人間の脳はマルチタスクが苦手 – みんなの介護

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スマホを開けば、ユーチューブにツイッター、LINEやスラックなど様々なアプリケーションがあなたを待ち受けている。デジタルデバイスを使い、次々と頭を切り替えなければいけない現代社会では集中力を得ることがとても難しくなっている。科学的なエビデンスに基づいて能力を伸ばす方法を記した書籍が自国のスウェーデンで異例のベストセラー。一躍時の人となったアンデシュ・ハンセン氏自身が実践する方法も含めて、集中力の高め方を聞いた。

瞑想によって集中力はいかに得難いものかを実感

みんなの介護 ここまでのお話でスマホ依存に陥ってしまう仕組みをお聞きしました。スマホ依存のデメリットとして集中力が現代人から失われているように思います。

ハンセン そうですね。とりわけ今の社会は集中力が求められる時代です。集中しないと学校の勉強や仕事がはかどりません。また、勉強に集中できないと、進路選択に影響して未来が変わってしまいます。

私も最近集中力の大切さをあらためて痛感して、瞑想を始めました。毎日朝と夕方に10分ずつ行うようにしています。そこで気づいたことは、目の前のことに集中することがいかに難しいかです。

瞑想中は呼吸に集中するわけです。しかし、集中しようと思って瞑想を始めても、数秒すると先週あった出来事や、数カ月前にあった出来事が次々と浮かんできてしまう……。

今のところ、何も考えずに20秒以上呼吸に集中することができません。反対に、心がどれほど簡単に集中を乱されやすいかー。私は、心の仕組みを学んだのです。

みんなの介護 なるほど。普段はあまり意識していなくても人間の心はさまざまなことにかき乱されているのですね。集中力と言えば、人間が集中できる時間は、15分・30分・45分など、さまざまな説があります。

また、45分集中したら15分休むのが良いという話も耳にします。ハンセン先生は、上手に集中するための集中と休憩のリズムはどのように考えていますか?

ハンセン 集中が長持ちする時間や時間帯は、人によってさまざまです。私個人のことで言えば、朝の方が集中しやすいですね。

45分集中して15分休憩するというリズムは、おそらく多くの人にとって有効でしょう。しかし、個人によって集中しやすいリズムは違うので、すべての人に合うわけでもありません。

先ほどの私の瞑想の話にもあったように、集中力を持続させることは至難の業です。だからこそ、私たちは集中力を上手に育てていかなければならない。

仕事をするときはメールチェックの時間を決めるべし

みんなの介護 個人的な相談になってしまうのですが、私は文章を書くことに集中しているときにメールが届くと「早く返事をしないと」と思い、集中力が途切れてしまいます。マルチタスクの仕事の仕方で良い方法や心構えがあれば教えていただけないでしょうか。

ハンセン まず、メールチェックをする時間を設定してしまうことですね。例えば、毎日9時、11時、14時、16時はメールチェックの時間にあてると決めてしまうのです。

また、常にメールをチェックしないように注意する。そして、集中力が必要とされるような仕事をしているときは、マルチタスクを避けることです。

人間の脳は基本的にマルチタスクが苦手です。同時にいくつもの仕事をこなしているつもりになっていても、脳は最適な方法で機能していません。良いものを生み出せるインスピレーションは、あなたが集中しているときに訪れる。だからこそ、集中できる環境を守ることが大切だと思います。

またメールをすぐに返せず、誰かがあなたからの返事を何時間も待たなければならないような状況になったとしても、それは世界の終わりではないと思ってください。

みんなの介護 なるほど。集中力に関してもう1点お聞きしたいことがあります。締め切りが迫っているときには集中力が高まっているように感じるのですが、いかがでしょうか?

ハンセン 適切な量のストレスは、私たちの中にある力を引き出し、集中力や物事を理解する力を高めるのに役立ちます。だからこそ、締め切りなどの期限を設定することが適度なストレスとなり、執筆がはかどるのです。

私は本を書くとき、「1年で本を完成させよう」というような期限を設定しません。代わりに、「今週の金曜日までにページ書く」などと短い期限を設定します。 そして、「来週の金曜日までには、最初の章の下書きを完成させる」などと先々の期限まで決めてしまいます。

この方法は、適切な量のストレスを生み出すとともに、先延ばしをしないことにも役立っています。

スマホ依存を克服するためのアドバイス

みんなの介護 最後にスマホ依存から脱却するための具体的な方法を教えてください。

ハンセン それには、『スマホ脳』の最後に書いた「デジタル時代のアドバイス」が役に立つと思います。日常の中で具体的に取り組めることばかりなので、ぜひ実践してスマホ依存から自由になり、心身の健康を維持してほしいです。

自分のスマホ利用時間を知ろう
1日に何度スマホを手に取り、どのくらい時間をかけているのかを把握するために、アプリを使ってみるといい。そうすれば、スマホに奪われている時間が一目瞭然だ。自分を知ることが、変化への第一歩になる。
目覚まし時計と腕時計を買おう
スマホでなくてもいい機能は、スマホを使わないようにしよう。
毎日1~2時間、スマホをオフに
毎日2時間、オフにすることを周りの人にも伝えておこう。そうすれば、返事がないという怒りのメッセージが届いたり、人をイライラさせたりせずにすむ。
プッシュ通知をすべてオフにしよう
スマホの表示をモノクロに
色のない画面のほうがドーパミンの放出量が少ない。それによって、どのくらいスクロールを続けたくなるかが大きく左右される。
運転中はサイレントモードに
危険な瞬間に気が散るリスクが減る。悪いタイミングでお知らせや通話が来ると、いちばん必要なときに集中が妨げられる可能性がある。それに応答しなかったとしても、だ。
スマホやタブレット端末、電子書籍リーダーの電源を切ろう
少なくともベッドに入る1時間前には。
スマホを寝室におかない
少しでも眠れないなら置かないほうがいい。朝起きるために目覚まし時計を買おう。
スマホやタブレット端末、電子書籍リーダーの電源を切ろう
少なくともベッドに入る1時間前には。
どうしてもスマホを寝室に置くなら、着信音を消しマナーモードに
寝る直前に仕事のメールを開かない
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