さっぽろ雪まつり 中止できぬ訳 – PRESIDENT Online

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4億円の予算に対し「雪像はオンライン鑑賞で」

2月5日(土)「オンラインさっぽろ雪まつり」が開幕した。当初は規模を縮小して2年ぶりに大通公園で開催する方向だった「雪まつり」だが、オミクロン株の感染拡大を受けて結局、昨年に続いてオンラインでの開催となった。もっとも筆者も含めた大方の札幌市民の反応は「ふーん、まあ仕方ないよね」という淡泊なものだった。

「オンライン雪まつり」HPより「オンラインさっぽろ雪まつり2022」HPより

試しに「オンライン雪まつり」のページを開いてみると、オンライン配信用に制作した雪像「雪ミク(初音ミク)Grand Voyage Ver.」の制作過程や、完成した雪像でのライトアップショーの動画が上がっている。7日午後現在での再生回数は、制作過程が約2,600回、ライトアップショーが約7,300回。ちと微妙すぎやしないか、と思っていたところ、当サイトの編集者からこんなメールが届いた。

〈雪まつりのオンライン開催が決まったと聞いて、正直にいって「そこまでしてやらなければいけないの?」と思いました〉

かつて記者として札幌市政を取材した経験がある彼女によると、令和3年度(2021年度)の札幌市一般会計予算では「雪まつり実行委員会への補助金及び雪まつり大通会場における大雪像制作」として4億1800万円が計上されており、中止なら全額を翌年度に繰越せばいいものを、オンラインという中途半端な形での開催にこだわるのは、市がこの予算を消化したいがためではないのか、というわけだ。

言われてみれば、ありそうな話だ。こうした見立てに対して、札幌市の関係者は「その通りです」とアッサリ認めた。

「やらないなら何か代替案を考えなくては…」

「正直、オンラインで雪像を見ても面白くないでしょうね。ただ、全面中止にするとこれまでの歩みを止めてしまうので、苦肉の策だったのかなと。雪まつりのための予算はすでに決めているので、やらないなら何か代替策を考えなくては……となるのが役所の考え方です」(同前)

そこには「雪まつり」ならではの事情もあるという。地元記者が解説する。

「雪まつりは、札幌市が、札幌市内の企業・団体などから構成される『雪まつり実行委員会』に補助金を出す形で企画・運営されていますが、実行委員会の中心は大手広告代理店です。会場となる大通公園の丁目ごとに担当する代理店が決まっていて、彼らがそれぞれスポンサーを連れてきて、イベントも取り仕切る。例えば大雪像1個につきスポンサー料は約2億円で、こうしたスポンサー料などは札幌市からの補助金とは別枠扱いで、広告代理店にとってはオイシイ部分となります」

「予算を消化できるのならやらない手はない」

大手広告代理店がここまで力を持つに至った背景には、「雪まつり」が歩んできた歴史がある。1950年に地元の中・高校生が6つの雪像を大通公園に設置したことをきっかけに始まった「雪まつり」は、陸上自衛隊が「雪中訓練」の一貫として実質無償で大雪像の制作を手掛けるようになった50年代半ばから全国的にも認知されるようになる。

さらに1972年の札幌冬季五輪のころから、大手広告代理店が企画・運営に携わるようになると一気にメジャー化する。本来であれば観光閑散期の2月の札幌に国内外から200万人以上の観光客が詰めかける一大イベントとなり、その経済効果は500億円ともいわれる。

「以降、札幌においては、広告代理店を中心とした『実行委員会方式』が完全に定着し、雪まつり以外にも、初夏のYOSAKOIソーラン祭りや真夏のさっぽろ大通ビアガーデン、秋のさっぽろオータムフェストなど大通公園を会場とするイベントはすべて同じ構図です。もはや広告代理店の協力なしに札幌市がこれらのイベントを単独で企画・運営することは不可能なので、すべて“丸投げする”しかない。

フェスティバル※写真はイメージです – 写真=iStock.com/CHENG FENG CHIANG

また広告代理店ばかりでなく地元の観光産業やイベント関係者にとっても雪まつりがあるのとないのとでは、天国と地獄ほど違う。だからオンラインでも何でも、予算を消化できるのなら、やらない手はないわけです。さらにいえば、新聞やテレビなどのメディアも軒並み雪まつりの後援に名を連ねていますから、“税金のムダ遣いでは”という報道が出ることもありません」(同前)

昨年のオンライン開催では2億2060万円

なるほど。そのあたりの「大人の事情」については分かったが、一市民としてはやはり、その「オンライン雪まつり」に一体いくらかかるのかは気になるところだ。

札幌市が公開している事業評価調書によると、例年のフルスペックの雪まつりには、4億3000万円(2019年度)の事業費がかかっているが、昨年のオンライン開催のときには、実際にいくらかかったのだろうか。札幌市経済観光局観光推進課に電話してみた。

——昨年の「オンライン雪まつり」では、どれくらいの金額がかかったのでしょうか?

「令和2年度の収支決算が出ておりまして、決算額でいいますと、2億2060万円ですね。(フルスペックよりは)少しかかってないということになっていますね」

——その2億円の内訳というのは、どこかで見れるようになっていますか?

「細かい内容になりますと、決算書をつくっているのが、雪まつり実行委員会になるんですよね。実行委員会であれば、何にどれくらい使ったかを細かく把握しているはずです。われわれのほうではざっくりとした予算感と大きな項目でしか把握していないもので。(実行委員会なら)可能な範囲で教えてくれるはずです」

というわけで、今度は雪まつり実行員会に訊いてみる。

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