隠れ値上げ加えた物価はもう前年比2%上昇

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実態との誤差がある政府統計

駅前のスーパー、西友は品揃えが豊富、価格も安く、週に何回か買い物に行きます。セルフレジ(店員でなく、お客が自分で決済)の流れはよく、しかもカード決済をすると、3%OFFだからうれしい。コロナ対策を兼ね、セルフレジの愛用者が増えていました。

黒田日銀総裁 日銀HPより jcrosemann/iStock

その西友から昨日、「割引終了のご案内」という知らせがきて、「えっ。何でまた」と思いました。西友はクレディセゾンとの提携をやめるので、「ウオールマートセゾン・カード」限定のカード決済による割引も終えるとのことでした。

西友が楽天と提携するので、そちらのほうとの関係重視に切り替えるということなのでしょう。それはそれとして、「毎日3%OFF」、「感謝デー5%OFF(月4日)」の停止で、4月から3%ないし5%、消費者の支払いが増える。つまり実質的な値上げです。

セルフレジだと、店員の作業が減り、人件費が少なくなりますから、「3%OFF」は続けてもよかった。それができなくなったのは、輸入物価の上昇、円安の影響、物流費の上昇の影響が強まっているのでしょう。

値札は変わらなくても、支払金額は増えますから、西友は実質的な値上げをしたのです。西友だけに限らない動きをみます。よく言われる「隠れた物価上昇」か「ステルス値上げ(密かな値上げ)」の仲間なのでしょう。

米国のインフレ率は急上昇し、昨年12月の消費者物価は前年比で7%に達しました。欧州では1月5%の上昇です。一方、日本は12月、0.5%上昇(生鮮食品を除く)と低く、政府は「物価は落ち着いている」としています。

日銀は22年度の物価見通しを1.1%と低くしています。「金融引き締めで政策金利を引き上げたくない日銀が意図的に低くしている。実際は4月に2%に近づくだろう」という見通しが目立ちます。

昨年春、携帯電話料金が下がり、物価全体の上昇率を引き下げました。その相殺効果がなくなる今年の4月以降は、物価は2%以上、上がるでしょう。昨年11月の試算でも、携帯料金の影響を除くと、すでに2%上昇です。

さらに政府統計(総務省統計局)による物価には実態が十分に反映されていないと、思います。その一例が西友の「割引終了のお知らせ」なのです。店頭価格が上がらなくても、実質的な価格は上がっている。

西友に限らず、近くのドラッグストアでも、「1000円以上のお買い物は10%OFF」という割引を昨年秋、終了しました。店頭価格と実質価格に差があるように思う。消費者の体感では、物価はすでに2%は上がっている。

低インフレ時代になると、ちょっとした物価上昇でも消費者への影響は大きい。実質賃金はほとんど上がっていませんから、消費者の懐は痛みます。西友の「3%OFF終了」の影響も軽視できないのです。

総務省統計局のホームページに「隠れ値上げについて」という報告書が載っています。店頭の販売価格は据え置き、商品一個当たりの容量、重量を減らし、実質的な値上げを図っている実態の調査です。

「瓶詰のイチゴジャムの容量が165グラムから150グラムに減った」「ボディーソーは380mlから340ml」、「ドッグフードは165グラムが150グラムに」とか。ほかにもお菓子類、カレールウなども調べています。

報告書の日付は「平成30年2月」ですから、3年ほど前もので古い。新しい動きはどうなっているのか。リアルタイムで調査し、政府統計に反映させてみる必要があります。

消費者物価は、日銀が目標にしていた2%をすでに超え、しばらくはこの水準以上でしょう。異次元金融緩和の修正を考えるべき時がきました。


編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2022年2月5日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。

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