福岡が富裕層から注目されるワケ – PRESIDENT Online

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福岡市では2015年から再開発事業「天神ビッグバン」が行われている。これからどう変わるのか。金融アナリストの高橋克英さんは「外資系企業やラグジュアリーホテルが進出する予定だ。投資が投資を呼ぶ好循環が起きて、名実ともにグローバル都市の仲間入りをするだろう」という――。

福岡市の風景 ※写真はイメージです – 写真=iStock.com/kuppa_rock

2015年に始まった再開発事業「天神ビックバン」

東京・羽田空港から2時間弱で到着する福岡空港から、九州随一の繁華街である天神まで市営地下鉄でわずか10分程で到着する。ステンドグラスが飾られ石畳が続く天神地下街から地上に出てみると、目の前には「天神ビジネスセンター(以下、天神BC)」がそびえ立っている。「天神ビッグバン」の規制緩和第1号案件として、昨年9月末に完成したガラス張りの建物だ。

福岡市による再開発事業「天神ビッグバン」とは、福岡市中心部の慢性的なオフィスビル不足などの解消のため、2015年に始まったものだ。国家戦略特区による「航空法高さ制限の特例承認」や福岡市独自の容積率緩和制度などを組み合わせ、期間限定ながら、従来よりも高層のビル(最大で高さ115mまで)を建てられるようにした。天神や博多など福岡市の中心地は、福岡空港からのアクセスは抜群な一方、あまりにも空港が近いため、航空法により建物の高さに制限がかけられているのだ。福岡市では、2024年までの10年間で30棟のビルの建て替えを誘導することで、年間8500億円の経済波及効果を生むとしている。

グーグルの入居検討が報じられた

天神BCでは、西日本シティ銀行による富裕層向け店舗などがすでに開業しており、建設主の福岡地所によると、NECやジャパネットホールディングス、米国のボストンコンサルティンググループが入居する。

また、西日本新聞(2021年10月30日)によると、GAFAの一角であるグーグルが天神BCに入居検討と報じられている。福岡では、2013年に進出した博多のLINE Fukuokaをはじめ、外資系や大企業だけではなく、DX企業やスタートアップ企業などの集積も進みつつあり、グーグルの進出により、さらなる集積につながるとの期待から、地元では大いに盛り上がっている。

こうしたなか、地元有力企業も負けてはいない。例えば、総資産28.7兆円を誇る日本最大の地銀であるふくおかフィナンシャルグループは、2021年5月、日本全国のデジタルネイティブ世代をターゲットにした地銀初のスマホ銀行「みんなの銀行」のサービスを開始。福岡発の最先端のデジタル銀行として、3年目には120万口座、預金2200億円を獲得し黒字化を目指している。

「ザ・リッツ・カールトン」が開業予定

旧大名小学校跡地では、積水ハウスや西日本鉄道、西部瓦斯などが主体となって、「天神ビックバン」最大級の複合ビルが建設中である。完成すれば25階建て高さ約111メートルのビルとなり、商業施設やオフィスに加え、上層階には、外資系ラグジュアリーブランドホテルである「ザ・リッツ・カールトン福岡」が2023年3月に開業予定となっている。

報道陣などに公開された天神ビジネスセンター。博多湾が一望できる=2021年10月4日、福岡市中央区報道陣などに公開された天神ビジネスセンター。博多湾が一望できる=2021年10月4日、福岡市中央区 – 写真=毎日新聞社/アフロ

福岡市では長年、最高級ホテルや大型オフィスビル不足が指摘されてきた。実際、市内にはホテルはあまたあるものの、いわゆる外資系高級ラグジュアリーホテルは、キャナルシティ博多に1997年に開業したグランドハイアット福岡のみだった。建設中の複合ビルのオフィス階は1フロア2500平方メートルと九州最大規模となり、ホテルには屋内プールや会議室も設けられるという。積水ハウスでは、総事業費を500億円、完成時の市への経済効果を1500億円と見込んでいる。

大阪、東京、京都、沖縄、日光、ニセコに続き、福岡に世界最高級のブランドホテルである「ザ・リッツ・カールトン」が誕生することは、福岡が名実ともにグローバルな都市へと飛躍する大きな転換点になろう。2023年に日本において開催されるG7誘致だけでなく、世界的な国際会議や見本市にスポーツイベントなどの誘致活動にも大いに貢献することになりそうだ。

「博多コネクティッド計画」「セントラルパーク構想」も進行中

福岡市では、「天神ビッグバン」同様、国家戦略特区の規制緩和と民間活力による再開発事業「博多コネクティッド計画」も進行中だ。山陽新幹線・九州新幹線の始発駅でもあるJR博多駅周辺では、博多阪急が入るJR博多シティやKITTE博多などの開業も続きにぎわいをみせている。「天神ビックバン」との連動と九州の玄関口としての発展を見込み、地下鉄七隈線延伸やはかた駅前通り再整備などとあわせ、容積率などの規制緩和により、ビルの建て替えを誘導している。すでに、西日本シティ銀行が本店ビル建て替え工事を実施中だ。

また、西日本新聞によると(2022年1月11日)博多駅前にある「ANAクラウンプラザホテル福岡」が「博多コネクティッド」を活用し建て替えられ、上位ブランドの「インターコンチネンタル」への転換も構想に含まれているという。

「天神ビックバン」と「博多コネクティッド」だけではない。2019年6月に福岡県と福岡市とが共同で打ち出した「セントラルパーク構想」では、福岡市中心部の良好な住環境の象徴でもあり高い人気を誇るエリアである大濠公園と舞鶴公園の一体的な活用を図り、福岡城跡や鴻臚館跡といった史跡も生かしながら、総面積約80haに及ぶ広大なミュージアム空間となるような公園づくりを進めるとしている。

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