ブロックチェーン開発インフラInfuraがロシアからのアクセスを遮断、MetaMaskも利用できない状態に【5分でわかるブロックチェーン講座】

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トヨタの投資部門がDeFiプロトコルに出資

 トヨタの投資部門Toyota Venturesが、DeFiレンディングプロトコルTellerに出資したことがわかった。Tellerは、イーサリアム上に有担保レンディングと無担保レンディングのプロトコルを構築するDeFiサービスだ。

 現状のDeFiレンディングでは、従来の金融サービスのように管理者が存在しない代わりに、貸し倒れなどを防ぐために過剰担保を前提にサービスを提供している。通常、借入額に対して150~300%程度の担保資産を預け入れる必要がある。

 そのため、DeFiレンディングの資本効率の悪さが課題視されており、これまでにさまざまなソリューションが提案されてきた。Tellerは担保資産を設けず、代わりに独自のクレジットスコアを設定するという。

 今回のTellerへの出資は、Toyota Venturesにとって初めてのFinTech・DeFi領域への投資になったようだ。Toyota Venturesは、同じタイミングで二酸化炭素除去プラットフォームNoriへの出資も明らかにしている。

 Noriは、イーサリアム上に構築された炭素除去プラットフォームだ。炭素排出量をブロックチェーンで管理することにより、透明性を確立することを目指す。

参照ソース

Off-Chain Credit Data Meets On-Chain Loans: Our Investment in Teller
Teller

Infuraがロシアからのアクセスをブロック

 ブロックチェーン開発インフラサービスInfuraが、ロシアを含む特定の地域からのアクセスを遮断した。これに伴い、暗号資産ウォレットMetaMaskの利用もできない状態となっている。

 MetaMaskは、デフォルトの設定でInfuraを使用しており、InfuraがロシアのIPアドレスを遮断したため、MetaMaskも利用できなくなっている。InfuraとMetaMaskは、いずれもブロックチェーン開発企業ConsenSysが提供するサービスだ。

 なお、Infuraのアクセス遮断では、誤って一時的にベネズエラの人々のアクセスも遮断してしまったという。ConsenSysは、MetaMaskのブログを通して、米国の制裁リストに掲載されている地域ではサービスの提供を停止する場合があると説明した。

 InfuraもMetaMaskも、Web3.0と呼ばれる多くのWebサービス群(DApps)で使用されているサービスだ。ロシアへの制裁は必要である一方で、非中央集権をうたうWeb3.0において、インフラ部分が特定の企業の管理下にあることが今回の件で証明されてしまったことになる。

参照ソース

Ethereum’s Infura Cuts Off Users to Separatist Areas in Ukraine, Accidentally Blocks Venezuela
Decrypt

今週の「なぜ」

Infuraのアクセスブロックはなぜ重要か

 今週はToyota Venturesの出資とInfuraのアクセスブロックに関するトピックを取り上げた。ここからは、なぜ重要なのか、解説と筆者の考察を述べていく。

【まとめ】

分散型のWebサービスを開発しつつ集権的なツールを使用
仕組み上は分散化していてもインターフェースで容易に制御できてしまう
法的な観点からアクセス制御できるサービスが多い

 それでは、さらなる解説と共に筆者の考察を説明していこう。

非中央集権性とInfuramへの依存

 Infuraは、ブロックチェーンを使ったWebサービスを開発する際に、最も多くのシェアを有している。Infuraを使うことで、自身でノードを立てたりイーサリアムとの通信を直接行う必要がなかったりと、Webサービスの開発を容易にしてくれる。

 しかし、以前よりInfuraへの依存性は課題視されてきた。分散型のWebサービスを開発することを目指しつつも、インフラサービスが中央集権化していては元も子もないためだ。完全な分散化を実現するのは現実的ではなく、Infuraのようなサービスに頼る必要がある。

 つまり、ブロックチェーンによって非中央集権性が実現しているというのは、実態とは解離した理想論だということだ。確かにブロックチェーンを使えば非中央集権的なWebサービスを開発することはできるものの、そのWebサービスでInfuraなどが使われている場合、それは完全な非中央集権とは言えないだろう。

IPアドレスだけで容易にコントロールが可能

 InfuraやMetaMaskのように、システムの構造としては分散化されている一方で、今回のようにいざとなるとコントロールできてしまうのが実態だ。MetaMaskはよりわかりやすく、秘密鍵をユーザーが自身で管理しつつもIPアドレスによって簡単に利用を拒否できてしまう。

 ウォレットの場合、IPアドレスの遮断により資産が引き出せなくなるため、これは死活問題だと言えるだろう。仕組み上は、MetaMaskの利用を停止したところで秘密鍵を別途管理していれば、資産を引き出すことは可能だ。

 しかし、一般的にはウォレットのインターフェースを通して資産を引き出すことが多いため、秘密鍵を持っているからといってすぐに資産を引き出すのは難しいと言えるだろう。ある程度の知識が求められる。

OpenSeaもIPアドレスを遮断

 InfuraやMetaMaskに加え、NFTマーケットプレイスOpenSeaもロシアからのアクセスを遮断した。OpenSeaのようなNFTマーケットプレイスの場合は、ブロックチェーンを使っているとはいえ明確に営利的な管理企業が存在する。

 これらのサービスにおけるアクセスの遮断は、今後のWeb3.0サービスをどう捉えるかに大きな影響を与えると考えられる。過去には、USDCやUSDTなどのステーブルコインが、ウォレットアドレスのブラックリスト化を行っていた。

 いずれも法的な観点が影響しているためだが、やはりどこまで分散化を重視するかは悩ましいところであると言えそうだ。

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