難しい財政運営 国会で議論必要 – 石破茂

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 石破 茂 です。

 予算委員会の審議が信じられないほどの速いスピードで進み、随分と緊張感に乏しい国会が続いています。政府・与党にしてみればこれほど有り難いことはないのですが、「新しい資本主義」や「敵基地攻撃能力保持の是非」についても全く議論が深まらず、こんなことで本当にいいのか不安になってきます。

 金融を緩和すれば円安になり、輸出企業の収益が改善するわけですが、残念ながら日本の生産性や国際競争力は高まったとはいえず、賃金も上がらず、設備投資や研究開発投資もまだ期待される水準にはありません。

 アメリカ経済はインフレの様相を呈しつつあり、連邦準備理事会(FRB)や欧州中央銀行は金利の引き上げを強く示唆しています。おカネは金利の低い方から高い方に流れていくので、今後円安が加速され、輸入物価は更に上昇すると予測するのが自然でしょう。さりとてここまで大量の国債を発行し続け、日銀が521兆円もの国債を保有するに至っては、金利を上げると利払い額が急増して国債費が財政を今以上に圧迫することになりかねません。しかしこのまま日本だけが今のような金融緩和を続けていれば、「悪い円安」と「悪い物価上昇」を引き起こす懸念があります。非常に難しいかじ取りを迫られる財政運営について、真剣に語られないのは何故なのでしょう。

 「日本は盾、アメリカは矛という基本的な役割分担は変わらないが、敵基地攻撃能力を含め、あらゆる選択肢を排除しない」と総理は再三述べておられますが、どのような形で具体化するのかについては、かなり精緻な議論が必要です。

 従来政府は一貫して「専守防衛とは相手から武力攻撃を受けたとき初めて防衛力を行使し、その態様も自衛のための必要最小限度にとどめ、また保持する防衛力も自衛のための必要最小限度のものに限るなど、憲法の精神にのっとった受動的な防衛戦略の姿勢をいう」と述べてきており、「敵基地攻撃能力」のあり方によっては、従来の解釈のうち少なくとも一部の変更を余儀なくされます。マジックワードのように使ってきた「専守防衛」概念と、「必要最小限度」という量的概念と質的概念を敢えて意識的に混濁させた論理が、ついに限界を迎えたように思われます。

 「盾と矛」論についても、「核兵器による懲罰的な抑止力を持つような攻撃力(矛)は米国に委ねて日本はこれを保持しないが、それ以外は保持可能」というような議論が最近一部で見られるようになりましたが、「日米の基本的役割分担は変わらない」というのは果たしてそういうことなのでしょうか。

 私自身は策源地攻撃能力を保持することは否定しませんし、それを法的に可能とする答弁も国会で何度も行いました。しかし、法的に可能であってもそれを実現するにはまだ相当に超えねばならないハードルがあります。

 言うまでもないことですが、いかにして戦争に至ることなく、日本の独立と平和を維持するかが一番重要なことです。そこに至るまでには徹底的な議論と、透徹かつ一貫した論理構成が必要です。これを捨象して得られるのは、それに相応しい脆弱なものでしかありません。

 本日の衆議院憲法審査会で久々に発言の機会を得ました。前身である憲法調査会時代を含めれば、二十年以上この会に籍を置いていますが、議論が全くと言っていいほどに進展しないのには慨歎する他はありません。今日も自由討議とはいえ、ほとんどが言いっ放し、聞きっ放しに終始してしまいました。審査会の幹事諸兄姉の努力に心から敬意を表すとともに、今後さらに頻度を増して開催されること、そしてその議論が賛否含めてきちんと積み重ねられることを望みます。

 衆議院議員の定数配分が一対二を越えて違憲状態であるとの判決を受けて、改めて一票の格差と法の下の平等とは何かという議論が再燃していますが、「自民党の党利党略である」というような矮小化した批判は本質を見失うような気がしています。もちろん自民党として党利党略・孤利孤略による反対などは厳に慎むべきですが、むしろブロック制を基礎とした中選挙区制度への変更など、大きな枠組みで議論した方が建設的なのかもしれません。

私自身、小選挙区制度の導入に政治改革の大きな期待をかけたものですが、以前の中選挙区制度の大きな弊害であった「金権政治」的な側面は相当程度是正することができたようにも思います。現実との乖離に愕然としてばかりもしてはいられないと思うこの頃です。

 明日は建国記念の日(紀元節)です。例年地元の聖(ひじり)神社において建国記念のお祭りに参加することを習いとしているのですが、昨年・今年とコロナ禍で行けないのがとても残念です。「紀元節唱歌」は旋律のとても美しい佳曲で、来年は晴れて歌えることを楽しみにしております。
 日曜も、自民党鳥取県連関連の会議で鳥取に戻る予定です。
 東京は雪混じりの霙模様となりました。
 皆様ご健勝にて三連休をお過ごしくださいませ。 Source

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