松本麗華氏「裁判所に深く絶望」 – 松本麗華

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ご支援・応援くださりありがとうございました

 わたしがアレフに対し訴訟を起こしたとき、担当した大野和明裁判長と、国を相手に闘った裁判が確定しました。
 本件裁判を応援してくださっていた方々、裁判費用をクラウドファンディングでご支援いただいた方々に、厚くお礼を申し上げます。おかげさまで、目標額をほぼ達成することができました。

 わたしの請求は認められず、残念な結果には終わりましたが、心から感謝しています。本当にありがとうございました。

どんな色にも染まらぬ黒衣――裁判官の公正さの象徴のはずが

 わたしがこの裁判で一番問題にしたかったことは、裁判官の黒衣は、何物にも染まらず、公正・公平に判断するためのものではないのか、ということでした。

 大野裁判官は、わたしを取り上げたフライデーなどを趣味で収集しており、(わたしの担当となったことで)それがようやく役立つと言いました。

フライデーの他にも、わたしについて、
「テレビで昔見たイメージ」
「写真とか見たイメージ」
「本もとっておいて捨てないで、フラッシュだったかな」
「ようやく役立つ、だから張り切って」
等言いました。

 裁判官は先入観を持ってはならず、何も情報を入れないで事件を担当するのが理想だとされています。そのため、本当は担当事件に関するニュースも見ない方がいいと言われています。
しかし残念ながら、大野裁判官は、裁判がはじまる前から、わたしに対して強い先入観を持っていたようです。

「アレフに悪魔と言われたら名誉が上がる」「姫、ご乱心」

 また、大野裁判官は、アレフに悪魔と言われたら名誉が上がると言ったかと思えば、「姫ご乱心」だとも言いました。
「姫ご乱心」。皆さんはこの言葉を聞いて何をイメージされますか。

 ある国のお姫様あるいは地位の高い人の娘が、その国やその社会にとって常識外れのことをしている、もっと言えば狂っている、ということです。

 わたしは17歳で教団から離れましたが、大野裁判官はわたしをアレフやオウムに属する「姫」と考えているのではないかと感じ、公平に判断してもらえるのだろうかと、疑問に思わざるを得ませんでした。
 正直に言えば、怖かったです。

 それでも、大野裁判官がアレフの言動でわたしの名誉感情が害されたのではないかと言い、アレフのことを泥船と表現したことから、変わった人だけどもきちんと判断してくれるのではないかという期待を持ち、裁判を続けました。裁判官をその裁判から排除する忌避の申立もしませんでした。

 しかし、結果は、「姫ご乱心」、「アレフに悪魔と言われることは名誉が上がるのではないか」等大野裁判官が自分は予断をもって裁判を行っていますよ、と公言したとおりの判決となりました。

だまし討ち――反論さえ許されなかった10代のこと

 アレフはわたしが10代のときのことについて、自分たちの都合がいい内容を書いた書類を証拠と称して出してきましたが、裁判所が10代のときのことは審理の対象から外すと言ったので、わたしは反論ができませんでした。

 しかし、なんと判決では10代のことが、わたしがアレフに影響を持っているという根拠として挙げられていたのです。

 反論する機会を与えられなかったので、アレフの思い通りの内容です。こんな嘘まで付いてアレフを勝たせたいの? なぜ? と驚くしかありませんでした。

無視された証拠――予断と偏見のすえに

 判決では、「これまでお母様にワークのことはお聞きしてきました」、というアレフの幹部の松葉裕子氏のメールなどの証拠をスルーしました。
 これはアレフがわたしへのお伺いなく教団が動いたことがないと主張したので、それは違う。やっていたのは母だということを示すために出した、客観的な証拠です。

 また、アレフ広報部長の荒木浩氏は、陳述書にわたしと電話で話したと書いていましたが、法廷でわたしが「電話番号も知りませんよね」と聞いたら、知らないと証言しました。
 これは矛盾です。このような矛盾があれば、「他にも矛盾があるのではないか」と思い、普通はその人のその証言以外の証言も信用できないと考えるだろうと思います。
 そればかりか、荒木氏は母と、わたしたち子どもたちの教育のことについて話し合ったとまで証言しました。二人は親しい間柄だったのです。

