ゴミをわずか10ミリ秒の加熱で貴重な材料「グラフェン」に変える方法

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ハチの巣のような六角形の格子構造から成る「グラフェン」を、食品廃棄物やプラスチック廃棄物から生成する方法が編み出されました。

Gram-scale bottom-up flash graphene synthesis | Nature
https://www.nature.com/articles/s41586-020-1938-0

Rice lab turns trash into valuable graphene in a flash | Rice News | News and Media Relations | Rice University
https://news.rice.edu/news/2020/rice-lab-turns-trash-valuable-graphene-flash

ライス大学の化学者であるジェームス・ツアー氏の研究室が、生ごみやプラスチック、その他の材料をベースにグラフェンの粉末を生成する方法を開発しています。このプロセスは迅速かつ安価です。ツアー氏はごみからグラフェンを作成する方法を「フラッシュグラフェン」と呼称しており、既存のグラフェンバルク製造方法のコストの何分の1に抑えることが可能。つまり、大量の石炭・食品廃棄物・プラスチックをグラフェンに変換することができます。

ツアー氏は「世界では食品の30~40%が廃棄されています。また、プラスチック廃棄物も世界的に懸念されています。一方で、混合プラスチック廃棄物やゴムタイヤといった固体炭素ベースの物質をグラフェンに変換できることは証明されています」と語り、フラッシュグラフェン技術の重要性を語っています。

フラッシュグラフェン技術は、炭素含有材料を華氏3000度(摂氏約5400度)に加熱し、わずか10ミリ秒経過するだけでグラフェンが生成できるというもの。グラフェンを生成する際の原料となるべき材料は炭素を含むものなら何でもOK。ツアー氏によると、材料の有力候補は食品廃棄物・プラスチック廃棄物・石油コークス・石炭・木材・バイオ炭であるとしています。なお、ツアー氏は「既存のグラフェンの商業価格は1トン当たり6万7000~20万ドル(約820万~2400万円)であるため、フラッシュグラフェン技術は素晴らしいものになると思われます」と語りました。


ツアー氏によると、コンクリートの結合に使用されるセメントにはグラフェン粉末が0.1%含まれており、フラッシュグラフェンで生成したグラフェン粉末を使用すれば、環境への影響を3分の1まで削減することが可能となります。

さらに、「グラフェンでコンクリートを強化することで、建築に使用するコンクリートを減らすことができ、製造コストおよび輸送コストを削減することができます。基本的に、我々は廃棄物が埋立地で排出するであろう二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガスを閉じ込めています。これらの炭素をグラフェンに変換し、これをコンクリートに含めることで、コンクリートの製造で排出される二酸化炭素の量を削減できます。これはグラフェンを使用する双方にメリットのある環境シナリオです」とツアー氏は語り、フラッシュグラフェン技術の有用性をアピールしています。

ライス大学で土木環境工学および材料科学の助教授を務めるRouzbeh Shahsavari氏は、「グラフェンを加えることでセメントの水和とその後の強度発現を制御する補強材としても機能します」と指摘。ツアー氏は「グラフェンはコンクリートに使うには高価すぎます。しかし、フラッシュグラフェン技術は廃棄物をより適切に管理することに役立ちながら、さらに価格を大幅に抑えることにもつながります」と語り、安価なグラフェン製造プロセスがコンクリートのコスト低下と強度向上につながるとしています。


また、ツアー氏のフラッシュグラフェン技術では、分離しやすい層の位置がずれた乱層構造のグラフェンが生成されるという副次効果もあります。他のプロセスで作成されたABスタックのグラフェンははく離が困難という問題があるそうですが、フラッシュグラフェン技術で生成された乱層構造のグラフェンは層間の接着力がはるかに低いため扱いがはるかに簡単になるとのこと。

ツアー氏によると、フラッシュグラフェン技術の加熱プロセスではほとんど過剰な熱が発生せず、エネルギーのほとんどが材料に向けられるそうです。そのため、加熱してから数秒後にはグラフェン生成用のコンテナに手を置くことができます。

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2022年04月01日 16時00分00秒 in サイエンス, Posted by logu_ii

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