就職するためにある日本の大学 – ヒロ

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いわゆる新卒の採用枠があまりないカナダ。先日、保険会社の担当とランチをしたら新入社員を連れてきました。インドから移民して大学院を出たばかりの女性で「なぜ、保険業界に?」ときけば大学院でその勉強をしてきたと。保険業界は上に上がるためには常に試験がついて回り、お勉強好きでないと務まらない業種の一つです。過去30年お付き合いしてきたこの会社の弊社の担当者は男性が2回だけでほとんどの期間は女性でした。女性向きなのかもしれません。

日本で「Youは何しに大学へ」と聞けば就職理由が50%、学歴取得が47%、資格のため40%…となっています。この就職のため、というのが曲者で一流企業や公官庁に新卒枠で入ることを目指していると考えてよいでしょう。それは人生の安定ルートの確保ともいえ、人生22年目にして「詰んでいる」とも言えます。なぜならば会社に入り、普通に仕事をすればまずまずの生活は確保でき、必死にならなくても会社の言うことを聞いていればどうにかなるからです。

今後、企業はAIやIT化をさらに進め、中途半端な人材は不要になる、これが私の見方です。日本の労働生産性はOECD38カ国中23位で悪化のトレンドです。最新データの2020年は若干改善していますが、理由は労働時間の短縮が理由。本来であればこれだけテクノロジーを導入している社会において一人が生み出す生産能力は飛躍的に上がらなくてはいけないのですが、それがそうならないのはご批判を覚悟で申し上げればクビが切れない日本の制度上の問題であります。

もちろんクビにすることは厳しい判断です。しかし、苦労して入社したもののこの会社の性格と自分は合わないと思ってもなかなか辞める勇気がない社員も多いのです。そこで無理をして働くことでむしろ精神衛生的に悪化させることもあるでしょう。わかりやすい表現を取れば「どんな不仲の夫婦でも片方(会社側)からは離婚してもらえない」のと同じです。

私が人材を採用する時には2つ、気をつけていることがあります。一つはこの仕事が好きになってもらえそうか、もう一つはこの会社とウマが合いそうか、という点です。よって私は絶対に即決はしないのです。一日置いて電話でもう一度話をして決めます。一晩寝ると双方、良い面悪い面を落ち着いて考えることができるのです。

仮に日本も労働の移動の自由、つまり雇用者も被雇用者も一定条件の下で労働契約を解除できる時代になったとしたら被雇用者は商品と同じ、自分が他の会社に売れる価値ある商品でなくてはいけません。これができないのは冒頭のカナダの保険業界のように公的な試験が常について回るような仕組みが少ないこともあるでしょう。専門的知識の欠如もあるかもしれません。その点で大学院での深掘りは今後も価値があるものだと考えています。

当地の大学やカレッジに行くと何処も建設ラッシュです。大学施設をどんどん増強しています。理由は学生数の増大と共にリサーチプログラム(研究開発)が極めて進んでいる点です。例えば当地UBCは世界大学ランキングでは東大とほぼ同等ですが、研究開発に約700億円、1万本以上の研究プログラムで235の企業が支援しています。産学共同プログラムですが、日本の大学とは圧倒的な差です。

大学とは何しに行くところか、といえば勉強するところであり、就職するためのステップにしている日本とはまるで違います。教科書だけで大学卒業時には背の高さぐらい買うとか、教科書代だけで総額100−200万円も使うという人もいますが、それぐらい勉強しないと卒業できない、ともいえるのです。日本の大学経営はビジネスですので国から補助金をもらい、学生から売り上げを計上し、なるべく安いコストの先生をうまく配置しながら、名物先生を何人か確保する、といった感じでしょう。これで本当に良いのでしょうか?

私は一つには大学の国際化を進めることが重要かと思います。英語での講義/授業が必要だと思いますが、日本には英語で授業できる先生は少ないとされます。ならば何単位かは英語ですすめる授業のクラス履行を必須にするといった工夫が必要でしょう。先生も海外から招へいするぐらいの資金をつけるべきです。すると高校生が受験する際の考え方の基準が変わってくるはずです。

大学進学率が5割を超えるのは結構ですが、これから少子化でどこの大学も経営は厳しくなります。ならばアジア地区からの学生を大幅に増やさねばならないのは自明です。私は30年後に日本人学生がマイノリティになるぐらい日本の大学が国際化すれば本望だと思います。そしてレベルの低い大学は消えるのです。だからこそ、大学改革は絶対必要で、そこが変われば高校までの偏差値偏重も変わるし、企業の採用も変わると思っています。

文科省も均一教育からメリハリ教育という発想に変えるべきではないでしょうか?

では今日はこのぐらいで。

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