ゼレンスキー氏演説 歓迎に疑問 – 深谷隆司

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 3月20日、ウクライナ侵攻が思ったようにうまくいかず、ついにロシアは極超音速ミサイルを撃ち込んだ。音速の5倍(マッハ5)以上の速度だから地上レーダーでの探知は難しく、正確に攻撃目標を破壊し、しかも核搭載も可能という恐るべき兵器である。

 今までこの兵器開発を重ねていたロシアが実戦初使用したわけで、相手の戦意を削ぐためであろうが絶対に許せない暴挙である。

 1991年ゴルバチョフ大統領が辞任しソ連が崩壊したが、この時、ロシアやウクライナを含む15の共和国が次々と独立した。

 ロシアにとってウクライナのキエフは父祖の地で、プーチンはソ連時代の版図に郷愁を抱き、なんとしてでもロシアに組み込もうとしているのだ。

 かつてウクライナは「欧州の穀倉」と言われるほど肥沃な大地であったが、収穫された穀物はほとんどモスクワに送られ、ウクライナ人の口に入らず皆飢えで苦しんでいた。スターリンによる人為的大飢饉と言われている。だから独立したウクライナは西側の欧州連合(EU)や北大西洋条約機構(NATO)に入りたいと熱望していた。

 ロシアはこうした動きはアメリカが世界の覇権を狙っての東方拡大だと問題視している。

 いずれにしてもルーツが同じだからといって独立国家を攻撃し、その領土を強奪することなど許されることではない。

 かつてウクライナは核兵器所有の世界第3位の軍事大国であった。これを恐れた米英露が、ウクライナに核を放棄させ、その代わりにウクライナの安全を保障すると約束する「ブタペスト覚書」を協定した。実際には核兵器は露に渡った。

 ロシアはウクライナに攻撃はしないと約束したのに今回の侵攻である。

 「世界の国の公正と信義に期待して」と武器を捨て裸になった日本、今の憲法と日本を取り巻く隣国の姿を思うと、「明日は我が身」と戦慄を覚える。

 ゼレンスキー大統領はウクライナに踏みとどまり、国民と一体になって戦っている。その姿に世界の圧倒的多くの国が感動し、あらゆる支援を惜しまない。ゼレンスキー大統領は各国の国会でビデオ演説をし、今度は日本でも行われるようだ。

 ただ、16日の米国連邦議会向けの演説で、ゼレンスキー大統領はロシアの残虐行為を真珠湾攻撃になぞらえていた。彼の無知と偏見に私は驚いた。日本軍は真珠湾で民間人を狙った攻撃や、無差別爆撃をしていない。

 こうしたことを日本はきっちり糺していかなければならないが、ほとんどの人が知らんぷりである。

 狂気のプーチンの暴挙は断じて許せない。しかし、他の国がやっているからと安易に国会でのビデオ演説を歓迎することにも問題があるのではないか。岸田総理はじめ政治家たちの正しい判断と対応に期待したい。

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