである「キングが1度も移動していないこと」にはカウントされないため、キングとルークをゲーム開始時の位置から動かしていないのであれば、亡命を行った後にキャスリングを行うことが可能です。

なお、「亡命を行うことでコマが同じ色のマスに立ってしまう」というパターンがあり得ます。例えばオレンジのマスに黒のキングを置いてオレンジのコントロールを奪い、続いてキングを黒からオレンジに変更するという場合。この場合オレンジのキングがオレンジのマスに立っていることになるため、オレンジのキングを直ちに1手動かす必要があります。動かすことができない場合、亡命を宣言することはできません。


レジーム・チェンジで重要になるのが前述の「メインカラー」という考え方。先の図では「白のコマは白のプレイヤーのメインカラーであるため、黒のプレイヤーが白のマスにコマを置いたとしても、白のコマのコントロールを奪うことはできない」ということを説明しました。しかし、白のプレイヤーが転覆や亡命を行って別の色をメインカラーとした場合、それまでメインカラーを務めた白のコマが手元を離れるため、黒のプレイヤーがメインカラーではなくなった白のコマをコントロールすることが可能になります。白のプレイヤーが再び白のコマをコントロールするためには、白のマスに自分のコマを置く必要があります。


以上のルールにのっとり、相手のキングにチェックメイトを行えばゲームに勝利します。

なお、ソブリンチェスのボードとコマはベイツ氏が立ち上げた公式サイトから購入可能ですが、記事作成時点で売り切れています。


この記事のタイトルとURLをコピーする

Source

タイトルとURLをコピーしました