ネット詐欺で狙われやすいSNSのプロフィールの特徴、不審なアカウントからの連絡に気を付けて【それってネット詐欺ですよ!】

INTERNET Watch

 筆者が所属するNPO法人デジタルリテラシー向上機構事務局には、「ロマンス詐欺」に関する被害報告や相談が日々寄せられています。

 ロマンス詐欺とは、ネット上で詐欺師がターゲットとした相手に恋愛感情を抱かせ、最終的に金銭を奪い取る手口です。最近はニュースで取り上げられることも増えており、認知度が高くなっているとは思いますが、新しい手口の登場や男性の被害者の増加などもあり、まだまだ注意が必要です。

ロマンス詐欺の被害は増加中、InstagramやFacebookユーザーを狙う手口

 2022年2月9日、セキュリティ製品「ノートン」シリーズを提供している株式会社ノートンライフロックはロマンス詐欺に関する実態調査の結果を発表しました。

 同調査によると、日本人の1%が過去12カ月間にオンラインで出会った人に金銭を求められたり、暗号通貨サービスへの投資を強要されたと回答しています。

過去12カ月間でロマンス詐欺を経験した回答者数です。日本はそれでも少ない方です

 また、米連邦取引委員会(FTC)の報告によると、2020年における米国のロマンス詐欺の被害額は3億400万ドル(374億円)となり、2019年に比べて50%増加しています。70代の被害額は平均9576ドル(104万円)と高額なのが特徴です。

 最近のロマンス詐欺は、出会い系アプリやInstagramやFacebookなどのSNSに偽アカウントを作り、ダイレクトメッセージ(DM)でターゲットに連絡することが多いようです。コロナ禍で、直接人と会う機会が減り、インターネットでのコミュニケーションが増えたことで、詐欺師が会わなくても話を進められる雰囲気が醸成されていることも要因です。

4つのフェーズに分けられるロマンス詐欺の仕組み

 同調査では、このほか、ロマンス詐欺のターゲットになりやすいSNSプロフィールの例といった内容などが公開されているのですが、今回はノートンライフロック マーケティング部の中村紗央里さんに、さらに詳細な情報についてうかがいしました。

 まず、ロマンス詐欺の仕組みは4つのフェーズに分けられます。フェーズ1ではSNSのプロフィールや投稿を見てターゲットを選定し、フェーズ2で実際にメッセージをやりとりします。

 フェーズ3でお金を要求します。その際の手口として、最初に少額を持ちかけて反応を見てから要求する金額を大きくしていくパターンと、最初に大きな金額を提示して、その後から小さい金額を要求するパターンがあります。最近では、このフェーズで性的な映像を撮影するパターンが報告されています。その場合は、その映像を元にさらに脅迫される恐れがあります。

 フェーズ4で被害者の個人情報が詐欺師のカモリストに登録されます。被害者はだまされやすいということが分かっているので、将来、別の手口で詐欺を仕掛けてくるのです。

 例えば、8年間もロマンス詐欺の被害に遭っていた女性が相手との縁を切ってから3年後に弁護士を名乗る人物から連絡が来ました。その弁護士によると、ロマンス詐欺の加害者が亡くなったため、遺族から被害額を弁償してもらえるというのです。そして、その手続きをするために手数料を要求してくるのですが、当然、これも詐欺です。

 詐欺師の居住地は海外が主流です。会いたいと言われても、「コロナ禍なのでもう少し待とう」と言い逃れできるからです。また、身元を特定しづらくするために出身国と現在の居住地、両親の出身国も変えているパターンが多いようです。

 日本人女性を狙う詐欺師は若いアジアの俳優もしくは富裕層風の中年の写真をSNSのプロフィールに設定しています。男性を狙う場合はモデルの写真を使うことが多いようです。当たり前ですが、詐欺師本人の写真ではありません。

 当然、本人ではないのでビデオ通話を嫌がります。ただ、最近は全て拒否するわけではなく、「元気~?」といったワンフレーズだけですが、数秒間の会話に対応することもあります。これは写真の人物のSNSの動画の一部分を切り抜いて悪用しているようです。また、ディープフェイクのように写真の口の部分を動かすアプリを使い、数秒間通話するというケースもあるようです。

架空の人物のアカウントを作って実験、どんな人が狙われやすい?

