「アリが餌を運ぶ仕組み」と「インターネット通信」における共通点を、米国ニューヨーク州のコールド・スプリング・ハーバー研究所(CSHL)が明らかにしています。
*Category:テクノロジー Technology|*Source:CSHL ,Wikipedia
アリが餌を運ぶ優れた仕組みは、インターネット通信の特定のアルゴリズムと似ている
アリが餌を運ぶとき、巣からは最初、1匹のアリが送り出されるとしましょう。そのアリが戻ると「どれくらいの量の餌を手に入れたか」「どれくらいの時間がかかったか」といった情報が他のアリに共有されます。
次に、巣は2匹のアリを送り出します。それらのアリが餌を戻ってくると、次に送り出されるアリの数は3匹、次は4匹、5匹…と増えていきます。しかし、もし10匹送ってほとんどが帰ってこなかった場合、送り出されるアリの数は9匹に減るのではなく、半分の5匹まで大幅に減らされるのです。
この習性を研究したコールド・スプリング・ハーバー研究所(CSHL)は、アリが餌を運ぶ仕組みが、インターネットがデータ通信量を最適化する特定のプロセスと似ていると指摘しています。
前述のアリのアルゴリズムは、正の情報であれば蟻の数は徐々に増えていき、負の情報であれば蟻の数が劇的に減るというものです。CSHLのサケット・ナブラカ准教授とジョナサン・スエン研究員によれば、これはインターネットで使われている「AIMDアルゴリズム」と類似しているとのこと。
インターネット通信は、データを小さな「パケット」と呼ばれる128バイトのブロックに分割して送信されています。AIMDアルゴリズムとは、この送信されるパケットの数が、データの損失が検出されるまで徐々に増加、そして損失が検出されると「パケットの数を半分にする」など一気にデータの送信量を減らす、というものです。
この仕組みのメリットは、パケットに損失が出ない範囲でなるべく高い通信速度が保持できることです。損失が発生した場合には、その直接の原因が不明なため、一度パケットを大幅に減らし、安定性を保ちます。
スエン研究員は、このアリの生態の研究は、サイバー攻撃からコンピューターを守るする新しい方法の発見につながるかもしれないと述べています。
サイバーセキュリティの分野では、私たちのシステムの多くは改ざんされたり、簡単に壊れたりすることがあり、堅牢とは言えません。私たちは、あらゆる自然災害や進化的変化、人間による変化を乗り越えて生き残ってきた自然界に注目し、自然界が生き残るためにシステムを動的に変化させる方法から多くを学びたいと思いました。
一方でナブラカ准教授は、この人間の考えたプログラムとアリの生態との共通点は、遺伝子制御や免疫フィードバック制御を理解するためのアプローチに繋がるかもしれない、と考えているそうです。