孤独を楽しめる人の共通点3つ – PRESIDENT Online

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孤独が社会問題として注目されている。慶應義塾大学の前野隆司教授は「多くの人は孤独=不幸というイメージを抱く。しかし、自ら孤独を選び、生活を充実させている人もいる。不幸な孤独に陥らないためには3つのポイントが重要だ」という――。

※本稿は、前野隆司『幸せな孤独 「幸福学博士」が教える「孤独」を幸せに変える方法』(アスコム)の一部を再編集したものです。

夕暮れの湖のほとりで温かい飲み物を楽しむ女性※写真はイメージです – 写真=iStock.com/recep-bg

なぜ孤独でも幸せな人が増えているのか

みなさんは、「孤独」という言葉を聞いてどんなイメージを持ちますか?

おそらく、多くの人たちは、孤独であることに「寂しい」「つらい」「苦しい」「悲しい」など、ネガティブなイメージを持たれている方が多いのではないでしょうか。

私の研究室で実施した調査では、こんな結果もあります。

単身世帯、夫婦のみ世帯、二世代世帯、三世代世帯を対象に幸福度を比較したところ、単身世帯の幸福度がいちばん低いという結果になりました。独り身でいると、幸せになれる確率は低くなるとはいえそうです。

ただし、この結果はあくまで相対的評価であって、「独りでいると幸せになれない」と結論づけするものでもありません。

実際、「お独りさま」という言葉が広く定着してきたように、独りでレストランに入る、独りで旅に出かける、独りでゴルフをラウンドするなど、独りを楽しむための商品やサービスは多様化してきています。

2019年ごろからメディアで注目されるようになった「ソロキャンプ」の愛好者は年々増え続けているといいます。

幸福学の最新の研究でも、孤独=不幸と、単純に決められないことがわかってきました。パートナーがいなくても、付き合いが苦手でも、友人に恵まれていなくても、幸せな人は確かにいるからです。

逆に、世の中には、友人が多くても孤独による寂しさに悩む人がいることも分かっています。多くの人に囲まれて、一見すると孤独とは無縁なようでも「心から信頼できる相手がいない、心が通じ合う人がいない」という苦悩を抱えているのです。

友人が多いのに幸せになれない人と、独りでも幸せになれる人。この違いはどこにあるのでしょうか?

意外と知られていない「2種類の孤独」

違いを解き明かすカギは「2つの孤独」です。孤独を表現する英語には、「ロンリネス」と、「ソリチュード」という言葉があります。孤独が2種類あるのです。

ロンリネスとは、孤独によって生じるネガティブな感情のこと。

「私は独りぼっちである」「私には心が通じ合う人が誰もいない」「私には精神的によりどころになる人がいない」「誰からも必要とされていない」など、孤独によって生まれる不快で苦痛となる感情です。日本語では「孤独感」と呼ばれます。

孤独ではなく「孤独感」です。この2つは学術的には同一視されることもありますが、本稿では区別しようと思います。

孤独とは、自身の周囲に人が少ない状態を指します。たとえば、パートナーがいない、友人や知人が少ない、仕事関係やご近所での付き合いも少ないといった状態が当てはまるでしょう。

それに対し「孤独感」とは、あくまで本人の感じ方です。

まわりに人が多い、少ないにかかわらず、前述したような「頼りになる人がいない、心の通じ合う人がいない、疎外感を感じている、誰からも必要とされていない」という主観的な感覚のことです。そのため、一見すると多くの人に囲まれて暮らしているように見える人でも、「孤独感」を抱えて、苦しみながら生きている人がいるわけです。

街角にたたずむ若い男性※写真はイメージです – 写真=iStock.com/JohnnyGreig

もう一つの孤独「ソリチュード」とは

どんな人でも、人とのかかわりの中で生きていると、「反対された」「意見された」「無視された」「批判された」「理解してもらえなかった」「仲良くしてもらえなかった」などの場面に遭遇すると、孤独感を覚えることはあります。

実のところ、物理的な孤独(独り身)から生まれる孤独感より、こうした他者との関係性から生まれる孤独感のほうが多いといいます。

では、ソリチュードとは何か?

独りの状態である、という点ではロンリネスと同様です。しかし、ロンリネスが苦痛や不安、寂しさを招くのに対し、ソリチュードは独りの状態をむしろ前向きにとらえ、精神的に自立し、自分だけの時間を過ごすことに喜びと楽しみを感じている状態を指します。

「ソリチュード」はこれまで「孤高」または「孤立」と訳されることが多かったようです。ただし、孤高というと、日本語では、何かを極めようとする求道者のようなイメージを持つ方もいるかもしれません。

孤立も、別のニュアンスを感じます。私は、ソリチュードになるのに、何か人よりも特別な努力が必要だとは考えていません。なぜなら、ロンリネスもソリチュードも感じ方の問題だからです。

自ら孤独であることを選んで自由に生きる人たち

私は、ソリチュードを「幸せな孤独」と表現するとわかりやすいのではないかと思います。

幸せな孤独の究極のかたちが「孤高」「孤立」かもしれませんが、そこまでハードルを上げなくても「幸せな孤独」は実現できます。人によりかからず、個性的で、自由に生きる。素敵な人生こそが「幸せな孤独」です。

「幸せな孤独」は、自ら孤独であることを選んでいます。独りでいることに不安を感じることはなく、独りでいることが好きなのです。

人気テレビ番組の『孤独のグルメ』の主人公もそうでしょう。貿易商の彼は、いつも独りでご飯を食べています。しかも、自分のおなかの意思に素直に従い、お店を選び、メニューを選ぶ。自由に食を楽しむ姿に、ついひきつけられてしまいます。

あなたの周りに、いつも孤独なのに幸せそうな人がいるとしたら、きっとソリチュード(幸せな孤独)を実現しているのでしょう。

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