ウクライナを支配しないロシアは帝国にはなれない:プーチンは必ず侵攻する

アゴラ 言論プラットフォーム

プーチンは必ずウクライナに侵攻する

8年間続いているウクライナ紛争。明白なことがひとつある。プーチン大統領のロシアはウクライナを必ずロシアに取り戻すまで闘争を続けるということだ。

そして今、欧州安全保障協力機構(OSCE)の米国大使マイケル・カーペンターによると、プーチン大統領はこの紛争に一つの区切りを打つべくウクライナとの国境沿いに16万9000から19万人まで増員していると指摘している。1月30日までは10万人の兵士であった。(2月18日付「ディアリオ・アレルタ」から引用)。

この増員はウクライナに侵攻するためである。

米国は軍事的にウクライナを守る意向はない

米国は制裁による経済上の対抗措置を取る意向は示しているが、軍事上の対抗措置をとることはこれまで表明していない。

同様に、EUについても主要国の大統領と首相が交互にロシアを訪問してプーチン氏と会談しているが、米国と同様にロシアからの侵攻を阻止するための軍隊を派遣する姿勢は示していない。唯一、ウクライナへの兵器の供給だけに留まり、ロシアに対しては厳しい経済的制裁を課すというだけとしている。プーチン氏がウクライナに侵攻する意志を固めているのに、欧米は出来れば侵攻してほしくないと望んでの交渉だ。これではロシア軍の侵攻を阻止することにはならない。

ロシアは8方面からウクライナに侵攻を計画している。ロシアに協力しているベラルーシの国境からだとウクライナの首都キエフまでおよそ150キロしかない。

プーチン大統領が自らの面子に懸けてウクライナを奪回する硬い意志をもっているのは、かつて米国カーター大統領の政権時に大統領補佐官を務めたブレジンスキー氏が「ウクライナを支配しないロシアは帝国にはなれない」と述べたように、プーチン氏にとってウクライナイはソビエトの時代がそうであったように自国の領土だという強い認識をもっているからだ。

ソビエトの時代にウクライナはソビエトの軍需産業のメッカであった。そこには3500社余りが存在し、300万人が雇用されていた。ミサイルもウクライナで生産されていた。

ところが、ウクライナが1991年に独立すると、米国の当時の大統領だったジョージ・ブッシュ(父)氏はウクライナを西ヨーロッパの経済圏に加えることを望んで多額の資金を同国に投入した。当時のロシアはソビエト崩壊のあとで失った領土を回復するための動きなどできない状況にあった。米国はその隙間を利用したのである。

しかし、ウクライナの内部事情は複雑で、しかもルガンスク州とドネツク州はロシアびいきの地方でキエフの西ヨーロッパへの動きに反対した。また、同様にクリミアは自治体制を進めていた。

ウクライナからこれまで600万人が国を離れた

また産業面についても西ヨーロッパに加わることによって自国の産業発展を図ろうとした。特にソビエト時代に軍需産業の中枢部を支配していたウクライナはその技術が西ヨーロッパで受け入れられると期待した。

しかし、国家の統一は容易ではなく、事態は複雑な展開を見せ逆に経済的に後退を余儀なくさせられるようになっていた。それを如実に示すかのように、現在までウクライナから職を求めてポーランドやロシアに移民する人が後を絶たなくなって行った。人口4400万人のウクライナからこれまで600万人以上が職場を求めて国を離れて行った。

プーチンのソビエト復活への野望

また、2000年に政権に就いたプーチン大統領が嘗てのソビエトの復活を目論んで領土の拡張に向かって進んで行った。その中でも最も重要なのがウクライナのロシアへの領土復帰である。仮に、今回ウクライナ全域をロシアに復帰できないと判断した場合でも、親ロシア派のルガンスク州とドネツク州はロシア領土にするであろう。それがまたプーチン氏が国内で面子を失わず大統領として君臨を継続するための条件である。

中国が台湾を奪還すべく静観

この動きを注意深く観察しているのが中国である。台湾を奪回するためである。プーチン氏は習主席に逐一ウクライナとの展開状況を伝えているという。中国が気になるのは米国の動きである。果たして米国がこの先6年間に台湾を防衛するのに強固な意志をもっているかということである。

ウクライナの場合と異なり、台湾の防衛については米国とは台湾関係法を基に台湾を防衛するための軍事行動の選択肢を米国は保有している。しかし、気になるのは台湾の防衛を保障するものではないとなっていることである。

また米国、日本、オーストラリア、インドの4ヶ国が中国を牽制してクアッドを創設したが、果たしてこの同盟関係が実際に中国が台湾への侵攻を開始するような事態になった時に台湾を守り切れるのかという疑問もある。また、EUの主要国が台湾の中国からの侵攻を前にどこまで強気で協力するのか疑問である。

何しろ、今回のウクライナ紛争においてEUは統一した外交姿勢を取れないでいるからだ。EUの外相であるスペイン人ボレイル外務・安全保障政策上級代表の存在は全く薄いものになっていることでそれが窺われる。

中国の台湾への侵攻には勿論背後からロシアが中国を支援するのは明白である。

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