プラネックスコミュニケーションズから、2.5Gbpsに対応する8ポートのスイッチングハブ「FX2G-08EM」が発売された。
8ポートに対応することで、一般的な家庭や小規模なオフィスであれば、これ1台で有線接続のほとんどの機器をまかなえる実用性の高い製品だ。コスパで海外勢と“がっぷり四つ”で組み合える期待の存在だ。
2.5Gbps対応機器が当たり前につながる環境を
実売1万円以下の2.5Gbps対応5ポートスイッチングハブ「FX2G-05EM」に続き、プラネックスがまたスイッチングハブ界の新しい常識を提案してきた。
今回登場した製品は、同じく2.5Gbps対応でも、ポート数を8にまで増やした「FX2G-08EM」。
従来モデルの5ポートでも実用性は十分だが、現状、2.5Gbps対応の機器は、ハイエンドやゲーミングに対応するノートPC、NASなど、台数が限られているため、1Gbps対応のスイッチングハブ+2.5Gbps対応のスイッチングハブという2台構成で利用している人も少なくないと思われる。
そうした環境でも、8ポートのFX2G-08EMなら、プラス3ポート分の余裕のおかげで、1台のスイッチングハブで家庭内のほとんどの有線接続の機器を収納可能となる。
つまり、2.5Gbps対応の多ポートスイッチングハブを用意しておけば、接続する機器側の規格などを意識することなく、常に、その機器の最適な速度を発揮できる環境を整えることができるわけだ。
2.5Gbps LANの需要は、これまでオフィスと考えられてきたが、どうやら家庭向けの方が早く普及しそうだ。自作PCやゲーミングノートなど、2.5Gbpsに対応したPCや機器は家庭の方が増えてきているためだ。
現在のゲーミングPCのカジュアル化(低価格化と利用者層の拡大)をいち早くとらえた例として、本連載でアイ・オー・データ機器の2.5Gbps対応Wi-Fiルーター「WN-DAX3000QR」を取り上げたが、今後、PCやゲーム機などを2.5Gbpsや2402MbpsのWi-Fiで「当たり前」につなげられる環境はとても重要だ。本製品も、こうした時代の変化をよくとらえた製品の1つと言える。
8ポートでも先駆者となる
このため、本製品は、なるべく多くの人が商品を手に取りやすくするために戦略的な価格設定がなされている。
以下の表は、Amazon.co.jpにて販売されている主な2.5Gbps対応スイッチングハブのリストだ。現状、8ポート対応の製品は、本製品に加え、TP-Link「TL-SG108-M2」とアイ・オー・データ機器「ETQG-ESH08」の3製品となっているが、本製品は実売価格が1万7721円とダントツに安く、場合によっては他社の5ポートより安い。
メーカー | 機種 | 実売価格 | ポート数 |
プラネックス | FX2G-08EM | 1万7721円 | 8 |
プラネックス | FX2G-05EM | 9378円 | 5 |
TP-Link | TL-SG108-M2 | 1万9900円 | 8 |
TP-Link | TL-SG105-M2 | 1万2636円 | 5 |
バッファロー | LXW-2G5 | 1万5100円 | 5 |
アイ・オー・データ機器 | ETQG-ESH08 | 2万3364円 | 8 |
アイ・オー・データ機器 | ETQG-ESH05 | 1万8636円 | 5 |
エレコム | EHC-Q05MA-HJB | 1万9602円 | 5 |
ASUSTOR | ASW205T | 1万5582円 | 5 |
QNAP | QSW-1105-5T | 1万6632円 | 5 |
こうした市場にまだ競合が少ない状況では、他社と価格の足並みをそろえるのがこれまでの常識だった。しかし、プラネックスは価格で競合をリードするという積極的な戦いを挑んできた。それも、「コスパ」の代名詞とも言えるTP-Linkと“がっぷり四つ”で、だ。
5ポートの「FX2G-05EM」が価格面で一人旅を続けている状況を見ると、競合はどうやら価格競争に持ち込みたくない状況に見えるが、8ポートも、となれば、他社の戦い方も変わらざるを得ないと言えそうだ。
スペック的にはほぼ同じ
価格面での戦いに注目する理由は、スイッチングハブはスペック面での差がほとんど見られないからだ。
以下は、現在、Amazon.co.jpで購入可能な2.5Gbps対応の8ポートスイッチングハブの比較だ。これを見ても分かる通り、基本的な機能はほぼ共通で、同じような製品と言っても過言ではない。
