「BLOGOS読んでない」著者の本音 – 中川 淳一郎

BLOGOS

2009年10月5日にサービスを開始した言論サイト『BLOGOS』が3月31日をもって更新を停止。そして5月31日をもってサービスを終了することが発表された。数々の有力ブログを転載し、雑多な意見を紹介するという取り組みを行ったこのサイトは果たしてどのような役割を果たしたのか。BLOGOSに文章が掲載されていた私・中川淳一郎(編集者・ライター)と、自身のブログ「試みの水平線」がBLOGOSに転載されていた28年来の友人である常見陽平(千葉商科大学准教授)が語り合った。

常見:BLOGOS終わっちゃうけど、それを聞いた瞬間、「あぁ……」と思った。なんか胸に期するものがあったのかもしれない。アゴラってあるじゃん。池田信夫さんがスタートした言論プラットフォーム。僕も執筆オファーを受け、その記事がBLOGOSにも転載となった。その後、ブログがBLOGOSに転載されるようになった。10数年前から僕の記事は載っている。今日は、BLOGOSにも記事が掲載されている中川とBLOGOS、そしてブログをベースとしたネット論壇について振り返ってみたい。ところで君はどのようにしてBLOGOSとかかわっていたの?

中川:オレはあまり更新しない自分のライブドアブログに加え、「今月のあっぱれ」と題してその月に見事な活躍をした人をとにかくホメまくるというBLOGOS編集部発の「オリジナル記事」的位置づけの原稿を書いていた。最近書いたのは、『サンデーモーニング』(TBS系)から撤退したハリーこと張本勲さんに激励の「あっぱれ」を入れたよ。

常見:あぁ、確かに君の顔が、オレンジの版画風のアイコンになっているヤツね。

イラスト&題字 まんしゅうきつこ

中川:漫画家のまんきつさんが描いてくれた。

常見陽平の「自撮り」がボコボコに叩かれた時代

常見:僕自身はお陰様で自分のブログが転載され、たまにバズったり、炎上したり、叩かれたりした。2016年、BLOGOS AWARDの銀賞を受賞した。金賞が小林よしのりさん、銅賞が三浦瑠麗さん。いつもブログに自撮り写真を載せつつオピニオンを書き、常見陽平が書いていることを示すとともに、自身を鼓舞した。そういった中、自撮りが読者から非難されたんだよな。君は酔っ払って僕に電話をしてくるクセがあり、「〇〇さんと飲んでいる。リングネームつけろ」とか言うのが定番で、時々「BLOGOS担当者と飲んでるぞ。担当者も常見の自撮りには好意的だ。お前は自撮りをもっとガンガンやれ!」とか言ってたよね。

中川:あの時さ、「茶髪ブタ野郎」とか「パヨク」とか「気持ち悪い」とか「このナルシシストめ」とか酷いコメントだらけ。それを見ていてさ、「お前、論に文句言えボケ」とか「常見の自撮りに文句をつける時間を作る人生虚しくないか?」と思った。常見はそうした声に多少は傷つきながらも、開き直って自撮り載せまくったからオレは「もっとやれ!」と焚きつけた。

常見:自撮り警備隊みたいな奴らが現れてさ、「今日はグロいのあります!」とか報告していたな。BLOGOSのコメントってヤフコメの酷い版みたいなものだよね。FBコメントになってから荒れは減ったが。コメント機能を廃止する際に「もう見ない」「常見の自撮りを叩くのが楽しみだったのに」というコメントがあったな。

中川:ガハハハハ、常見はそいつらにエンタメを提供していたんだな。それはさておき、編集長の田野幸伸さんにコメント欄を廃止した理由を聞いたら「ああいったdisりの場を放置しているのが心苦しかった」と言っていた。確かにとんでもない差別的書き込みを放置していたら裁判を起こされるかもしれない。著者への配慮と自社のリスク管理の両面でコメント欄廃止は仕方なかったと思うし、もはやネットの善意に期待できないことの象徴的な出来事だった。同時期に東洋経済オンラインもコメント欄を廃止したしね。ただ、あれだけ常見の自撮り写真が叩かれたけど、オレが思ったのは、元々は常見のブログの転載だろ? だったらレギュレーションに従った形で何を載せてもいいじゃん。

常見:そうだよね。思ったのは、炎上って、元々クローズド――たとえば、特定の読者がお金を払って買う雑誌とかでは発生しにくかった。まあ、80年代も投書欄が荒れるとか、論争が起こるというのはあったけどね。わざわざカネ払って買ってネットに悪口を書くなんてことはしない。皆、その雑誌のテイストが好きで買っているのだからね。

しかし、雑誌の記事をウェブメディアに転載し、それがさらにYahoo!を含めたポータルに配信され炎上するってのが2010年以降は発生した。僕の自撮りを批判する人は、「論壇サイトになんでこんな写真を載せるんだ!」となった。元々は僕のブログに掲載した記事と写真なんだが、この現象を見て「なるほど、ブログポータルの宿命なのかな」と思った。正直、自撮り写真はハンコみたいなもので、内容とは関係ないんだよ。僕が書いているという証を示しているだけ。「政治家に怒っている文章なのになぜ、お前がパフェ食ってる写真を出すんだ!」なんて怒られたりもしたな。

中川:オレも全然関係のないカレーやらラーメンの写真をブログに載せるぞ。

果たしてBLOGOSはどんな時に読まれていたのか

常見:なんか自由だったはずの「ネット論壇」が不自由になりまくったこの10年ほどだよね。ところで、君はどんな時にBLOGOSを読んでいた?

中川:自分の原稿が載った時に、ランキングやコメントを確認するのが多かったな。そういった時に、自分と論調の合う人の記事が載っていたらそれを見るという感じ。

常見:僕もそう。実は僕、現在ツイッター、フェイスブックはあまり読んでいないんだよね。ウェブメディアについては、RSSリーダーのヘッダーで見出しを見て各サイトが何をテーマにしているかをチェックするけれど、実際の文章はあまり見ていない。新聞は8紙読んでいるよ。ただ、元フジテレビアナウンサーの長谷川豊氏の人工透析患者批判炎上など、大炎上したものはたまにチェックしていたが。今振り返ると、実はBLOGOSというサイトは訪問しているけれど、読んでいなかったんだな。申し訳ないことに。

中川:ここから、BLOGOSの役割について考えていきたいけど、たしか2009年に、田端信太郎さんが始めたのではないかな。大谷広太さんが編集長になり、田野さんがその後を継いだ。

常見:言論を発信するサイトで、著名人中心だが様々なブロガーの原稿を転載し、ブログ論壇を形成することを目指していたのだと思う。

中川:徳力基彦さん、かさこさん、イケダハヤトさんとか、著名なブロガーがたくさんいたね。田端さんの狙いが何なのかなと考えたんだけど、「ブログだからといってバカにするものじゃないぜ」ということを伝えたかったのではないだろうか。

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