政権崩壊はあるか 露国内の実情 – ABEMA TIMES

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 ニュース番組『ABEMAヒルズ』では、10年間ロシア外交に携わった元外交官で著述家・亀山陽司氏にロシア視点でウクライナ侵攻に関する話を伺った。

【映像】「第2次世界大戦の結果を神聖視」プーチン大統領の歴史観とは

――今回のウクライナ侵攻、ロシア国民はどう考えている?

「今回ロシアがウクライナに侵攻したということで、2014年のクリミアとロシアが併合したときとは異なり、ロシア国内でも批判や疑念がかなり高まっている。ロシアとウクライナは人の行き来も多いので、親戚や友人がウクライナにいるということがある。そのことから、ロシア国民にとっても受け入れがたい面があるというのは否定できない。一方で、プーチン大統領の発言が正しいと思っている人もかなり多いと考えている。というのも、ロシア社会で、プーチン大統領への批判より、アメリカに対する不信感のほうがはるかに高いという事情がある。『ウクライナとは戦争したくない。でも背後にいるアメリカやNATOを許せない』こういった意見も影響していると思う」

――経済制裁などで、世界から孤立に向かっているロシア。ロシア国民は、現実として受け止めている?

「ロシア人というのは、愛国心も強く、社会も非常に保守的。そういう中でロシアがアメリカと対峙していることやNATOの統合拡大によって、ロシアの安全保障が脅かされていることをプーチン大統領は、数度にわたって長い演説でロシア国民に語りかけている。この内容をそのまま受け止めている層が一定数いる。そういう人たちからすると、制裁を受けている現状がプーチン大統領の正当性を図らずしも証明してしまっているという側面もある」

――世界はプーチン大統領への批判が高まり続けているが、プーチン政権の内部崩壊はありえる?

「私は懐疑的だと思っている。ロシアにおけるプーチンの統治システムというのは非常に強固。ソ連が崩壊したときに、ロシアは経済的にも社会的にも不安定だった。そうした中で、プーチン大統領は、ロシアを復活させた功績がある。多くのロシア国民は、そのことをよく理解している。さらにロシアの政治体制を見てみると、日本やアメリカなどと違い、野党が非常に弱く、そもそも政党政治がうまく機能していない。その中で、プーチン大統領を支持している軍や警察、諜報機関などの実力部隊(シロヴィキ)に加えて、新興財閥(オリガルヒ)の元で、巨大な官僚機構が行政を執行しているという構図になっている。この構図から、短い期間で内部崩壊が起きることは考えられない」

――オリガルヒが、プーチン大統領に提言することで踏みとどまることは考えられるか?

「プーチンが大統領になったときに、ロシアの政界に批判的なオリガルヒは追い出された。現在残っているオリガルヒは、プーチン大統領を掲げて生き残っているというところもある。なので、彼らがプーチン政権に批判的な態度を取ったり、プーチン大統領の方向性を変えようとすることは、自らの立場を弱めたり、生き残れなくなる危険性もある。オリガルヒの生存基盤というのは、プーチン政権自体にあるとも言える。プーチン大統領の中では、『ロシアあってこそのオリガルヒ』というわけで、ロシアの安全を守るという大義の前では、オリガルヒの権力は限定的なものになる」

――プーチン大統領の歴史観についてはどう考えている?

「第2次世界大戦の結果を神聖視している。彼の頭の中では『第2次世界大戦は、過ぎ去った過去』ではない。第2次世界大戦でウクライナは、ナチスに占領されている時期がある。また、ウクライナの民族主義者も武装勢力があり、ソ連の赤軍と戦っていた。なので、ソ連の歴史観を引き継いでいるプーチン大統領からすれば、『ウクライナの民族主義者は、ナチの手先である』というふうに見ている節がある」

――何かのきっかけで終戦とするか、ロシア内部では決まっているのか?

「やはりロシア内部の事情となると難しい。一方で、停戦協議がまとまりはしないものの続いている。ロシアは今キエフを包囲しようとしていて、アメリカなどからは、『キエフ陥落は間近』とみられている。そうなった場合、アメリカとイギリスは、ゼレンスキー大統領を亡命させ、亡命政権を樹立させようという計画を模索している。これは難しいところで、ゼレンスキー大統領がキエフ陥落などの状況によって、プーチン大統領の要求に屈服したとなると、ウクライナを支援してきたNATOやアメリカなどは、今までやってきたことを失った上で、介入するきっかけを失ってしまう。そうなるくらいなら亡命政権を樹立して、引き続きロシアとの対立を続かせるという可能性もあるとみている」

――ロシアは、日本を非友好国に認定したことがわかった。岸田総理は北方領土を日本固有の領土と表現を変えたが、この先の日本とロシアとの関係はどうなるか?

「日本は、安全保障上や経済的な問題でロシアを重視してきた。また、歴史上でも無視できない隣国である。一方でこういう自体になった今、日本における選択肢は限られていて、現政権が言っている通り、G7と連携してやっていく選択肢以外ない。その中でロシアとの関係を狭めていかざるを得ないというふうに思う。その中で、北方領土の交渉をする機会も減っていく局面にあるというのも言わざるを得ない」

(『ABEMAヒルズ』より)

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