ウクライナめぐり自民で場外乱闘 – NEXT MEDIA “Japan In-depth”

BLOGOS

樫山幸夫(ジャーナリスト、元産経新聞論説委員長)

【まとめ】

・ウクライナ危機のさ中、林外相が露側と経済協力協議。自民・高市政調会長が外相を批判、福田総務会長は擁護。

・両氏の発言が政治的思惑、政局がらみとすれば、国際的危機への日本の真剣さが疑われる。

・安倍内閣の親露、親プーチン政策が遠因。北方領土交渉”暗礁乗り上げ”の今、ウクライナ問題で日本も露に強い姿勢を。

  ウクライナ情勢をめぐって政府・与党内で見苦しい〝場外乱闘〟が展開された。

 林芳正外相がロシア側と経済協力について協議したことを、自民党の高市早苗政調会長が批判、福田達夫総務会長は逆に外相を擁護した。

 政府・与党の足並みが乱れていては、ロシアの侵攻が現実になった場合、有効な対抗策をとることはできまい。

 こうした争いが生じた背景には、そもそも、安倍内閣以来の度を越した〝親露〟〝親プーチン〟の姿勢から、岸田内閣も脱却できずにいるという深刻な状況があるようだ。

■ ウクライナ危機に関わらず、日露関係進展を期待

 ことの発端は2月15日、林外相が、日露貿易経済政府間委員会のロシア側議長、レシェトニコフ経済発展相と行ったテレビ会談。

 外務省の説明によると、林外相はウクライナ危機の中にあっても、経済分野での日露協力が幅広い関係発展に資するよう対話を続けたいと述べ、協力の現状などについて議論した。

 ウクライナ情勢について、「主権・領土一体性の原則の下、緊張を緩和し、外交的解決を追求するよう求める」との日本政府の立場を伝えたという。

写真)ロシアのレシェトニコフ経済発展相とテレビ会議方式での協議に臨む林芳正外相(2022年2月15日 外務省)
出典)外務省ホームページ

■ 高市氏「ロシアを利する」、福田氏「あらゆるチャンネル重要」

 これに異論を唱えたのが高市政調会長だ。翌々日の党の会合で、政府が先進7カ国(G7)と連携し、侵攻した場合の制裁発動を検討中であることに言及。「G7の結束を乱そうとするロシアを利する。大変強い懸念を覚えた」と外相を強く批判した。

 反論した福田総務会長は、「あらゆるチャンネルをキープすることは大事」(2月18日の記者会見)と指摘。「会談したという一事をもってどうこういう考えはない」と述べた。

 それにしても、与党の政調会長が公開の席で、閣僚を名指しして批判、いや非難するというのだから驚く。

■ 政局がらみの岸田批判と擁護か

 高市氏は昨年秋の臨時国会でも、中国念頭の人権侵害非難決議を採択するよう自民党の茂木敏充幹事長に要請、拒否されると「悔しい」と憤慨して見せた。

 〝政敵〟に対するような発言で政府・党の方針を批判するあたり、次の総理の座に並々ならぬ意欲を示す高市氏が、間接的に岸田首相を批判したと勘繰られてもやむをえまい。

 一方の福田氏も、昨年の岸田新体制発足にあたって、当選3回、閣僚経験がないまま党3役の一角を射止めた。大先輩の高市氏に平然とかみつくあたり、祖父、父が総理という血筋を差し引いても、その度胸はなかなかというべきだろう。

 みずからを抜擢してくれた岸田首相への〝忠誠心〟から内閣を擁護したのかもしれないが、それだけに、これまた政治的、政局がらみの発言と受け止められかねない。

 ウクライナをめぐる与党幹部の発言が、そういう印象を与えるとすれば、国際的な危機に対する日本の真剣さを疑われることにもなろう。

Source

タイトルとURLをコピーしました