新幹線内でおなじみの雑誌「Wedge」で「財政破綻へ突き進む日本」という特集が組まれていた。全国会議員にも一読願いたい内容だった。
2021年度の一般会計当初予算の歳入は、3分の1が赤字国債だった。昨年末に可決された補正予算に至っては、税収と比べて赤字国債の方が倍だ。当初予算と補正予算を合算すると、赤字国債は歳入の40%になってしまった。プライマリーバランス(基礎的財政収支)の黒字化も見通しも、矛盾が多く楽観的過ぎてとても達成するとは思えない。
日銀は金融緩和を維持し続ける方針だ。白川方明前日銀総裁は、年頭の日経新聞のインタビューで、総裁当時、緩和規模が小さいなどと批判を受けたが「予想されるリスクや副作用を考えると、マネージできると考える域を超えて大規模に(金融緩和を)行うのは職業人として取りえない選択だった」などと述べ、現在の日銀の政策を全面否定している。
先日、ニッポン放送の番組で、モルガン銀行東京支店長で伝説のディーラーと呼ばれた元参院議員の藤巻健史さんと対談した。米連邦準備制度理事会(FRB)の政策金利の値上げに言及し「一方の日本は、金利を上げられない。上げれば日銀は債務超過に陥る。
今後、日米で短期、長期双方の金利に差が開き、円安ドル高が進む」と指摘していた。為替は1ドル120~130円まで円安が進み、日銀が無策ならば、さらに円安が進み、円はクラッシュしてしまうと警鐘を鳴らす。
私も講演会で今後数年の間に最悪起こりうることとして「物価が2~3倍になるインフレ」や「250~300円の円安」「年金や給与は変わらない」などと指摘しており、藤巻さんの見立てに同意する。
「日銀は政府の子会社」と発言する政治家もいるが、藤巻さんは「(日銀が)政府の一機関ならば、税金は不要になる。理屈上、紙幣はいくらでも刷れるが、信用ある紙幣かどうかが問題で、歴史が証明している通り、必ずハイパーインフレになる。中央銀行と政府は一緒にしてはいけない」と憂えていた。
生き残る会社の条件として、①円でなくドルで資産を持つ②損益分岐点を限界まで下げる③インバウンド需要を意識する④海外進出する⑤輸出事業を持つ―。この5つを私とワタミも実践している。
財政再建を本気で行うためには、国会議員がまず「身を切る改革」をすべきだ。しかし議員定数は絶対に削減したくないという「10増10減」や「文書通信交通滞在費」の甘い制度の維持など、歳出削減の改革は期待できない。
新幹線では旧知の議員ともよく会うが、日銀を批判し、財政再建に本気で取り組む議員はいない。財政破綻特集の雑誌を片手に「日本という列車はハイパーインフレという終着駅を目指している」。そうとしか思えない。
【夕刊フジ】「渡邉美樹経営者目線」(毎週火曜日連載)より