 詐欺師がターゲットにする人のプロフィールにも共通点があるそうです。例えば、お金を持っていることがうかがえる写真を載せていると、狙われやすくなります。

 今回、ノートンライフロックで「バーチャル被害者」を用意し、実験を行いました。バーチャル被害者とは、実在しない架空の人物の写真を作成し、ロマンス詐欺に遭いやすいInstagramのプロフィールを作成したのです。

 子どものいるシングルの40代会社経営者で、愛犬家としてみました。海外旅行や車の写真、持ち家の写真など、経済的余裕を感じる投稿をしました。

 すると、驚くべきことにアカウントを作成してから4時間で1人目の外国人男性からメッセージが届きました。50代の白髪のアジア人男性で、エンジニアを名乗る人物からでした。写真も見せてもらいましたが、相当にお金を持っていそうに見えます。

 やりとりの1通目から相手はメッセージで「美しい人」と連発してきたそうです。翻訳機能を利用しているようで、「What do you do for living?(仕事は何ですか?)」と聞きたかったのでしょうか。実際は直訳されて「あなたは生きるために何をしますか?」というメッセージが送られてきました。そして、LINEへの移行を強く勧めてきます。

ロマンス詐欺を仕掛けてくる詐欺師にありがちなプロフィールなどの特徴

 InstagramやFacebookで詐欺活動をしていると、さまざまな人から通報されてアカウントが凍結されます。そのため、釣り上げた被害者とやりとりを続けるために、早い段階でLINEでのコミュニケーションに移りたがるのです。

 このままLINEでやりとりすると、数週間後にNFTや仮想通貨の話になります。そして、アプリのインストール方法から何から丁寧に説明され、ウォレットを共有するように言ってきます。ちなみに、ウォレットのURLを検索すると、台湾警察局の詐欺サイトリストに掲載されていることから、相手がロマンス詐欺の詐欺師であることは間違いありません。

 詐欺師がフォローしている相手をチェックしたところ、ものの見事に全員が顔写真付きの女性でした。プロフィールや投稿に家族やパートナーの写真がなく、シングルの可能性が高い人を選んでいます。そして、ペットの写真がある場合もターゲットにされやすいようです。愛犬家を装って近づくケースがあるのです。また、多くのお金を奪うために、経済的余裕を感じる写真を投稿している人が狙われます。

ロマンス詐欺のターゲットになりやすいSNSプロフィールの例

 中村さんはロマンス詐欺かどうかを判断する方法として、どこかで盗んだ写真ではないかどうか、相手の画像をGoogle画像検索で調べることを挙げました。ただ、筆者のところに寄せられた被害相談の中には見つからなかったケースもあるので、検索で出てこないとしても、それだけで安心だとは言えません。

 また、その人のSNSのアカウントが数週間から数カ月間以内に作られたものである場合も怪しんだほうがよいです。詐欺師は複数アカウントを作り、作っては消すことを繰り返すそうです。

 詐欺サイトや詐欺アプリを検知し、被害を防ぐならセキュリティソフトを利用しましょう。例えば、ノートンライフロックでは、PCやスマートフォンにも対応した「ノートン360」などのセキュリティソフトを提供しています。また、個人情報が詐欺師の間で取引されているかどうかを知りたいなら「ノートンIDアドバイザー(ダークウェブモニタリング)」などが提供されています。

 ロマンス詐欺は、最初の段階で怪しむことができれば被害を回避できます。このようなネット詐欺が広まっている、ということを把握しておきましょう。詐欺師からいつ連絡が来るかは分かりません。本連載で個別の事例を学び、未知のネット詐欺に遭遇した場合でも被害に遭わないデジタルリテラシーを身に付けましょう。

あなたの両親も“ネット詐欺”の餌食になっているかもしれません――その最新の手口を広く知ってもらうことで高齢者のデジタルリテラシー向上を図り、ネット詐欺被害の撲滅を目指しましょう。この連載では、「DLIS(デジタルリテラシー向上機構)」に寄せられた情報をもとに、ネット詐欺の被害事例を紹介。対処方法なども解説していきます。

「被害事例に学ぶ、高齢者のためのデジタルリテラシー」の注目記事

高齢者のデジタルリテラシー向上を支援するNPO法人です。媒体への寄稿をはじめ高齢者向けの施設や団体への情報提供、講演などを行っています。もし活動に興味を持っていただけたり、協力していただけそうな方は、「support@dlis.info」までご連絡いただければ、最新情報をお送りするようにします。

※ネット詐欺に関する問い合わせが増えています。万が一ネット詐欺に遭ってしまった場合、まずは以下の記事を参考に対処してください
参考:ネット詐欺の被害に遭ってしまったときにやること、やってはいけないこと

Source

タイトルとURLをコピーしました