「蒲焼さん太郎」を焼き「ビッグカツ」を揚げる

デイリーポータルZ

ある日突然「揚げたてのビッグカツが食べてみたい」、そう思いました。

どうすれば食べられるかな? ……あれ? もしかして、そのまま油で揚げてしまえばいいのでは? だって揚げ物には「二度揚げ」という手法があるくらいだし。

駄菓子の本気が見てみたくて

世のなかにはさまざまな料理モチーフの駄菓子がありますが、なかでもビッグカツって、かなり再現度が高いと思うんです。特にこの、サクッとした衣の感じ。そりゃあ揚げたての揚げものには及ばないけど、常温で保存しておけるお菓子でこの雰囲気再現度はすごくないですか?

ところで先日、とある福井料理のお店へ行った時のこと。福井には「ソースカツ丼」というご当地グルメがあり、そこからごはんを抜いた、いわゆる“アタマ”だけの「ソースカツ」というおつまみメニューがありました。

とんかつといえば肉厚至上というイメージがあるかもしれませんが、福井のソースカツ丼って、あえて薄くスライスした豚肉に目の細かいパン粉をまぶして揚げることで、軽快な美味しさに仕上げてるんですよね。

それを食べていたら、これはうまいなぁと。むしろ酒のつまみには、お腹にたまりづらいこっちのほうがいいんじゃないかと。そんなことを思ったと同時に、こうも思ったんです。

「なんか、ビッグカツ思い出すな……」

って。いや、本気の料理と駄菓子を比べるのは失礼なのかもしれませんが、ふと連想されたというか。で、さらに思った。

「揚げたてのビッグカツ、食べてみたいな……」

って。

じゃあどうしたら食べられるのか? 「揚げたて食べさせてください!」と工場見学を申し込むという手が真っ先に思い浮かぶし、いずれはデイリーポータルZの取材でぜひとも思うけど、取り急ぎもうちょっと手軽な方法はないだろうか? するとなんと、「おうちdeビッグカツ(ビッグカツの肉)」という、まさになコンセプトの商品が発売されたこともあるようですが、どうやら現在は販売されていないよう。

そこで思いつきました。じゃあもう、そのまま揚げちゃえばよくね? ほら、揚げものには「二度揚げ」って手法もあるわけだし。

そうと決まれば、よ〜し揚げちゃうぞ〜! とお菓子屋に向かった僕。目当てのビッグカツを見つけ、手に取ったわけですが、すぐ横の棚からなにやら声が聞こえます。

「……てくれ〜。おれのことも……焼いてくれ〜」

見るとそこには、「蒲焼さん太郎」の姿が! そうか、ビッグカツを揚げたてにできるなら、蒲焼さん太郎を焼きたてにだってできるわけだ。というか、急に見てみたくなってきたぞ。いろんな駄菓子たちの「本気」が!

焼きたて「コーラ餅」

というわけで「今回は駄菓子の本気を見てみたいんです!」と担当編集の古賀さんにご提案してみたところ、例のごとくご快諾をいただきまして(逆になにを提案したら断られるのかが知りたい)、ついでに聞いてみました。「他に本気が見てみたい駄菓子、ありますかね?」って。すると「あの、ほら、なんか、餅! 小さい餅ありませんでしたっけ?」とのご返答。

餅? 餅の駄菓子なんてあったっけ? 餅太郎? とよくよく話を聞いてみると、これのことでした。

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「コーラ餅」「メロンソーダ餅」「グレープ餅」

いや〜笑った。存在はもちろん知っていたけど、そうか、君らって餅ジャンルだったんだ。イメージなさすぎてすっかり忘れてたよ。っていうか、「コーラ餅」っていう日本語、ちょっと冒険がすぎるんじゃないか?

