露の化石燃料巡りEUと東欧が衝突 – WEDGE Infinity

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ロシアのウクライナ侵攻によって欧州連合(EU)はそのエネルギー政策を大きく転換することになった。3月8日、欧州委員会は2030年以前にロシアの化石燃料(ガス、石油、石炭)に対する依存を解消する計画の大枠を公表した。

特にガスについては、その気になれば(具体的根拠は示されていないが)ロシア以外のガスの液化天然ガス(LNG)およびパイプラインによる輸入拡大、再生可能エネルギーの利用促進などによって、今年中にロシア産ガスへの需要を3分の2程度減らせるとしている。

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これを受けて、3月10~11日のEU首脳会議のベルサイユ宣言には「ロシアのガス、石油、石炭の輸入に対する依存をなるべく早期にフェーズアウトすることに同意した」と書かれている。詳細は今後5月末までに欧州委員会が用意する提案を基に検討が進むようであるが、ロシア依存解消には加盟国の大胆かつ迅速な行動が必要であり――50年のネット排出ゼロに向けて緑のイニシアティブの進展とガス供給源の多様化が前提のようである――欧州委員会が想定するように進むと考えることは早計であろう。

ここでの議論は対ロシア制裁としての禁輸ではないが(EUはエネルギー分野の制裁に踏み込むことを避けており、ガスの輸入を続けている)、ロシア依存解消のためには米国(LNGの最大の輸出国)など関係諸国の協調を得ることも欠かせないであろう。

このようなEUのエネルギー政策と、固有の政策を掲げる東欧諸国とのエネルギー政策との衝突は避けられないように思われる。3月14日付けワシントンポスト紙掲載の論説‘The E.U. might want to cut off Russian energy, but fuel-dependent Poland, Hungary and others have other plans’は、「欧州のエネルギー・セクターの来るべき変容はハンガリーにとって甚大な問題である。その他の中東欧諸国も同様にEUが提案する戦略に懐疑的である。緑の革命の加速を通じてロシアのガスを排除するとの提案がEUの団結を強化することはない。それはEUの鎧に重大な亀裂を生むことになる」と指摘する。

いまなお依存するポーランドやチェコ

それぞれ国毎に事情に違いがあろうが、EUがロシア依存の解消に向けて、あるべき当然の姿として緑のイニシアティブの加速を求めれば、いまなお石炭に大きく依存するポーランドやチェコと衝突することとなろう。

例えば、チェコの親EUのフィアラ首相は、EUのグリーン・ディールを「存亡のリスク」と呼んでいる。これに対し、グリーン・ディール担当のティマーマンス欧州委員会委員は最近、ロシアに対するエネルギー依存に対抗するために新たな炭鉱を開こうとする加盟国は「信じ難いほど愚か」だと述べた。

ハンガリーの場合は、少し事情が違うと思われる。オルバン首相にはそもそもエネルギーのロシア依存の体質(はっきりしないが、ガスのロシア依存は80%という数字がある)を変えるつもりはない。対ロシア制裁がエネルギーにおよばない限りにおいてEUに歩調を合わせているに過ぎず、(議会選挙の結果彼が退陣すれば別であるが)EUがいずれ具体的にロシア依存解消に動く段階に至れば、彼との衝突は避けられないであろう。

そうではあっても、ロシア依存からの脱却は東欧諸国のみならずドイツやイタリアにとっても難題を提起しようが、枢要な部分をロシアに依存するエネルギーの安定供給があり得ないことは今や明白というべきであろう。

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