プーチン氏の誤算 露はなぜ苦戦 – 木村正人

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深まるロシアの孤立

[ロンドン発]ウラジーミル・プーチン露大統領のウクライナ侵攻を失敗に終わらせるため、ボリス・ジョンソン英首相は5日、6項目の行動計画を打ち出した。国連総会(193カ国)は2日、緊急特別会合を開き、ウクライナから無条件の即時撤退を求める決議案を賛成141カ国で採択。国際刑事裁判所(ICC、オランダ・ハーグ)も戦争犯罪や人道に対する罪、集団殺害(ジェノサイド)の罪で捜査を開始した。プーチン氏の孤立は深まっている。

ジョンソン氏は「軍事力によってルールを書き換えようとするたくらみから、ルールに基づく国際秩序を守らなければならない」と強調する。国際社会に対して打ち出されたジョンソン氏の6項目は次の通りだ。

(1)ウクライナのための国際人道支援連合を組織する。
(2)ウクライナの国防努力を支援する。
(3)プーチン政権への経済的圧力を最大化する。
(4)ロシアがウクライナで行っていることの既成事実化を阻止する。
(5)ロシアの傀儡(かいらい)ではないウクライナ正統政府の全面参加を前提に、危機をデスカレーション(緩和)させる外交努力を追求する。
(6)大西洋ユーラシア地域全体の安全と回復力を強化するため迅速なキャンペーンを開始する。

米シンクタンク、戦争研究所(ISW)の分析では、限定的な攻撃でウクライナ軍と義勇兵の抵抗は短期間で崩壊し、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は屈服するとのプーチン氏の所期の目論見は外れた。このためロシア軍は再度、作戦を休止して、戦闘資源を追加投入し態勢を整えている。しかしウクライナ側の士気と戦闘力は依然として高く、ロシア軍は今後、激しい市街戦を強いられる可能性がある。

ロシア苦戦の理由は?英戦略研究の第一人者が解説

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ロシア軍は現在、以下4つの軸でウクライナに侵攻している。

イギリス国防省発表

(1)ベラルーシからキエフに南進
(2)北東部ハリコフへの正面攻撃
(3)東部ドンバスのルガンスク包囲作戦
(4)クリミア半島から北進

ウクライナ軍より優位に立っていたはずのロシア軍が苦戦しているのはなぜか。イギリスにおける戦略研究の第一人者でイラク戦争の検証メンバーも務めた英キングス・カレッジ・ロンドンのローレンス・フリードマン名誉教授はこう分析する。

無謀な賭け 戦争が計画通りに進むことはほとんどない。特に自身のレトリックを信じた場合は」と題した暫定的な分析(2月25日時点)の中でフリードマン氏は「ロシア軍は優勢だったにもかかわらず、戦術的な奇襲と圧倒的な数という利点があった開戦初日にも戦前の予想ほど進撃できなかった。ウクライナ人は気迫に満ちた抵抗を見せ、侵略者に犠牲を強いた」と指摘する。

「勝ち目のない戦争をプーチン氏が始めたのかと問うのはもっともなことだ。ロシア軍は最終的に勝つかもしれないが、戦争の初日は、どのような軍事的勝利を収めようともプーチン氏にとって政治的な勝利を収めるのは非常に困難な戦争であることを浮き彫りにした。自信満々で始めた戦争が悪い結果になる主な理由は敵の過小評価にある。プーチン氏は一貫してウクライナは国家でもなく、政府は非合法でナチスに支配されていると主張してきた」

「もしプーチン氏が、それが本当だと思い込んでいたとしたら一般のウクライナ人がそのような国のために一生懸命戦うことはないと考えたとしても不思議ではない。プーチン氏の過去の軍事行動は実質的な地上軍を展開するものではなかった。大規模な地上作戦の経験は限られている。このことが潜在的に敵を過小評価する傲慢さと結びつき、作戦のスタートでつまずく一因となった可能性がある」

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