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食べものとしても不思議すぎる

なんて思いつつ食べてみると、これがなんというんでしょう、昨今の進化しまくったグミなんかを想像していると衝撃を受ける、いぶし銀の渋み。それぞれ酸味はまったくなく、甘く、固く、噛んでいるとやがてにちゃっとしてきて、最後にほんのりとそれぞれのモチーフの香りがするという、ノスタルジー満載の味。

こいつを焼きたてにしてやると、一体どうなるんだろうか?

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ここで「グリさらパン」

今回は万能グリさらパンを使い、魚焼きグリルで焼いてみようと思います。グリさらパンに薄く油を塗ったら各種餅たちをばらまき、スイッチオン。

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中火3分ほどでこんな状態に

わはは! サイズもおかしい。色味もおかしい。だけどよく見ると、ちゃ〜んと“焼きたての餅”してる! いよいよなんなんだこの食べものは。

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うまくつかまないとびよ〜んとのびる感じも、餅
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焼きたての「コーラ餅」「メロンソーダ餅」「グレープ餅」
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ぷっくりとふくれててかわいい

こいつらをなるべく熱々のうちに食べてみると、おおっ! まず食感。ものすごく柔らかくなってます。ふわっとして、ほくっとして、噛んでいるといつもものにちゃっに戻っていく感じで、常温より食べやすいことは間違いありません。君たち、本当にけっこう餅だったんだなぁ……。さらに、温めたんだから当然ではありますが、甘みや香りの広がりが常温とは段違い!

結論、駄菓子の「〇〇餅」は、焼いたら餅に近づき、個人的には焼いたほうが好き。ただし、そこまでの手間をかけるべきかどうかの判断は、今後の課題。

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焼きたて「蒲焼きさん太郎」

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「蒲焼きさん太郎」

続いてはいよいよ、焼いてほしそうにこちらを見ていた「蒲焼きさん太郎」の登場。甘辛い蒲焼き風のタレ味とパリパリ食感が特徴ですが、はたしてどうなる?

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せっかくなので、はけで「追いダレ」をしてから
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焼いていきましょう

今回も中火3分で

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焼きあがり!

極薄なので加減が難しいですね。2分で確認した時はほとんど変化がなかったのに、ちょっと焦げてしまいました。なので、仕上げにもう一度タレを塗って照りを出し、

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盛りつけ

あらぁ? なんだか見た目は、創業から100年になる老舗酒場の、開店から変わらない名物おつまみと言われればそう見えなくはない存在感になってません? じゃあ具体的になんなのか? と問われると、なんとも言えないけど。せっかくなので日本酒を用意し、

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山椒をふってつまみにしてみます

ではでは……ぱりり、もぐもぐ……。へ〜! まず大前提としてこれ、もとが駄菓子とは思えません。食感はあれだ、炙ったたたみいわし。考えてみたら、魚肉をシート状にしているという基本は同じだもんなぁ。ただ、たたみいわしが素材の味で勝負してくるのに対し、こちらはタレ味! 焦げ味! でつかみかかってくる感じ。例えるならば超重量級の外国人力士か。

いや、ちょっと追いダレで味を濃くしすぎてしまったのは反省点ですが、焼きたての蒲焼さん太郎、超ありです! これはまたやる。

全力「ブタメン」

「ブタメン」というミニサイズのカップ麺がありますよね。おやつにちょうどよく、また、家でお酒を飲んでいて、「あ〜、最後に温かくて汁っけのあるもの、欲を言えばラーメンを、ほんのちょっとでいいからすすりたいな〜」なんてときの強い味方でもある。

揚げたて、焼きたてとは方向性が違いますが、いつもどこか“間に合わせ”という空気感で付き合ってしまっていたあいつの、全力本気が見てみたい。よし、今日のお昼は「全力ブタメン」だ!

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「ブタメン とんこつ味」
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いたってシンプルな内容

今回はこのブタメンふたつを

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鍋で煮ていきます

なにしろサイズが小さいので、一食ぶんには3つ必要かな? とも思っていたんですが、

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ふたつでちょうどどんぶり一杯ぶんほどに

それにしても清々しいほどに具がないですね〜。それでこそ駄菓子!

