ロシアが仮想通貨を使って経済制裁を回避するのではという声、専門家は「仮想通貨を使ったマネーロンダリングは不可能」と指摘

GIGAZINE
2022年02月28日 13時00分
メモ



ロシアによるウクライナ侵攻に対して、アメリカおよびヨーロッパ各国は経済制裁により圧力を強めています。しかし、この経済制裁を回避するために、ロシアはビットコインなどの仮想通貨を使用するのではないかという声が上がっています。しかし、一部の専門家は「仮想通貨を使ったマネーロンダリングは不可能だ」とその可能性を否定しています。

Here’s How Putin, Russia Could Use Bitcoin, Crypto to Bypass Sanctions – TheStreet
https://www.thestreet.com/investing/cryptocurrency/heres-how-putin-russia-could-use-bitcoin-crypto-to-bypass-sanctions

Ukraine Conflict: Government Seeks Russian Politicians’ Crypto Info – Bloomberg
https://www.bloomberg.com/news/articles/2022-02-27/ukrainian-government-seeks-russian-politicians-crypto-info

Could bitcoin be Putin’s economic savior? That’s unlikely, experts say
https://www.nbcnews.com/tech/crypto/bitcoin-putins-economic-savior-s-unlikely-experts-say-rcna17724

アメリカおよび欧州連合はロシアのウクライナ侵攻に対応する形で、これまでに類を見ないレベルの厳しい経済制裁を発動しています。これにより、ロシアのウラジミール・プーチン大統領や外務大臣のセルゲイ・ラブロフ氏だけでなく、20人以上の著名な実業家がロシア国外に保有する銀行口座を凍結される可能性があります。

さらに、世界中の金融機関がグローバルコマース用の重要な通信回線として使用している「SWIFT」も、ロシアの一部銀行を排除する方針であると発表済み。これにより、ロシアの国際経済からの孤立が加速しています。

このような状況を回避するため、ロシア政府は仮想通貨を使うのではないかという声が上がっています。


こういった声に対して暗号投資会社・BitcoinIraの共同創設者兼最高執行責任者であるクリス・クライン氏は、「これは未知の領域です。ほんの数週間前、ロシアから2つの異なるメッセージが届きました。ひとつはアンチ仮想通貨派の中央銀行からのメッセージで、もうひとつは『仮想通貨が目的を果たす(経済制裁回避に役立つ)可能性がある』という議会からのメッセージでした」と語っており、ロシア国内でも経済制裁への対応策として仮想通貨の利用が目論まれていることがはっきりとわかります。

仮想通貨関連の分析企業であるBlockchain Intelligence Groupで規制関連ディレクターを務めるミカエル・ファサネーロ氏は、「政治的には、プーチン大統領が仮想通貨を禁止する動きを取ることはありませんでした。実際、プーチン大統領は仮想通貨をロシアの主流の金融の一部、あるいはその代替物にしたいと考えていました」とコメント。さらに、「分散型の金融環境では、ロシアがアメリカや同盟国により課された経済政策を回避することが可能になるでしょう」と述べ、仮想通貨がロシアの経済制裁回避に役立つだろうと明言しました。

一方、ウクライナ政府は主要な仮想通貨取引所に対してロシア人ユーザーをブロックするよう求めています。ウクライナのMykhailo Fedorov副首相は、自身のTwitterアカウントで「私はすべての主要な仮想通貨取引所に対し、ロシア人ユーザーのアドレスをブロックするよう要請しています。ロシアやベラルーシの政治家に関連するアドレスを凍結するだけでなく、一般ユーザーも妨害することが重要です」とツイートしています。

I’m asking all major crypto exchanges to block addresses of Russian users.

It’s crucial to freeze not only the addresses linked to Russian and Belarusian politicians, but also to sabotage ordinary users.

— Mykhailo Fedorov (@FedorovMykhailo)


一部の仮想通貨取引所はロシアによるウクライナ侵攻が始まってから、ウクライナ政府を全面的に指示すると公表してきました。仮想通貨取引所・Binanceは「ウクライナの人道的危機を助けるため」として1000万ドル(約11億6000万円)の寄付および、関連チャリティー団体と共同でウクライナへの支援を募ると発表しています。

#Binance is donating $10 million to help the humanitarian crisis in Ukraine????????

Our focus is providing on-the-ground support through charity & collaboration.@BinanceBCF also launched the Ukraine Emergency Relief Fund to provide emergency relief through crypto crowdfunding.

— Binance (@binance)


しかし、BloombergがBinanceに問い合わせたところ、「仮想通貨の存在意義に反するため、何百万人もの無実のユーザーのアカウントを一方的に凍結することはできません。しかし、我々は無実のユーザーへの影響を最小限に抑えながら、ロシアに制裁を課すために必要な措置を取っています。また、国際社会が制裁をさらに拡大する場合には、それを積極的に採用していく予定です」という返答が得られたそうです。

一方、ゲームやメタバース関連のNFTなどを取り扱うDMarketは、ロシアおよびベラルーシとの関係をすべて断ち切り、これらの国のユーザーアカウントをすべて凍結したと発表しています。

政治家の口座に関する情報を得るための取り組みを管理するウクライナのArtem Afian弁護士は、政治家が所有する仮想通貨のアドレスリストを公開し、人気の高い仮想通貨取引所と共有することを計画しています。その目的は該当アドレスを「有害なもの」と認知し、一般ユーザーや企業がこれらのアドレスと取引することを阻止するためです。Afian弁護士は「ロシアにはウクライナでも仮想通貨の世界でも歓迎されない存在であることを理解してもらいたいのです」と語っています。

また、Afian弁護士が作成したアドレスリストはブロックチェーン分析会社のChainalysisと共有される予定です。Chainalysisの国際政策責任者であるCaroline Malcolm氏は、「この危機に関連する制裁を逃れるために仮想通貨が使われる可能性があり、それはおそらく過去数か月のうちにゆっくりと起こっているでしょう」「関連ウォレットアドレスに関するあらゆる情報は、当社の製品に追加され、当社のパートナーが直ちに利用可能となります」とBloombergに語っています。

なお、Chainalysisはロシアの行為者が経済制裁を逃れるために仮想通貨取引を利用しているかどうかを監視しているとツイートしており、ウクライナ政府寄りの対応をすでに取っています。

Chainalysis is monitoring for on-chain indicators of crypto-based sanctions evasion by Russian actors. We will alert our partners in government of any relevant activity and provide public updates where possible. So far, on-chain tx vols across the region are stable.

— Chainalysis (@chainalysis)


加えて、仮想通貨コンプライアンス企業・TRM Labsの法務責任者であるAri Redbord氏は、「仮想通貨業界は『規制のない西部開拓時代のよう』と表現されることがありますが、少なくともアメリカではそのようなことはまったくありません」とコメント。実際、仮想通貨の取引は非常に迅速なものですが、ブロックチェーン上に各取引の記録が保存されており、これはユーザーの誰もが閲覧可能であり偽造したり削除したりすることが難しくなっています。

アメリカでは仮想通貨のマネーロンダリングに関する規制が強化されており、仮想通貨取引所は経済制裁を回避するために仮想通貨が利用されることを防ぐ義務があります。実際、2022年にはアメリカ司法省がマネーロンダリングの容疑で36億ドル(約4150億円)相当のビットコインを押収しています。

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これに対して法律事務所・Crowell&MoringのシニアカウンセラーであるRobert Clifton Burns氏は、「仮想通貨は完全に匿名というわけではありません。関連取引を調べることで、取引を行ったのが誰かを特定する方法があります」と語りました。

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