 しかし、この矛盾も判決では触れられませんでした。なぜかアレフ側に有利なことのみ認定し、真実からは目を背けました。

 裁判官の発言や判決の内容からして、当初から予断と偏見をもっていたとしか考えられません。

身内には甘く――手続きも審理もなく終わった今回の裁判

 大野裁判官の言動はさすがにひどいと考え、本件裁判を起こしました。
 しかし、裁判所は身内のおかしな行動を守るためなのか、大野裁判官に対する審理を第1回口頭弁論期日から第3回口頭弁論期日まで毎回延長し、弁論終結前の第4回口頭弁論期日で擬制陳述(裁判に欠席しても、出席し陳述したとみなすこと)を行い、第5回口頭弁論期日で大野裁判官に対する原告の準備書面を陳述し、弁論を終結しました。第5回口頭弁論期日は、原告の準備書面を陳述後、わずか数秒後に弁論終結の宣言を行ったのです。「弁論終結」の「早業」には唖然としました。陳述等の手続が終わった後、わたしに対し何の警告もなく、つまり、今後の主張立証の方針を聞くこともなく、弁論終結をしたのです。

 大野裁判官は一度も裁判に出席していませんし、書面も、答弁書という裁判の最初に出すものしか出していませんし、その内容も事実の主張については何も主張していません。

 もし誰かが訴えられて、出席もせず、書面も出さなかったら、裁判所はその人の敗訴判決を書きます。
 裁判に出席もせず、主張もしない人物は、裁判で争うのを放棄して、その訴えを認めていると判断されるからです。

 しかしこの裁判では、大野裁判官が出席もせず、書面も最初に出した事実主張のない答弁書しか提出しなかったことは問題とされず、東京地裁にて判決が下されました。

 しかも第一審判決では、大野裁判官も国も「アレフに悪魔と言われたら名誉が上がる」「姫、ご乱心」といった発言があったことは認めているにもかかわらず、それらの発言が「仮にあったとしても」と仮定の問題にした上で、大野裁判官は暫定的心証を述べたものだと認められる、としました。
 弁論再開の申立をしましたがそれもかないませんでした。

 大野裁判官ご本人が何も主張しておられないのに、なぜ、暫定的心証を述べたものだと認められるのでしょうか。何を根拠にそのように判断したのか、まったくわかりません。

裁判官は上級国民――問うことができない裁判官の責任

 今回の判決を見て、裁判官はいわゆる上級国民であると、裁判所が宣言していることが分かりました。

 裁判官以外の公務員の違法行為によって損害を受けた場合、損害賠償が認められる要件として「当該公務員が職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と当該行為をしたと認めうるような事情」が必要とされています。

 しかし、裁判官が当事者だった今回は「付与された裁判官の権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したものと認めうるような特別の事情」が必要だと、損害賠償が認められるための敷居を高くしています。

 裁判官は、「そこら辺の公務員とは違うんだ」とおっしゃりたいようですね。

 控訴後、さすがに東京高裁は、当事者が認めていることを仮の問題だとすることはできないと考えたのでしょうか。

「姫ご乱心」や「アレフに悪魔と言われたとしても名誉は上がることがあっても下がることはない」との発言があったことは当事者間に争いがないと、発言があったことを前提として、それらの言葉は「適切であったかどうかは疑問の余地はある」「必ずしも適切であるとはいえない」しました。

 それでも、暫定的心証を示し、審理の方針を示し、主張立証を促す趣旨でなされたものだと認められ、付与された裁判官の権限に明らかに背いて行使したと認められる特段の事情はないとして、地裁の判決を支持しました。

 これでは、裁判官相手には裁判を起こすなと言っているようなものです。

人権を守る最後の砦――閉ざされた扉に染まりきった黒衣

 社会の教科書には、裁判所というのは、公平な裁判を通じて国民の権利と自由を守るところで、権利を守る最後の砦であると書かれています。

 今のままだと黒衣は、何物にも染まらない公正さを示すものではなく、独断や偏見、先入観というもので染まりきった、色眼鏡を示すものになってしまいます。さらに、黒衣はすべての事実を隠蔽することにもなります。

 これまでも裁判では理不尽な判決が多くありましたが、身内がからむと手続きすらきちんと踏まないことが分かりました。

 裁判所に、深く絶望しています。

壊された希望――生きる困難

 これまでは不法な侵害に対しては、裁判所に救済を求めるしかないと考え、裁判で闘ってきましたが、裁判所の現実を見せつけられた今、このまま裁判で闘って意味があるのかと途方にも暮れています。

 わたしは、どうやって生きていったらいいのでしょうか。

 松本智津夫の娘というだけで、銀行口座が開設できないという現実。
 努力して得た仕事を、失っていくという現実。
 ヘイトを煽られ、死ぬことを望まれ続ける現実。

 裁判所を頼れないとなれば、この現実にどう向き合い、対応していけばよいのか、どうやって生きていけばいいのか、考えをまとめることができません。

 皆さまのご助言、お力添えをいただけると幸いです。これまで、わたしを支えてきてくださり、本当にありがとうございます。
 今後ともどうぞ、よろしくお願い申し上げます。

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