よし、じゃあここに……

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容赦なくトッピングをのせまくり
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完成!

まさに「ウソみたいだろ。ブタメンなんだぜ。それで…」状態。ではでは、いただきま〜す!

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麺の感じ

当然ですが、本場とんこつラーメンのようなバリカタ極細感や、市販の生麺のようなプリプリ感はありません。あくまでインスタント。だけどこうやって向き合ってみると、ブタメンって思ってたよりきちんとカップ麺なんですねぇ。いわゆる「カップヌードル」タイプの。つるつるの喉ごしと優しい柔らかさが、ラーメンとしてなんの問題もなく美味しいです。

さらに感心したのがスープ!

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もはや店と言っても過言ではない

過剰な油っこさはないけれど、しっかりと豚の旨味やコク深さがあって、また、ネギやごまなんかの食感が混ざることにより、別にこれがラーメン屋さんで出てきたとて文句のない美味しさ。

いや、おそれいりました。こんどからはもっともっと真剣に食べさせてもらいますので。

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揚げたて「ビッグカツ」

さぁ、ここらでいよいよご登場いただきましょうか。真打「ビッグカツ」師匠に。

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好きなんだよなぁ

鍋に油を熱して、ビッグカツを揚げやすいように半分にカットし、いざ、

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揚げる!
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両面こんがり!
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ザ・揚げたて

うおおおお! テンション上がるな〜これは! この、どう見ても袋から取り出しただけとは違うシズル感。

試しにすぐさま食べてみると、ザクっとした衣と油のジューシーさが口に広がり、そして福井のソースカツやハムカツあたりを想像していると、そのだいぶ上を行くみしっとした噛みごたえに面くらい、加熱により広がった、しっかりと素材につけられている下味の濃厚さに脳がしびれます。

他のどの揚げものとも違うジャンクさだけど、これは間違いなくうまい! ビールくれ!

で、ですね、今回はこいつをつまみに当然キッチンドリンキングはしつつ、しかるべき枚数を確保しておいて、

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シメの「オンザ白メシ」

さらにですね、実は僕、以前からビッグカツって、もっともっとソース味が濃くてもいいと思っていたんですよ。もちろん、万人に受け入れられるように調整されてあの味だとは思うんですが、揚げもの=ソースドボドボ派の僕としては、さらなるブーストを加えたい。そこで、

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遠慮なくウスターソース追加!

いや〜、これは間違いないでしょう。と、勢いよく揚げたてビッグカツを噛みちぎる。もぐもぐもぐ。うん、揚げたてザクザクの衣感と、元来の味の濃さ、香ばしさ、そこに甘酸っぱいソース味も加わって、過剰にうまい。すかさず白メシをかっこむと、その清廉との対比が禁断の出会いって感じで、まぁ、間違いはないですわな。

というか、揚げたてビッグカツが味も食感もみっしり凝縮されすぎているので、どんぶりメシ1杯に対してカツ1枚で十分だったかも。

なんとなく想像していた「擬似ソースカツ丼」的な美味しさとはまた違う「揚げたてソースがけビッグカツ丼」としか表現しようのない味わいでしたが、いや、大変おいしゅうございました。

揚げたて「いかフライ」

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「いかフライ」

最後に、これまた大好きな「いかフライ」。フライとつくからには揚げたてを食べてみたいと試してみたのですが……

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揚げてみると

なんだかシズル感のない

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ジャミラみたいな質感に

念のため食べてみたところ、これがなぜか、いかフライの良さがすべて消え、いわゆる「揚げ餅」みたいな味になっていました。

美味しくなくはないんだけど、なら揚げ餅を食べるよっていう。なんでだろ?

と、今回は5種類の駄菓子の本気を拝見させてもらいましたが、事前に結果が予測できないぶん、とても楽しい実験になりました。

割と予想に近かったビッグカツはもちろん、ブタメンのクオリティの高さと、またやりたいと思える「焼き蒲焼さん太郎」のおつまみ力が、特に良かったな〜。

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