物価懸念 日本の赤字食い止めよ – ヒロ

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岸田首相が記者会見で「物価上昇に関しては『わが国の経済、国民生活に大きな影響が出る大変重大な課題』」と指摘し、「今後これに何を加えるべきか、何を改良すべきなのかしっかり議論を続けたい」と述べた(ブルームバーグ)とあります。

同じ日、日銀は円の実効レートを発表し、円の実力が50年ぶりの低さであることが判明しました。判明というより1995年につけたピークの指数150から下落基調がずっと続き、「〇年ぶりの低さ」はこの25年間言い続けてきた中でたまたま今回50年という節目だったというだけです。

もう一つ、嫌なニュースは22年1月の貿易収支で6か月連続の赤字で赤字額は2.1兆円と過去2番目の大きさとなりました。原油をはじめとする資源価格の高騰がもろに影響したためで専門家の見方はこの赤字傾向はしばらく続くとされます。

私自身が北米で原油関連の投資をしているため、原油価格動向のニュースは丁寧に読んでいますが、目先の上下というより中期的に見た場合、ウクライナで戦争があろうがなかろうが、100㌦越えどころか120㌦があってもおかしくない状況になっています。北米で強気の予想は150㌦というものまで出てきているのですが、これらは全て需要増に対応できないことが背景です。同時に資源、鉄鉱石や銅などベースメタルの一段高が見込まれ、それらを輸入に頼る日本としては物価については相当の上昇を覚悟しなくてはいけません。

もう一つの重要な視点は日本の輸出額が20年近くほとんど伸びていない点です。貿易統計をみると2004年に輸出が61兆円台をつけてから2020年までの間、最高が83兆円(2007年)とリーマンショックのあった09年の最低54兆円の間で停滞、20年も68兆円にとどまっています。日本は輸出大国というのは数字が伸びている時ならそういえますが、04年からフラットになっている事実は見ないふりになっています。

そもそも日本の貿易額の停滞は中国、韓国の躍進、および企業が現地化を進めたことで輸出が頭打ちになっていることが主因です。となれば、円安より円高の方が日本にはメリットがあるのですが、日本人のメンタリティが現実にそぐわない円安万歳なのです。これが変えられないことが最大の要因だとみています。

岸田首相が「何を改良すべきかしっかり議論」とおっしゃっていますが、何をいまさら、なのであります。このトレンドは昨日、今日に始まった話ではないということです。

私が懸念するのは財政赤字への懸念です。アメリカは巨大な貿易赤字もあり、財政悪化をひきおこしました。この数年、日本の歳出はコロナ対策もあり、膨大なものになっており、財政の悪化はこれから雪だるま式に増えていくことになります。そうなればアメリカのように厳しい財政ルールを科すようにならないとは言えないのです。

これは日本が財政破綻するかどうかの議論ではなく、健全な体質に戻さねばならない、これに尽きるのです。(政治家は「こんな時だからこそ財政出動を」と言いますが、その「ちょい借り」が延々と続いていることには留意しなくてはいけません。)

ではどうするか、です。私は50年ぶりの円の実効レートの低さも貿易収支の問題も経済のファンダメンタルズの強化を図ってこなかったことが主因とみています。その主犯は日銀の低金利政策にあるとみています。これは今日に始まったわけではなく、90年代から続いているもので「金利上昇恐怖症」そのものなのです。

私は日銀がつまらない金利操作を止めて金利を市場の動きに任せる放置プレーをすべきだと思います。日本の消費者物価指数は携帯価格引き下げが効いていて低廉な比率で収まっていますが、年後半から2%を伺う展開になるでしょう。ではその時、黒田総裁はどうするのでしょうか?突然の激変策をとれないはずです。しかし、私は日本の物価があるとき、タガが外れたのように急騰するリスクは抱えているとみています。

日銀政策は、いわゆる政策金利に手を付ける前の量的緩和政策がまだ相当枠残っており、これをいったんきれいにしないと政策金利上昇にはつながりません。プロセス的には今すぐ準備着手しても半年ぐらいかかると思います。その頃、日本の物価が狂乱になっていなければよいと思っています。

なぜ、狂乱があり得るのか、といえば輸入に関して「買い負け」がより現実的なものになるからです。昔は日本の貿易量は大きかったため、売り手も上客として扱ってくれましたが、今はそうではありません。世界の中の日本はとてもちっちゃな一国に過ぎないことを認識すべきでしょう。

その為にも金利政策を変更し、円高トレンドに戻し、企業の優勝劣敗を進め、不必要な価格競争もやめるべきでしょう。ちなみに携帯三社は「もう価格競争はしない」と決めています。正直、菅元首相への怨嗟は相当あるのです。今後、国内で価格が安くなるものはない、と言い切ってよいでしょう。

その為に国民の意識改革を行い、失われた過去からの脱却をすることが最大の課題になるはずです。

では今日はこのぐらいで。

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