たくさん服を作っていると「自分が作った服を誰かに着てほしい」と思うようになる。
昔、おばあちゃんの家には、おばあちゃんが毛糸で編んだ服を着たキューピー人形が何体も並んでいて、ちょっとしたオカルトだった。
でも、あれはこういう気持ちだったんだな、と今ならわかる。
服は着るだけじゃなくて、着せるのも楽しいのだ。
私も服を誰かに着せたい。誰かに着て欲しい。
どうせなら服を着たことがない誰かがいい。
衣服文化は人類から始まったから、それより前に絶滅した恐竜なら着たことがないはずだ。
恐竜に服を着せたい!恐竜にもおしゃれを楽しんで欲しい!恐竜のために服を作ることにしよう。
採寸に行く
2022年にはタイムマシンがまだないので、Googleで服を着てくれそうな恐竜を探していると、デイリーポータルZで北向ハナウタさんがぴったりの記事を書いていた。便利な世界、便利なデイリーポータルZである。
その恐竜公園の記事から、ピノキオ公園にいる恐竜の服を仕立てることに決めた。理由は着せやすそうだったから。
石川台という駅を降り、住宅地を歩くこと10分。
今回のお客様であるティラノサウルスが見えてきた。
どうぞよろしくお願いいたします。
さっそく採寸に入る。まずは首周りから失礼します。
首周りは106センチ。太い!人間が30センチぐらいなので3倍以上もある。これはデカいえりになるぞ。
次は、そで丈とそで幅と腕まわり。そでを作る時に必要な数値だ。
この恐竜、腕が曲がっているし、右腕の二の腕が脇にくっついてしまっている。この右腕問題をどう処理するかが悩みどころである。
次はウエストだ。恐竜のウエストはどこなんだろう。
しかし、メジャーが足りない!
それから肩幅、身幅、身丈など、必要そうなところを測り、メモに書き込んでいく。
今回採寸した恐竜のサイズはこちら。
さあ、この恐竜にどんな服を作ってあげようか。
この恐竜がより魅力的に見える服にしたい。
ワイルドでカッコいいアロハシャツはどうだろう!
恐竜ってアロハシャツ似合いそうだし。
さっそくその足で布を買いに行った。
恐竜のインパクトに負けないような派手な色や柄がいいなと探していたら、ぴったりな布が見つかった。
素材はナイロンで撥水加工が施されている。レインコートなどに使う生地だ。
型紙の改造
まずは人間用の型紙をベースにして、恐竜用の型紙を作りたい。
その前に、人間と恐竜の身体の違いから紐解いていこう。
次に、人間との違いを型紙に反映させていこう!
二の腕がわきにくっついていた右腕問題は、そでぐりを大きくすることで解決しそうだ。
型紙の作成〜仮縫い
イメージができたら実際に恐竜の型紙を作っていこう。
まずは手持ちのアロハシャツから人間用の型紙を作る。
突然だけど、洋裁のゴールデンタイムは昼だと思う。
特に8時から14時までの作業の捗り具合がすごい。
人間用型紙ができた!
この型紙を採寸サイズをもとに、先ほどのイメージで恐竜用に展開していく。
型紙はできたけど、どれも見たことのない形で本当にこれで合っているのか不安である。
そんな不安がある時は、仮縫いをして確かめよう!
仮縫いとは、別の布でサンプルを作り、実際にお客様に着せてみてシルエットを微調整をする作業だ。
この補正を経てより完璧な型紙を作る。
ということで、家で余っている布を寄せ集めた。これを仮縫い用に使おう。
型紙に合わせて裁断したら、今回は縫い合わせずにピンで止めていく。
全体をピンで止めれば完成だ!
恐竜のフィッティング
採寸から1週間後、再び恐竜に会いにきた。
さっそく仮縫いの服を着せていく。
そでぐりを大きくしたおかげで、二の腕がわきにくっついていた右腕は違和感なく着せることができた。
しかし、右手は入ったのに左手が入らない。というか届かない。
それなら背中を開けてゆとりを出し、そでを通せるようにしよう!
着れた!やったー!
しかしよく見ると、首回りが開きすぎなのが気になる。
次にえりをつけてみよう
少し離れて、気になるところはないか最終チェック。
うん、いいでしょう!これでいこう!
型紙修正〜本縫い
仮縫いの布を修正し、完璧な恐竜の型紙が完成!
最初はこんな型紙見たことないと思ったけれど、足が6本あるような虫の服だとまた全然違う形になりそうだ。
そう考えると恐竜はまだ人間の型紙に近い。
これで安心してかわいい布で裁断できるぞ。
ジャキジャキっと裁断完了!
さくっと縫い合わせていこう!クリア素材のポケットもつけちゃうよ。
アロハにクリアポケット、なんて最高の組み合わせなのでしょう。この夏はみんなでクリアポケットを推していこう!
背中はスナップボタンで開閉できるようにする。
前にもボタンをつける。
さらに人間も着れたらいいなと思ったので、寸法を小さくするためのスナップボタンをつけた。
これで完成!!
恐竜に服を着せにいく
さらに1週間後。
ついに、恐竜に服を着せる日がやってきた。グランドフィナーレです。
こんにちは、出来上がりましたよ。
さっそく着てもらおう。
そでもすんなり通すことができた。
背中のスナップボタンを止めて、
おお!似合う!!
なんだか恐竜が楽しそうだ。サーフィン上手そうだし、おしゃれが好きそう。
前から見ると、
令和に休暇を楽しみにきた恐竜だ。令和の日本は美味しいものがいっぱいあるよ、スペアリブとか。
何よりちゃんと着せることができてよかった。
自分が作った服を着てもらって、すごくカッコよく見えるのが嬉しい。私がショーをするときは、ぜひランウェイを歩いてください。
恐竜じゃなければこの柄のアロハをこんなにワイルドに着こなせないのだ。
恐竜の服を人間が着る
せっかくなので恐竜用のアロハを着てみよう。スナップボタンを閉じると、首回りが縮まって人間も着れるようになる。
前から見たらいい感じ。
よりフィットさせるために、前のボタンを閉じてベルトでウエストを絞ってみた。
背中で余っている布のくしゃくしゃ感も、なんだかアートに見えていい。
恐竜と人間では手の位置やサイズが違うけれど、恐竜が規格外に大きすぎるので、動きにくさや着ずらさはなかった。
別の生き物の服を作れば、今まで見たことのない新しい形になって楽しい。
他にもいろんな生き物の服を作ってみたい。
恐竜と写真を撮る人へ
恐竜との写真を見返していた時、引きの写真がなんかよかった。
恐竜と写真を撮る時は、引きの写真がおすすめです。
ぜひやってみてね。