進む「国民の貧困」責任は政府に – 赤木智弘

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小手先の消費税減税ではとても間に合わない日本の現状

僕は「消費税を減税しろ」と主張する人たちが大嫌いである。

いや、竹下登政権時から消費税に対して反対をしてきた人たちのことではない。そうではなく「私は経済に明るいです」というフリをしながら、消費税減税をすればすぐにでも景気は良くなると主張している人たちが大嫌いなのである。

理由は単純で、消費税という税金に問題があることには異論はないが、一方で消費税を減税した程度で景気が回復するはずなどないからである。

だいたい、年収300万円の人が、消費税がゼロになって使えるお金が年30万円増えたところで、景気が回復するとでも思っているのだろうか?1995年の世帯年収の中央値は545万円。2018年の世帯年収の中央値は437万円。ここ20年ほどで100万以上低下しているのである。(*1)

消費税ゼロでわずかばかりのお金が増えたところで、20年前の水準にすら届かないのである。

彼らは日本の不景気を極めて軽視している。日本の不景気は日本の政治経済に対する固定観念の上に成り立っており、小手先の消費税減税ではとても間に合わない。

日本人が昭和のような経済成長を夢見て、自民党政権に票を入れ続ける限り、景気は回復しないし、日本は世界からこれまで以上にどんどん遅れていくことは明白なのである。

給料は増えず手取り額は減少・・・失敗に終わったアベノミクス

アベノミクスは失敗した。

2013年に当時の安倍総理大臣は成長戦略を示し「10年後には現在の1人あたり国民総所得を150万円増やすことができる(*2)」と豪語したが、給料はまったく増えない一方で社会保険料は値上がりをして、同じ年収でも手取りは減ってしまった。

円安誘導で生活必需品の値段は徐々に上がっている。最近はよく「原材料の高騰による値上げ」という話を聞く。もちろん新型コロナ問題による流通の混乱などの要因もあるが、高騰の主要因は日本の円安である。

日本円の世界的な実力を示す「実質実効為替レート」は2010年を100としたときに68.07までに低下し、1972年並み、すなわち50年前の水準にまで落ち込んでしまった。(*3)

政府の円安誘導によって日本の円の価値は下がった。そろばんの上では円安により輸出産業が盛り上がり、その利益が国内に回り給料も上昇。年間2%程度の適切なインフレにより、景気の上昇と好循環を目指すはずだった。

しかし、結果としては2014年こそ2.76%のインフレを達成したが、その後は1%にも満たないインフレとマイナス成長を繰り返したのである。(*4)

そうした失敗が「国民の貧困」となって現れているのである。どのように言い訳をしようと、アベノミクスが失敗したことは言うまでもない。

BLOGOS編集部

日本政府が国民に見せたトリクルダウンというまやかし

政府は経済政策として企業にジャブジャブとお金を注いだ。

「富裕層が裕福になれば、経済活動が活発になり、景気が良くなって富が貧困層にも行き届く」というトリクルダウンの論理は、富裕層側に立つ経営者に大人気である。

しかし実際には、富裕層が裕福になっても日本全体の数パーセントしかいない富裕層が経済活動に使うことができる金額などたかが知れており、トリクルダウンの論理は破綻している。

企業に「社員の給料を上げるためのお金」を渡したところで、その利益を得るのは経営者と一部の上級の正社員だけである。

評論家たちによる的外れな「○○離れ」論

一方で、経済評論家などはいかにもしたり顔で、国民の「○○離れ」が不景気の一因であると解説し続けた。

若者が書籍を読まなくなり、マンガや雑誌ばかりが売れる「活字離れ」という言葉は昔からあったが、不況下で使われ続けた「○○離れ」と言う言葉は、不況によりお金がなく、人々が消費したくてもできないという不景気の本質を無視して、「彼らは望んで、消費をしないのだ」という言説によって、不景気の責任を国民に押しつけるための言葉であった。

こうして「需要の喚起」という言葉は「再分配の強化」や「社会保障の充実」という本来あるべき結論を回避し、「お金を使おうとしない人たちに消費は美徳だと訴える」という、無意味なやり方に終始したのである。

国内で高い車が売れないからって「運転の楽しさを伝える」と言われても、苦笑するしかない。

「お金の国民離れ」が加速する一方で、企業の内部留保という使われない無駄金は積み上がり続けている。お金が回らないので日銀がマイナス金利で銀行のお金を放出しようとしても、どこも金余りで借りたがらない。

そのくせ企業は内部留保を貯めたがるので、ますます金が動かなくなっていく。ネットでは「内部留保は資産だ!お金じゃない!」と適当な言い訳が流れるが、非金融の民間事業法人が保有する現預金残高はうなぎ登りに増えていることは調べれば簡単に分かるのである。

政府はさっさとお金を国民に直接ばらまけば良いのに、執拗にトリクルダウンを狙って上にしかばらまかない。

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