TikTok でZ世代にダイヤモンドを販売する方法:ラグジュアリージュエリー企業、ザ・クリアカットの事例

DIGIDAY

Z世代は現在10〜25歳であり、高級ジュエリーを購入し始める年齢層にさしかかっている。

TikTokの可能性を利用するジュエリーD2Cのザ・クリアカット

ザ・クリア・カット(The Clear Cut)は、婚約指輪中心のD2Cのジュエリー会社である。同社によると、2022年の最初の6週間で1年目(2018年)よりも高い売上を記録したという。もっとも興味深いのは、ギフティングの戦略と同社がファンと見なしている主要なインフルエンサーらのおかげで、若い世代の購入が増えているのを目撃していることだ。

ザ・クリア・カットはTikTokで約6.8万人のフォロワーを抱え、150万件の「いいね」を獲得している。TikTok上のマーケティングやコンテンツの制作に資金を費やさない代わりに、共同創業者のオリビア・ランドー氏とカイル・サイモン氏(夫妻)がホワイトスペースであると特定した領域の高級ジュエリーファンに対するコミュニティの構築にフォーカスしている。サイモン氏いわく、「TikTokのジュエリー関連コンテンツはかなり限られていた」という。

同夫妻はCovid-19が拡大する前にTikTokの投稿を始めた。そして、パンデミックの間にほかの人たちと同様、TikTokの可能性に気づき始めた。「一世一代の大転換が起きていることに気づいた。この新しいプラットフォームは新世代の消費者とともに生まれ、我々はそこに関与したいと思った」とサイモン氏は述べている。

TikTokフォロワーに専門的知識を提供

「TikTokでニッチが見つけられれば、忠実なコミュニティが持てる」とランドー氏。「パンデミック前、当社のメインのフォロワーは8歳くらいで、ターゲット顧客層ではなかった。だが、ロックダウン中にTikTokを使う人が増えて、ダイヤモンドのファンやダイヤモンドについて知りたい人たちというニッチな層が見つかった」。現在では同社のフォロワーはジュエリーの販売員よりも多くの知識があると同氏は言う。「フォロワーから『この宝石店でクッションカットの比率について尋ねたが、店員はそれが何だか知らなかった』などと聞かされる。我々のコンテンツを30%でも消費してもらえれば、ジュエリーの専門家になれる」。

現時点ではインスタグラムはTikTokよりもコマース機能を提供しているが、売り上げアップに関して、TikTokはインスタグラム以上ではないとしても同じくらいの価値があるとサイモン氏は述べている。「インスタグラムにはギフティングやタグ付けが組み込まれているが、TikTokにはそのようなインフラストラクチャーはない。だが、それゆえにもっと自然に感じることができる。ブランドの観点からすると、コマースの観点であまり構築されていないプラットフォームでありながら、実際にかなりのパフォーマンスが得られるというのは興味深い」とサイモン氏。

男性中心の分野を若い世代と女性に開放

ソーシャルメディアによって、伝統的に男性に独占されている(ジュエリー)業界は若い世代に開放された。この点は同社の目標の一部であるとランドー氏とサイモン氏は述べている。ランドー氏によると、ダイヤモンドの家業は通常男性に受け継がれ、また伝統的に男性がダイヤモンドの主な購入者であるという。

ザ・クリアカットは、ランドー氏がダイヤモンド業界の謎を解くために書いたブログとして始まった。「今のZ世代の消費者はティファニー(Tiffany)やカルティエ(Cartier)に足を踏み入れるのを、大学生だと思われるかもしれない、と躊躇しているのかもしれない。(TikTokは)若い世代に高級ジュエリーを紹介する新しい方法だ」とサイモン氏。

インフルエンサーが出演するポッドキャストにも注力

ザ・クリアカットには、TikTokと、15.9万人のフォロワーがいるインスタグラムのほかに「コージー・アップ・ウィズ・ザ・クリアカット(Cozying Up with The Clear Cut)」というポッドキャストがある。そのゲストには、テフィ氏バトシェヴァ・ハート氏キット・キーナン氏(と同氏の母親であるシンシア・ローリー氏)などのインフルエンサーがいる。これらのゲストは同ブランドと関係があり、受け取ったジュエリーについて投稿したりしている。ランドー氏は、同社の起業の前にはポッドキャストをよく聴いていたという。

「(自分が聴いたポッドキャストで)多くの女性がたどった様々な軌跡を知って、私も自分のビジネスを始めようと刺激を受けた」とランドー氏。「夢を実現したり活躍するように他人にインスピレーションを与えることができたとしたら、自分にとって有意義だと思った。業界をダイバーシティ化するのが私の使命だ」。また、同社は、有色人種女性がジェモロジカル・インスティテュート・オブ・アメリカ(GIA)に通うための奨学金を後援している。共同創業者の2人はGIAで学んだ。同社には「(ジュエリー)業界を揺るがして、より多くの人たちにこの業界について知ってもらい、より多くの女性が起業するきっかけを作る」という目標がある。

