タモリVS安倍 伝説に残る1シーン – 松田健次

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3月下旬、BS放送の新たなチャンネルが開局した。21日「BSよしもと」、26日「BS松竹東急」、27日「BSJapanext」。BSチャンネルが3局も新規開局したのに、さほどにぎにぎしいオープニングファンファーレが響いてこない感じだ。ロシアとウクライナの報道が強くてその影に押しやられているのか。実際のところはどうなのだろうか。そういうキャンペーンにはあまり予算をかけていないということか?

このBS新規チャンネルの開局に関しての第一印象は、吉本興業が単独一社で総務省から衛星放送事業の認可を受けたという事実、(CSではなく)BSのチャンネルを持ちその編成権を掌握したという現実に、「そういうことが『あり』の時代なんだな…」と目を凝らしつつ、さて、お笑い界全体のバランスはこれからどうなるんだろうと黙考に落ちるという処か。

吉本興業が「そういう」存在になったのか、それとも、BS放送が「そういう」存在になったのか。

4月になれば新規参入したBS3局の番組レポートもあちこちで見かけることになるだろう。しばらくはこの3局がメディアやテレビの中でどういう位置づけになっていくのか、観測モードである。

個人的には、BS松竹東急で若手落語家の柳亭小痴楽(りゅうていこちらく)師匠が映画放送の案内役を担当するというので、落語ファンの一人として楽しみだ。映画本編の前にテレビで映画解説を担う役となると、その立ち位置は有村崑でもLⅰLⅰⅭoでもなく、目指せ令和の淀川長治、水野晴郎、荻昌弘なのだから。

ライバル林立 テレビ業界苦難の歴史

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それにしても「テレビ、なにかと大変」の時代が進行中だ。それを改めて俯瞰するため、近年の「テレビを取り巻く出来事」を抽出してみた。(ざーっと眺めてもらえば充分です)

《 テレビを取り巻く出来事 2005~2022 》

2005年2月  アメリカでYouTube設立
2006年12月 ヒカキン、YouTube公式チャンネル開設
2007年6月  YouTube 日本語版リリース
2008年4月  ツイッター 日本語版リリース
2008年5月  Facebook 日本語版リリース
2009年5月  日本テレビが経営方針に「コアターゲット(男女13~49歳)重視」
2009年3月  勝間和代がツイッター開始、同年7月に勝間に誘われ広瀬香美も開始
2011年2月  有吉弘行、ツイッターのフォロワー数で芸能人初の100万人突破 ※(2022年3月現在764万人)
2011年6月  LINE サービス開始
2014年2月  インスタグラム 日本語版リリース
2015年3月  ヒロシ、YouTube「ヒロシチャンネル」開始 ※(現在113万人)
2015年10月 TⅤer サービス開始
2017年10月 「とんねるずのみなさんのおかげでした」特番に「保毛尾田保毛男」登場を問題視されフジテレビ社長が公式謝罪
2017年10月 TikTok 日本語版リリース
2017年12月 「インスタ映え」が年間流行語大賞
2018年1月  「笑ってはいけないアメリカンポリス24時」でダウンタウン浜田による黒人メイクが差別問題視される
2018年2月  中田敦彦、「中田敦彦のYouTube大学」開始 ※(現在456万人)
2018年8月  キングコング梶原、カジサックでYouTube開始 ※(現在232万人)
2018年4月  小学生「将来なりたい職業」ランキング2017年版、男子6位に「ユーチューバー」がランクイン 以後ベストテン常連に(日本ファイナンシャル・プランナーズ協会調べ)
2019年8月  嵐、YouTube開始 ※(現在324万人)
2019年11月 宮迫博之、YouTube開始 ※(現在138万人)
2020年1月  江頭2:50、YouTube開始 ※(現在291万人)
2020年3月  電通「2019年 日本の広告費」を発表 インターネット広告費がテレビ広告費を初めて上回る
2020年3月  ビデオリサーチが従来の世帯視聴率に加え、個人視聴率の調査提供を開始テレビ各局が個人視聴率重視へ移行
2020年4月  7日、政府が新型コロナ対策で一都六県に緊急事態宣言を発出
2020年6月  石橋貴明、YouTube開始 ※(現在166万人)
2021年7月  総務省「令和3年版情報通信白書」を公表
スマートフォン世帯所有率86.8% ※(2010年は9.7%)
2021年9月  ヒカキン「HikakinTV」登録者数1000万人突破
2021年11月 フジテレビ、取締役会で希望退職者募集を決議
2022年2月  電通「2021年 日本の広告費」を発表 インターネット広告費が
マスコミ四媒体(新聞、雑誌、ラジオ、テレビメディア)広告費を上回る
2022年3月  BSデジタル放送「よしもと」「松竹東急」「ジャパネット」新規開局

