東京海上グループが進める保険DX–加速する「デジタルとヒトのベストミックス」

CNET Japan

 “社内外の「知の結集」で生み出すイノベーション”と題して、朝日インタラクティブがオンラインで開催した「CNET Japan Live 2022」に3月2日、データやデジタルの活用を戦略的に進める東京海上グループが登壇した。

 最初に、東京海上ホールディングス常務執行役員 グループCDOの生田目雅史氏が登壇し、東京海上グループのDX戦略を説明した。次に、東京海上日動火災保険 dX推進部 担当課長の大島典子氏が登壇し、13社(3月23日時点:14社)が結集したオープンイノベーション「防災コンソーシアム CORE」の構想を紹介した。

キャプション
東京海上ホールディングス常務執行役員 グループCDOの生田目雅史氏(右下)と東京海上日動火災保険 dX推進部 担当課長の大島典子氏(左下)

「デジタルとヒトのベストミックス」

 生田目氏は冒頭、「損害保険事業は、決して保険金の支払いだけにとどまる事業ビジネスではない」と話したうえで、東京海上グループでは「デジタル」と「人」をかけ合わせて、DXを進めていくと説明した。

 最初に表示されたスライドには、4つの輪と、プレシジョン、スピード、クオリティと3つのキーワードが示された。生田目氏は、「デジタルの価値とは、アナログに比べて精度が高く、スピードが速く、分析などに活かせるデータの質も格段に上がってきたという3つがあるが、果たしてそれだけだろうか」と投げかけた。

 「データ化、数値化、記録ができる。そこから法則を導く、パターンを学習する、物事をシンプル化することもできる。判別や識別といったジャッジメントに使うということも。あるいは、ネットワークの価値を高めていくことや、セキュリティを高めていくことも可能。デジタルが実現する価値とは、あらゆる領域、あらゆる可能性がある」(生田目氏)

 生田目氏は、デジタルの価値をこのように示して、「お客さまにとっての本当の価値を探索するためには、われわれ自身がデジタルについて学習し、研鑽を積まなければならない」と話した。

 そのためには、「既定の価値観に縛られない」ことが重要だと、デジタル時計を例に挙げて説明した。デジタル時計を、“精度の高さ”だけで価値を高めようとするのではなく、時計の中に「あらゆる可能性」を放り込んでいった結果、お客様の評価を得てビジネスとして成立するに至ったのだという。

 また、あらゆる可能性を追求するのと同時に、「課題設定が抜け落ちてはだめだ」と話した。たとえば、日本の課題は少子高齢化だが、相続、労働力不足、過疎化など、もう一段深掘りすると多様な課題とそれに応じた解決策が設定できる。

 「われわれがそこに価値創出することができるのか、あるいは他の方が価値創出に向かうのか、あるいは共創することで、まだたどり着いていないソリューションに向かうことができるのか。さまざまな方向で考えていきたい」(生田目氏)

 さらに、「DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、既存の延長ではない、非連続な価値を創造することだ」と指摘した。生田目氏は、「デジタル“で”トランスフォームすることよりも、デジタル“に”トランスフォームすることが、実はとても重要なのではないか」と話す。

 「しかし、あらゆる可能性を探索する中で、非連続な価値を創造するのは、相当な困難を伴う。というのも、価値が生まれる直前までわからない、見えないこともあるためだ。だからこそ、人の力が必要。“連続の努力が、いつか非連続の価値を生む”と信じる、感性と熱意がとても重要で、これこそがDXの本質なのだと思う」(生田目氏)

 生田目氏は続いて、「なぜ、損害保険会社が、DX領域に格別のリソースを投入しようとしているのか」と、話題を転換していった。それは、損害保険の事業そのものが、非常に多くのビジネスのコンポーネントを持っており、証券、銀行、決済など同じ“金融”の中でも、保険に入る理由を「外的要因」から「内発的動機」に変換して顧客価値を創出する必要があるため、「人」の能力が必要不可欠だからだという。

 たとえば、示談交渉や商品提案では、チャットボットやAI提案を組み合わせつつも、お客様に寄り添い、納得いただけるようにコミュニケートする力が求められる。生田目氏は、「デジタルとヒトのベストミックス、という言葉を毎日のように使っている」と明かし、東京海上が目指すデジタルの姿の詳説に入った。

 「われわれの社会が発展し、新しいリスクが生まれる中で、解決していくべき課題、あるいは設定すべき課題は、どんどん拡大している」と生田目氏は指摘し、東京海上グループが重要視する6つの領域を示した。「ヘルスケア」「サイバー」「エネルギー」「SME(中小企業)」「モビリティ」「防災、減災」だ。

 「地震などの災害や、事故、火災などだけではなく、環境変化こそが新たなリスクを生んでいる。その中には、格差の拡大や、地政学リスクの拡大、テクノロジーの進展、気候変動がある。具体例を示すと、テクノロジーの進展そのものがサイバーリスクを生んでいるし、AIが導入されることで、AIの脆弱性というサイバーリスクとは全く異なる領域のリスクも認識されつつある」(生田目氏)

 生田目氏は、6つの重点領域における非連続な価値創造に、情熱と経営資源を向けたい」と意思を表明し、それぞれの領域における主要な取り組みを紹介した。「防災コンソーシアム CORE」も、そのひとつだ。生田目氏は、「お客さまである企業とも手を取り合って共創を実現し、日本で最高水準の防災減災のプラットフォームを、実現していきたい」と意欲を示した。

 最後に生田目氏は、東京海上グループは大手企業、スタートアップ企業、ベンチャーキャピタルとも共創を行っていると説明し、今後もオープンイノベーションを加速していく構えだと話して、講演を締めくくった。

Source

タイトルとURLをコピーしました