もちろん、ポッドキャストは効果的なマーケティングでもある。「ゲストには当社のコミュニティへの露出もあるが、当社にとってもゲストのフォロワーへの露出もある。ポッドキャストによってブランドオーディエンス全体の可視性と見つけやすさが向上する」。

TikTokユーザーによる影響の例

TikTokerのティンクス氏も同社のファンで、同氏がインフルエンサーではなくまだフリーランスライターだったときにポッドキャストに登場している。ティンクス氏は、30歳になって経済的に余裕ができたら、ザ・クリアカットの4295ドル(約52万円)のテニスネックレスを自分で購入するとランドー氏に述べた。同氏はそれを実行して、購入したものを自分のフォロワーにシェアした。「ティンクス氏の購入後、テニスコレクションは894%成長した。これは、彼女のフォロワーと影響力のおかげであり、またこのスタイルの人気が高まっていることによるだろう。人気の一部は真正性だ。ティンクス氏は自分のために購入した。自分を労って、そのテーマでコンテンツを投稿した」とサイモン氏は語っている。

ザ・クリアカットは、ティンクス氏のTikTokフォロワーが100万人になったとき、1Mと刻印された指輪を同氏に贈っている。また、ダイヤモンドのフープイヤリングも進呈した。ティンクス氏はある投稿でそのイヤリングを「リッチなママのバイブス最大限」と表現した。

「このテニスコレクションは、2021年の売り上げと比較して2022年にはすでに100%の成長を遂げている」とランドー氏。テニスのブレスレットやネックレスは「時代遅れになることのないクラシックな定番アイテム」だが、「女性は自分のために購入しており、用途が広くウェアラブルでタイムレスなジュエリーに投資しようとしている」ので、最近大きなトレンドになっていると述べている。

また、ランドー氏は、ハート氏の同ブランドに関する投稿も売り上げにつながっていると言う。「ハート氏にはアイリーン・トワ・エ・モア(Irene Toiet Moi)リングを贈ったが、同氏はこの製品についてかなり定期的に投稿している。それは彼女が離婚した直後だった。毎日つけていると思う」。この記事を仕上げたときにハート氏のインスタグラムを見てみると、2時間前に投稿されたマニキュアの画像があった。そこにはその指輪が写っており、ザ・クリアカットがタグ付けされていた。

「適切に扱えばジュエリーはストーリーを語ってくれ、(つける人の)人生の重要な瞬間を示すものだ」とサイモン氏。2021年11月のリールの投稿で、ハート氏は48.3万人のフォロワーに次のように語っている。「9年間ずっとこの婚約指輪をつけているので、これをはずすことを思うと…裸になったような気になる。そこで、新しい指輪をすることにした。大きな違いがあった。なぜなら、その指に何もないという虚しさを感じる代わりに自分の意識がこの指の新しいリングに向いているから」。ランドー氏によると、1度限りの贈り物ではなく、誰かがジュエリーを身につける「本物の理由」があるならそれはもっともインパクトのあるパートナーシップになるという。

ビューティ関連のTikToker、メレディス・デュクスベリー氏(フォロワー1470万人)も同ブランドの効果的な支持者である。メイクアップ関連のインフルエンサーはいつも顔や頭部を見せるので、ネックレスやイヤリングを見せるのに非常に効果的なモデルになるとランドー氏は述べている。

新世代の消費者にマーケティングを合わせる重要性

ランドー氏は家族の中でダイヤモンド事業に参入する4代目である。当初、家族からは家業に関与することを勧められなかったという。「両親からはダイヤモンド事業は衰退しており、将来性がないので関与しないようにと言われた」とランドー氏。「だが、ダイヤモンド業界はまだ存在している。新しい消費者へのマーケティングへのアプローチ方法を継続的にシフトして、消費者がいる場所で彼らに出会うように努めなければならないだけだ」。

「自分たちもミレニアル世代で、同世代を対象にして販売していたし、その世代についてはよく理解していた。今はそれを微調整して新しい世代にリーチしてそのオーディエンスを獲得し、彼らが信頼するブランドであり、ジュエリーのような大きな購入をするときに第一に思い浮かべるブランドとなることが重要だ」。

[原文:How The Clear Cut is selling diamonds to Gen Z, one TikTok at a time

SARA SPRUCH-FEINER(翻訳:ぬえよしこ、編集:黒田千聖)

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