様々な理由で計画実行に至らなかった、NASAが描いた7つのコンセプト

GIZMODO

月への低コストな輸送システム

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Image: TransAstronautics Corporation
AstraGateのコンセプト図

Trans Astronautics社は少し前に、地球と月の間に輸送システムを建設するAstraGateという計画を提案しました。このシステムは推進剤を用いる代わりに、軌道を回るAstraGateステーションが宇宙機をキャッチして発射するというもの。この提案については、「大西洋横断の定期的な汽船の旅が短期間での植民と新旧世界間での貿易の拡大を可能にしたのと同じように、中産階級の人々が月面のリサーチセンターを行き来できるよう手頃な価格に設計された」システムだとメールで説明されました。計画は2018年と2019年にNASAのInnovative Advanced Concepts(革新的先進概念、NIAC)に売り込まれましたが、どちらの年も第2ラウンド止まりでした。

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Image: TransAstronautics Corporation
AstraGateの注釈付きイラスト

同社のシステムエンジニアCraig Peterson氏はこの提案がいくつかの要因によって却下されたと語り、メールには「このコンセプトの絶大なスケールと機材の利用は、彼らが確実に成し遂げられると考えられなかったもの」だと書いていました。彼は「当面の間は延期することにした」と付け加えています。

移動型の地質学研究室

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Photo: USGS
1965年に撮影された、移動月面研究室 (MOLAB)

1960年代初め、月へ向かうアポロ計画の準備が進められているなかで、NASAは宇宙飛行士たちが月面を探索・調査するための様々な手段を検討しました。そういったコンセプトの1つが大掛かりな移動研究室、略してMOLABです。この大型な4輪ローバーは移動できることに加えて、科学研究室として機能しながら宇宙飛行士たちの一時的な住まいにもなりました。プロトタイプが開発されてニューメキシコ州の砂漠でテストされましたが、重量は8,200ポンド(約3,720kg)とGM製のMOLABはあまりに重すぎたのです。それを月へと運ぶとなると簡単な仕事ではなく、費用もかさみます。やがてプロトタイプはアメリカ地質調査所に貸し出され、鉱床のマッピングと土壌サンプルの採取に使われたのでした。

原子力ロケット

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Photo: NASA
1964年、原子力ロケットのコンセプトに取り組む技術者たち

1955年から1973年にかけて、アメリカは長距離ミッションで使うための原子力ロケットを開発しようとしていました。NASAによれば、基本的なアイデアは「核分裂を利用して液体水素を加熱し、それを化学燃料ロケットの推力として噴出する」というもの。元々は米国空軍のために原子力航空機を開発するという構想でしたが、プログラムは宇宙ベースの活用へとシフトしたため、NASAが引き継ぐことになったのです。このプログラムはロケット飛翔体応用原子力エンジン(NERVA)の開発まで進みました。2番目のNERVAエンジンが開発されて地上試験が行なわれたものの、プログラムは実験飛行の実施前に打ち切られたのでした。

一般市民のための宇宙居住地

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Illustration: Rick Guidice/NASA
先進的なスペースコロニーのコンセプト図

アポロ計画の成功を受けて、NASAは地球外コロニーの可能性に目を向けました。当局は1975年の夏にエイムズ研究センターで“夏休みの自由研究”を行ない、専門家やアーティストたちに彼らが思い描く宇宙空間のコロニー構想を共有してもらいました。NASAのいくつかある研究の1つによれば、1万人が「働き、家庭を築いて、普通の人間の生活をする」という宇宙の居留地など大胆なコンセプトが生まれたとか。ドーナツ型の居住地は疑似重力を持つため、昔ながらの家屋やモノレール、樹木、芝生、水域そして農業が可能になります。いくつかの居住地は早ければ1990年代に出現するかもという希望がありましたが、こういったアイデアは素晴らしくても技術的な観点からは度が過ぎていたのでした。

最も近い恒星系への旅

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Image: US Naval Academy/NASA/USRA
星間探査機のデザインを示すラフな図解

1988年、NASAと大学宇宙研究協会(USRA)は地球から4.37光年離れた三重連星系であるケンタウルス座アルファ星を探索する探査機の予備的なデザインを発表しました。約440tの無人探査機が最も近い恒星系に到達するには100年ほどかかりますが、「このミッションが可能になるにはいくつかの技術が開発されなくてはなりません」と提案の著者らは認めています。これには「核パルス推進」や300kWを出力できる長寿命の核分裂反応炉が含まれていました。探査機の原子炉は通信システムの動力源にもなり、星間物質の特性、ケンタウルス座アルファ星の目に見えない特徴、そして恒星の位置、動きや光度に関するもっと正確な天文学的な測定データを返送します。残念ながらプロジェクト・ロングショットと呼ばれていたこの計画はまさに望みが薄く、ミッションに必要とされていたテクノロジーは今も実現に至っていません。

中止になったスペースシャトル

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Photo: NASA

かつてスペースシャトルは未来の手段のように思われていました。この再使用型宇宙輸送システムを次のレベルに引き上げたかったNASAは、1990年代初めにアップデートされたコンセプトを探り始めます。そういった労力の集大成がオービタル・サイエンシズ社のX-34、低コストな再使用型宇宙機のテストと宇宙弾道飛行での実験を行なうためのプロトタイプでした。 X-34は2001年に完成間近でしたが、予算への懸念によりプログラムは中止されたのです。

タイタンの油の海を探索する探査機

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Image: Lockheed Martin/NASA
TiMEのイメージ図

2009年、Proxemy ResearchはNASAのディスカバリー計画の候補として、タイタン表層海探査(TiME)の提案書を提出しました。この探査機は2016年に土星へと打ち上げられ、2023年にタイタンのリゲイア海に到達するというものでした。提案書によれば、探査機はメタンとエタンの海に浮かんで100日間近くに及ぶ「地球外の海洋の初探査」を行なう予定だったとか。NASAによると推定4億2500万ドルのミッションはタイタンにおけるメタン循環への理解を深め、同衛星の歴史を調査して、「生命の限界を探索する」という内容だそう。TiMEはディスカバリー選定の最終候補に残りましたが、結局は却下されてしまったのでした。しかしNASAがようやくタイタンに向かうミッションを選んだことは朗報でしょう。ドローン型の「ドラゴンフライ」は2027年に打ち上げが予定されています。

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