ウクライナ退避 十数カ国が勧告 – BBCニュース

BLOGOS

Reuters
国家親衛隊と警察が合同演習を実施した(12日、ウクライナ南部ヘルソン州)

ロシアがウクライナ国境沿いに部隊を集結させる中、12日までに十数カ国の政府が、ウクライナから直ちに退避するよう自国民に勧告した。ロシアも同日、駐ウクライナに駐在する大使館員の数を縮小すると発表した。ジョー・バイデン米大統領は同日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と電話で会談し、ロシアがウクライナに侵攻すれば、ロシアは「素早く厳しい代償」を払うことになると警告した。

兵10万人以上の部隊をウクライナ国境沿いに配備したロシアが侵攻の意図はないと主張し続けているのに対し、米政府は侵攻がいつ始まってもおかしくない状態にあると警告している。ホワイトハウスが、ロシアの侵攻は空爆から始まるかもしれないと述べているのに対し、ロシアは「挑発的な憶測」だと反発している。

一方、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は12日、侵攻があると警告すればパニックを引き起こしかねないと、慎重な対応を求めた。ゼレンスキー氏は記者団を前に、パニックこそ「私たちの敵にとって、何よりの親友だ」と述べた。

大使館を縮小・移動

こうした中、アメリカのほかにこれまで、イギリス、日本、カナダ、オランダ、ラトヴィア、韓国、ドイツ、オーストラリア、イタリア、イスラエル、オランダなど複数の政府が、自国民に対し、直ちにウクライナを離れるよう勧告している。大使館員や家族をすでに出国させた国もある。

ウクライナの首都キーウ(キエフ)では、アメリカ大使館の業務に不可欠ではないスタッフは退避を命じられた。領事業務も13日から停止されるが、ポーランド国境に近い西部の都市リヴィウへ「少人数の領事担当」を移動させ、「緊急事態に対応」するという。米政府はさらに、ウクライナ兵を訓練していた米兵150人も「念のため」に退避させた。

<関連記事>

カナダのメディアによると、カナダ政府も大使館職員をリヴィウへ移動させる。一方で、駐ウクライナのメリンダ・シモンズ・イギリス大使は、自分と「中枢チーム」はキーウに残る方針だとツイートした。

オランダのメディアによると、KLMオランダ航空はウクライナへの航行を直ちに中止したと発表した。

ロシア政府も、ウクライナ駐在の外交官の数を「最適化」すると表明。ウクライナ政府や第三国による「挑発行為があり得る」ためとしている。

バイデン氏は再びプーチン氏に警告

米ホワイトハウスによると、12日の電話会談でバイデン氏はプーチン氏にあらためて、もしロシアがウクライナに侵攻すれば、アメリカと同盟・提携諸国は「素早く厳しい代償」をロシアに払わせることになると伝えた。

バイデン氏はさらに、アメリカは同盟・提携諸国と連携しながら外交努力を続ける用意があるものの、「他のシナリオへの備えも同様に整っている」とプーチン氏に伝えたという。

対するロシア政府は、両大統領の電話会談について、アメリカと同盟諸国の「ヒステリーがピークに達している」状態で行われたと説明。プーチン氏はあらためてバイデン氏に、欧米はロシアの安全保障上の懸念に応えていないと繰り返し指摘したという。

ロシアは、両大統領が対話を続ける方針だとも述べた。

<関連記事>

12日にはフランスのエマニュエル・マクロン大統領も、プーチン氏と電話で会談した。フランス大使館によるとマクロン氏は、「誠実な対話は、事態のエスカレーションと相いれない」と告げたという。

当のウクライナでは

ウクライナのゼレンスキー大統領は12日、ロシアが侵攻するという確固たる証拠を西側が持っているなら、自分はまだそれを目にしていないと述べた。

「深刻な全面戦争について、マスコミは騒ぎすぎだと思う」とゼレンスキー氏は述べ、「私たちはあらゆるリスクを理解している。リスクがあるのだと理解している。ロシアのウクライナ侵攻について、100%信頼できる追加情報を誰か持っているなら、どうか私たちに共有して欲しい」と、集まった記者団に呼びかけた。

ウクライナの首都キーウでは12日、数千人が市内を行進。ウクライナへの忠誠を誓い、ロシアの侵攻には抵抗するというスローガンを繰り返した。行進を主催したのは右派ナショナリスト団体ゴノルと、ゼレンスキー政権と対立する極右活動家セルギイ・ステルネンコ氏だったが、右派に限らず多様な人が参加した。

現地で取材するBBCのエレナー・モンタギュー記者によると、大規模な行進ではなかったが、ロシアの部隊配備で昨年末から情勢が緊迫するようになって以来、市民感情がこうしてまとまった形で明確に示されたのは初めてだという。行進は首都中心部の独立広場まで進んだ。

キーウで乳母として働くサーシャ・ニゼルスカさんはBBCに対して、ロシアの攻撃には全力で抵抗すると話した。行進の参加者は年齢を問わず、同じようにロシアに抵抗すると口々に強調した。

米潜水艦めぐり米ロやりとり

12日にはロシア国防省が米海軍の潜水艦をロシア領海で探知したと発表し、これを米政府が否定すると言うやりとりもあった。

ロシアは、クリル諸島(北方四島と千島列島)近くのロシア「領海」で同国の太平洋艦隊が、米海軍の潜水艦を探知したと発表。潜水艦は浮上を指示しても応じず、駆逐艦マーシャル・シャポシニコフが「適切な行動」をとると、海域を離脱したと説明した。

これに対して米インド太平洋軍の報道担当、カイル・レインズ大佐は同日、「ロシアの領海で我々が活動していたというロシア側の主張は真実ではない」と反論。「潜水艦の正確な位置についてコメントはしないが、我々は国際水域で安全に飛行し、航行し、活動している」と強調した。

<分析> 首都に危機下の空気ないが――ポール・アダムズ外交担当編集委員

外国の大使館が次々とスタッフを退避させ、複数の国が自国民にウクライナを出るよう勧告しているが、それでもキーウはまだ、危機のさなかにある街という感じがしない。

ウクライナ政府は市民に、落ち着いて団結するよう呼びかけている。さらに今朝の政府声明の言葉を使うなら、安定を損ないパニックを作り出す行動を控えるようにと、住民に求めている。ゼレンスキー大統領は、国はあらゆる事態に備える必要があると述べた。

一方でウクライナ各地の外国人は、大急ぎで対応に追われている。キーウ在住28年で、この街で実業家として成功してきたスチュアート・マケンジーさんは、妻と息子2人を連れて飛行機で脱出したいと考えている。しかしいざとなれば、家族を車に乗せてポーランドまで500キロ近く運転する覚悟もできている。彼はウクライナが大好きで、こんなことになるなんてなかなか信じられないと話している。

イギリス大使館では、険しい表情のスタッフが荷物を車に積み込んで走り去るのを見た。誰も何も言おうとしなかった。

キーウから北に、ベラルーシ国境はそれほど離れていない。そして国境の向こうでは、ロシアがベラルーシと合同軍事演習を行っている。ロシア国防省が12日に公表した写真では、複数のロケット弾が発射されていた。ロシア政府はいまだに、ウクライナを侵攻するつもりはないと主張する。しかし、ウクライナに一歩も入らないまま、ロシアができることはたくさんある。

(英語記事 Ukraine tensions: A dozen nations tell citizens to leave Ukraine

タイトルとURLをコピーしました