そして、記載しなかったがこの年譜に、

2009年10月 ブログエントリーサイトBLOGOSがオープン
2022年5月  BLOGOSがサービス終了

も後付けし、BLOGOSという場に思いを馳せつつ話を進める。

で、話を進めると、つまるところテレビは、金減るわ、人減るわ、ライバル増えるわ、規制増えるわ、価値観変わるわ、視聴ターゲット変わるわ…という逆風にさらされている。

とくにライバルの林立は目まぐるしい。5年前、10年前、15年前には無かった様々なメディアやツールがテレビのライバルとなってテレビを包囲している。パソコンやネット環境の拡大を筆頭に、ゲームもあるし、コミックもあるし、従来からのフィジカルなエンタメもあるし、これらが人びとの余暇における時間、娯楽やサービスに接する時間を取りあっている。

胸に手をあてればFANZAもある。FANZAでのAV視聴に日々の時間を献上するユーザー数は侮れないだろう。オフィシャルなデータには辿り着けなかったが、FANZA全体の会員数は3000万人以上と言われているようだ。

とにもかくにもそれらが混沌として人びとの時間を奪いあっている。その過程で10代20代の若年層は「テレビ離れ」していると言われたり、「テレビはオワコン(終わったコンテンツ)」という言葉が頻出するようになったりしている。

ただ、そこには対立軸だけでなく提携や連携も並行していて、次世代の覇権とか棲み分けのバランスとかを模索する混沌の状態にある…という捉え方になるのだろう。とにもかくにも「テレビ、なにかと大変」というわけだ。

テレビの10年を1冊に

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…で、今回なぜ「テレビ、なにかと大変」という話を展開しているかというと、実はこのほど自分(松田健次)がテレビに関する著書を発刊することになり、ほとんど宣伝する機会がないので、ここで「かこつけられたら」という、こすいモードであることを明かしておきます。

「テレビ、なにかと大変」という時代なのだけど、それでも日々番組は制作され、放送され、視聴されている。自分も視聴している。視聴しては何かとその感想を書きとどめ、レポートコラムとして読売新聞の紙面で連載してきた。

内容は基本的にバラエティー番組が中心。視聴していて「よかった!」「笑った!」「驚いた!」「新しかった!」「タイムリーだった!」などなど、要するに何かしら「!」と感じた番組のレポートだ。その連載がかれこれ10年分となり、縁あって書籍化に至ったという話です。

本のタイトルは「テレビの『すごい!』を10年記録 ~バラエティー番組2012~22年の定点観測~」。出版社は「クレヨンしんちゃん」から「週刊大衆」まででおなじみの双葉社。4月22日発売。

つまり「テレビ、なにかと大変」な時代の中で、テレビはどんな番組を放送してきたか、どんな「!」を放送してきたか、それを月イチの定点観測で10年分書きとどめた一冊となってます。

テレビの「すごい! 」を10年記録~バラエティ番組2012~22年の定点観測 単行本(ソフトカバー) – 2022/4/21

あらかじめ言い訳しておくと、内容的には「ザ・テレビジョン」や「日経エンタテインメント!」の編集部がテレビ番組の「公的」な足跡や功績をくまなく網羅するようなテレビ史の正史ではなく、ひたすら外史。「私的」な視点でその折々の「!」を書きとどめた外史である。

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