侵攻めぐる中国の動きに期待感 – 田原総一朗

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田原総一朗です。

ロシアによるウクライナ攻撃が、約4週間も続いている。前回僕は、「プーチンは読み違えた」と書いた。はっきり言えば、ウクライナを甘く見ていたのである。しかし、「読み違えた」という点では、NATO(北大西洋条約機構)側、つまりアメリカも同様だ。

ウクライナは憲法で、「NATO加盟希望」を定めている。ロシアにとって、ウクライナがNATOに加盟する、つまり西側につくということは、大変な脅威である。そこでロシアはNATOに、ウクライナに加盟させないようにと、アメリカに要請した。

しかし、アメリカはこれを拒否。拒否したからと言って、まさかウクライナに武力侵攻するとは、思いもしなかったのだ。プーチンがウクライナを甘くみていたように、バイデンもまたロシアを甘く見ていたのだ。

ロシアはウクライナの原発や、住民が避難していた劇場、さらになんと病院を爆撃して世界から非難を浴びている。ウクライナの強い抵抗と国際世論の非難があり、プーチンは非常に焦っている。もはやプーチンに展望はない。しかし今攻撃を止めたら、わが身があやうい。

経済制裁も強化され、専門家によれば、このままでは5月ごろ、ロシアのデフォルト(債務不履行)もあり得るという。今のプーチンは八方ふさがり、自暴自棄と言ってもいいだろう。核攻撃の可能性もある。

一方でロシアへの経済制裁は、西側諸国にも非常に影響がある。特にドイツなどは、輸入する天然ガスの5割以上を、ロシアに頼っていた。このままでは欧州に限らず、日本も含めた世界経済が冷え込んでしまう。

世界中が困っているのに、ウクライナ問題の収束は、まったく見えない。今後カギとなるのは、僕は中国の動きだと考えている。

中国はロシアに同調すると見られていたが、ロシアへの経済制裁決議に対し、反対ではなく棄権している。つまりロシアと距離を置いたということだ。中国というのは、非常に現実主義な国である。習近平にすれば、どう動くのが自国にとって都合がいいかを、じっと見ているのではないか。

王毅外務大臣は、「国際社会と共に仲裁の用意はある」と、発言している。私は王毅外務大臣が駐日大使時代に何度も会って議論したが、大変クレバーで、胆力のある政治家である。その中国の動きに、僕はひとつの希望を見ている。

以前にも書いたが、僕は、1965年、ソ連の首都モスクワで開かれた、世界ドキュメンタリー会議に参加した。僕が「地方都市を見たい」と希望すると、政府側が案内してくれたのが、当時ソ連領のキエフだった。

キエフは石造りの建物が美しい、とてもいい街だった。東欧を代表する古都であり、当時のソ連政府が、外国客を連れて行くくらいの、「自慢の街」だったのである。

その旧ソ連屈指の「自慢の街」を、今ロシアが連日破壊している。そして多くの人命が失われている。なんともやり切れない思いだ。

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