月食の時だけ低空飛行する、謎に満ちた鳥「クロムジアマツバメ」

GIZMODO

月明かりに左右されるようです。

ある研究チームが謎に包まれた生態を持つ「クロムジアマツバメ」の飛翔行動を調査したところ、いくつかの興味深い発見がありました。繁殖期以外のほぼ全ての時間を空中で過ごすこと、餌の捕獲には月明かりを頼っている可能性があることなどが分かったのです。そのうえ月食の最中には、一斉に降下する行動を取っており、チームはそれを記録することにも成功しています。

クロムジアマツバメ(Cypseloides niger)は、謎めいた鳥類です。地表に降りることは滅多にありませんが、米国西部とカナダの滝や洞窟沿いに巣を作ります。この鳥たちのライフサイクルについて知られるようになったのは、ごく最近のこと。クロムジアマツバメの中には冬の間、米国コロラド州の繁殖地から4,000マイル(約6,400キロメートル)旅して南はブラジルまで渡った集団がいることが、10年前に発見されています。

その研究に携わった科学者のRob Sparks氏らは、この鳥類の秘密をさらに紐解こうと、Black Swift Movement Ecologyプロジェクトを立ち上げました。Sparks氏はある科学会議で、スウェーデンの鳥類飛行リサーチャーAnders Hedenström氏と出会います。Hedenström氏の研究チームは過去に、ヨーロッパとアフリカに生息する近縁種ヨーロッパアマツバメが、1年のうち10カ月間を空中で過ごし、非繁殖期には滅多に着地しないことを発見しています。それがクロムジアマツバメにおいても当てはまるのかを調べるため、2人は共同で研究することにしました。

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データロガーを着けられたクロムジアマツバメ
Photo: Rob Spark

研究を行うため、彼らはコロラド州でかすみ網を使いながら慎重に捕らえたアマツバメに、飛行データを記録するハーネスを装着。以前の研究と同じく、こういったロガーで鳥たちのあらゆる情報を収集します。

Bird Conservancy of the Rockiesのリサーチ生物学者であるSparks氏は米Gizmodoへのメールで、「私たちの研究では、クロムジアマツバメは非繁殖期の間、旧世界のアマツバメに似て飛行中に眠りながら、着地せずにノンストップでアマゾンへと飛ぶことを確認した」と教えてくれました。クロムジアマツバメが空中で過ごした期間は1年のうち約8カ月に相当するそう。

研究チームは、アマツバメたちが食物である小さな昆虫を探す際に月明かりを当てにしていたらしいことにも気づきました。満月前後の10日間、鳥たちは最大4,000メートルと、一貫して通常よりも高くまで上昇していたのです。また、期せずして月食の間の鳥たちの飛翔の様子も記録できていました。月明かりがあった時には空高くを飛んでいた鳥たちが、月食になると急に高度を落としたのです。

研究成果はCurrent Biologyに掲載されました。

月食の間、鳥たちは急に高度を下げているものの、月食におびえているわけではないと研究者たちは考えています。「この鳥たちは飛行の達人で、この素晴らしい空中のライフスタイルへと進化し、日中と夜間の両方のあらゆるコンディションに適応するようになった」とSparks氏は書いていました。

この鳥たちの満月と月食の時の飛行パターンは、彼らにとっての月明かりの重要性を浮き彫りにするようでした。チームはこの研究成果によって、鳥たちのミステリアスな生態がさらに解明されることを願っています。クロムジアマツバメは年々、生息数が減少していると推測されているからこそ、生態を解明することがさらに一層重要なのです。

ルンド大学で研究するHedenström氏は、「クロムジアマツバメは北米において保全を懸念されているどちらかというと珍しい鳥類であって、年間サイクルの調査は彼らに必要とされるべき適切な判断を行ううえで役立つ」と語っていました。

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月明かりが鳥の飛行高度に与える影響を示したイラスト
Illustration: Hedenström, et al/Current Biology

Sparks氏は、この素晴らしくて不思議な鳥類の生態への理解を深めるだけでも価値があると付け加えています。「(この研究が)自然界への深い認識を高め、地上に生きとし生けるものの尊さを思いやれたら」と述べていました。

Sparks氏たちの次の計画は、クロムジアマツバメの繫殖期における食物の入手法を研究することと、彼らの生息数を追跡する確実な方法を考え出すこと。Hedenström氏は、同僚たちと共に大西洋をわたる別の夜鳥の行動を研究しています。

Source: Audubon, BioOne Complete, Current Biology(1, 2),

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