サウナで安全に「ととのう」コツ – 赤木智弘

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東京都昭島市の温浴施設で倒れた男性に対し、心臓マッサージなどの救命措置などを行ったとして、東京オリンピック空手67キロ級男子組手代表として出場した佐合尚人氏に、昭島消防署から感謝状が贈られた。(*1) 佐合氏は警備会社に所属しており、救急救命の講習を定期的に受けていたそうだ。

このニュースを聞いて、自分にとっても決して関係のないニュースではないと感じられた。

ただ、残念ながら、いつ目の前でこうした事態が発生しても、助けるために動けるようにしようという意識よりは、自分自身もこうして誰かに迷惑をかける側になるかもしれないなという危機意識である。

立ちくらみや失神も・・・サウナや銭湯に潜む危険

昨今のサウナブームが始まる少し前から、僕はサウナによく行くようになった。

身体を綺麗に洗って大きな湯船に浸かり、サウナで十分に蒸されたあとに冷たい水風呂に入って、あとはのんびりと外気浴。そんな贅沢な時間を比較的安価に手に入れられることから、多いときでは週2ペースくらいでサウナや銭湯を楽しんでいる。

サウナや銭湯には健康的なイメージがあるし、実際気持ちもいいのだが、一方で様々な危険が潜んでいる。

水で床が滑る可能性があるなどもそうなのだが、一番の危険性はやはりサウナやお風呂が身体に与える影響そのものである。サウナやお風呂に入ると、身体が温められて血管が拡張する。逆にお湯から出ると、身体が冷えて血管が収縮する。こうした血管の拡張と収縮によって血圧が大きく変化することで身体に様々な影響が現れるのだ。

こうした身体の変化をうまく利用すれば、最近のサウナブームでよく使われるようになった「ととのう」という状態にもなるわけだが、一方でこうした変化は「立ちくらみ」や「失神」などの症状に繋がることもある。

湯船に浸かりながら失神すれば、そのまま溺れる可能性もあるし、お湯から出ようと立ち上がったときに立ちくらみを起こせば、倒れて頭を打つことにもなりかねない。毎日のように行う入浴も、実は危険と隣り合わせだったというわけだ。

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「お酒を飲んでのサウナ」は絶対にダメ

たまに「サウナでアルコールが抜ける」と思い込んで、酒を飲んだあとにサウナに入る人がいるが、これは絶対にやってはダメである。

人間が飲んだアルコールの大半は肝臓で分解される。呼気や汗から抜けるアルコールは誤差レベルの微々たる量であり、サウナに入ったからといっても抜ける量が増えるわけではない。アルコールが抜けない一方で、汗をかくことにより身体から水分はどんどん抜けていく。

お酒を飲むときには十分な水分をとることが推奨されているが、お酒を飲んでサウナに入ると、その真逆の行為となり、非常に危険である。

お酒による酩酊状態も危険であることはいうまでもない。千鳥足になっていれば浴室という滑りやすい場所で転びやすくなるし、サウナの中で酔ったまま眠ってしまえば、強い脱水状態に陥る可能性もある。

先にも書いたように、浴室やサウナというのは普通の状態でも危険と隣り合わせなのだから、酔った状態ではさらに危険なのだ。やはり、お酒はお風呂やサウナに入ったあとの楽しみにとっておくべきである。

「自分だけは大丈夫」と考えず、ゆっくり動こう

「サウナ・スパ健康アドバイザー」という資格を持っている僕がおすすめするのは、浴室やサウナでは常に「動物のナマケモノのようにゆっくりと動く」ことである。足下をしっかりと確認しながらゆっくり動けば、不意の転倒などを防げる。

また、サウナに入って出るときや、お風呂から上がる際には、さっと立ち上がらずに、ゆっくり時間をかけて徐々に身体を起こすことで、立ちくらみなどが起こりにくくなる。

サウナなどの温浴施設では、決して「自分だけは大丈夫」と考えるのではなく、常に「自分が倒れる可能性」があることを自覚して欲しい。倒れても佐合氏のような親切な人に助けてもらえるかもしれないが、助けに期待するよりも最初から倒れないように心がけるべきである。

当たり前かもしれないが、特にいまのような寒い時期には気を付けてもらいたい。

*1:「助かってほしい一心で体が勝手に…」東京五輪代表、浴場で倒れた男性救助(読売新聞オンライン)https://www.yomiuri.co.jp/national/20220222-OYT1T50221/

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