メーカー | プラネックス FX2G-08EM | TP-Link TL-SG108-M2 | アイ・オー・データ機器 ETQG-ESH08 |
実売価格 | 1万7721円 | 1万9900円 | 2万3364円 |
ポート数 | 8 | 8 | 8 |
IEEE 802.11u(100BASE-TX) | 〇 | 〇 | 〇 |
IEEE 802.3ab(1000BASE-T) | 〇 | 〇 | 〇 |
IEEE 802.3bz(2.5GBASE-T) | 〇 | 〇 | 〇 |
IEEE 802.3x(フローコントロール) | 〇 | 〇 | 〇 |
IEEE 802.3az(Energy Efficiet Ethernet) | 〇 | – | – |
IEEE 802.1p(QoS) | – | 〇 | – |
パケットバッファ | 1.5MBytes | 1.5MBytes | 12Mbit(1.5MBytes) |
スイッチングファブリック | 40Gbps | 40Gbps | 40Gbps |
MACアドレス登録数 | 1万6000 | 1万6000 | 1万6384 |
スループット | 3,720,238pps(2.5Gbps) | 29.8Mbps | 3,720,238pps(2.5Gbps) |
EAP/BPDU透過 | 〇 | – | 〇 |
ループ検知 | 〇 | – | 〇 |
ジャンボフレーム | 12KBytes | 10KBytes | 12288bytes |
消費電力 | 14.93W | 15.65W | 14W |
サイズ(幅×奥行×高さ) | 240×27×105mm | 226×35×131mm | 240×27×105mm |
動作環境 | 0~40℃ | 0~50℃ | 0~40℃ |
保証期間 | 1年 | 永久無償保証 | 3年保証 |
詳細にスペックを見比べると、国内製品はループ検知機能を搭載しており、さらに本製品では、熱対策も考慮した省電力機能を重視している点が1つの特徴と言えるが、大きな違いがあるわけではない。
動作環境と保証面が少し控えめな点は気になるが、そもそも家庭での利用であれば、スイッチングハブが頻繁に故障することは考えにくいだろう(あっても初期不良なので1年で十分)。
こうなるとユーザーの立場としては、積極的に価格で選びたくなるのも当然だ。
筐体で積極的に放熱
本製品の製品的な特長となるのは、熱対策を工夫している点だ。
詳細は、FX2G-08EMの製品情報ページに掲載されている以下の内部写真を参照して欲しいが、CPUの上部のヒートシンクに加え、下部に放熱用シリコンパッドや熱拡散放熱用アルミプレート、難燃性ポリカーボネートシートなどを配することで、筐体の底面からも積極的に放熱している。
2.5Gbps以上のスイッチングハブの場合、利用状況によっては筐体が熱くなる。設置場所や利用状況によっても異なるが、50℃を少し超えるくらいになるのが一般的だ。
この温度に対しては、「熱くて心配」と思うかもしれないが、それは逆だ。
前述した熱対策がうまく機能して、内部の発熱を筐体全体で効率的に逃がすことができている証拠となる。
なお、同様の対策はアイ・オー・データ機器の「ETQG-ESH08」でもなされている。ETQG-ESH08はループ検知用スイッチが前面にあるのが違いだが、サイズも同じで、写真を見る限り、基盤の構成も同じなので、中身はほぼ同一と考えてよさそうだ。
こうなると、価格差が余計に気になってくる。
2.5Gbpsが当たり前につながる環境に
このように、プラネックスの「FX2G-08EM」は、2.5Gbps用というよりは、2.5Gbpsも混在する環境を1台だけでカバー可能なスイッチングハブと言える。
もちろん、オフィスのオール2.5Gbps化に活用することもできるが、現状は、先にも触れたように、市場が先に立ち上がりつつあるカジュアルな家庭向け2.5Gbps対応機器をつなぐための機器として注目したい。
価格的なメリットも大きい上、熱対策もしっかりとしている。また、念のため速度も計測してみたが、以下のように10Gbpsの光回線(auひかり ホーム10ギガ)を利用した場合で、しっかりと2.5Gbpsの実力を発揮できているので、買って損のない製品と言えるだろう。
Down | Up | |
1Gbps | 945.4 | 944.39 |
2.5Gbps | 2287.63 | 2359.81 |