消費量を上回る原油を産出するアメリカがロシアから原油を輸入していたのはなぜか?

GIGAZINE
2022年03月11日 21時00分
メモ



アメリカは、ウクライナ侵攻を続けるロシアへの制裁措置としてロシア産の原油などの輸入禁止を発表しました。この決定に関する「そもそもアメリカは自国の消費量以上の原油を産出しているのに、なぜ海外から原油を輸入しているのか」という疑問について、Nasdaqが解説しています。

America Produces Enough Oil to Meet Its Needs, So Why Do We Import Crude? | Nasdaq
https://www.nasdaq.com/articles/america-produces-enough-oil-to-meet-its-needs-so-why-do-we-import-crude

日本では極少量の原油しか産出されておらず、消費する原油のほとんどを輸入に頼っています。これに対して、アメリカは1日当たり1812万バレルの消費に対して1日1840万バレルの原油を産出しており、産出量が消費量を上回っています。一見するとアメリカが原油を輸入する必要はないように思えますが、実際にはアメリカは1日当たり786万バレルもの原油を他国から輸入しています。

アメリカが原油を輸入している理由の1つは、国ごとの採油費の違いにあります。原油をくみ揚げる際には「原油とガスの分離」「原油の脱水・脱塩」など多くの処理が必要であり、この際に必要な費用は国よって異なります。Nasdaqによると、アメリカで原油をくみ揚げるよりも、他国でくみ揚げてアメリカまで輸送するほうが安く済む場合が多いとのこと。このため、アメリカは多くの原油を輸入しているのです。


また、原油は産出される場所によってAPI比重や硫黄含有量などが異なり、アメリカではAPI比重が低く硫黄含有量が少ない「スウィート・オイル」が多く産出されています。原油の組成が異なると原油の精製プロセスも変化しますが、上記の通り他国から輸入する原油の方が安かったことからアメリカの製油所は他国の原油処理に最適化されています。

原油処理施設を一から建設することには多くのコストがかかることからアメリカでは原油処理施設を何十年もメンテナンスしながら使い続けており、スウィート・オイルの処理には最適化されていません。このため、アメリカでは他国から原油を輸入し続けなければならない状況が続いているのです。


さらに、Nasdaqはアメリカのエネルギー政策が原油への依存を減らす方向に働かなかったことも、海外の原油に依存する現状を生み出す一因になったと指摘しています。これらの理由から、多くの石油を産出するアメリカであってもロシアからの原油輸入禁止の影響は避けられないというわけです。

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2022年03月11日 21時00分00秒 in Posted by log1o_hf

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