
コロナ禍の2年で鉄道会社の経営環境は大きく変わった。テレワークを導入する企業が一気に増え、政府は在宅勤務の継続の旗を振る。郊外から都心の勤務地に通勤するという鉄道需要が蒸発した影響は大きい。
各社は生き残りをかけて新たな移動ニーズの創出に取り組む。小田急電鉄は3月12日のダイヤ改正に合わせて、ICカード利用時の小児運賃を「全区間一律50円」にする。6歳以上12歳未満(小学生)の場合は半額となるが、小田急のように一律運賃にするケースは珍しい。
新宿―小田原間の運賃(交通系ICカードを使った場合)は大人が891円で小児運賃は半額の445円だが、これが50円に引き下げられる。同時に小児用の通学定期券は全区間一律で1カ月800円とする。子育て世代の交通運賃負担を軽くして、小田急の利用者を増やす狙いだ。“小田急のファン”づくりの深謀遠慮であり、小田急沿線に住んでもらいたいという思いに溢れている。
小田急は「子育て応援ポリシー」を策定している。子供が楽しめるイベントや駅への子供専用トイレの設置、車内のベビーカースペースの拡充などを展開中。19年からは1日全線フリー乗車券を通常の1000円から大幅値下げして100円で期間限定で販売した。
ここでの経験が今回の小児運賃の値下げにつながった。「子育て応援ポリシー」時の調査では、運賃を下げたことで子供1人に少なくとも大人1人が小田急線を利用。7割弱の人がフリー切符を100円にしたことがきっかけとなって外出していた。外出した人のうち9割以上の人が沿線で買い物し、7割弱が小田急の施設を利用していた。運賃を下げれば減収となる。「子供運賃50円均一」で小田急は年間2.5億円程度の減収を見込んでいる。
子供の外出に合わせて大人も外出し、小田急の施設で買い物などをしてくれれば、グループ内で減収分は取り戻せるとソロバンを弾いている。鉄道業界には「良いものはすぐ真似される」とのジンクスがある。関東の私鉄では小児運賃の「全区間一律50円」が広がることになるかもしれない。
小田急は3月12日にダイヤを改正する。「着席して通勤したい」というニーズの高まりを受け、朝のラッシュ時間帯(午前6~9時)の特急ロマンスカー「モーニングウェイ号」を3本増発。一方、比較的利用の少ない日中・夕夜間帯の一部列車を減便する。藤沢―片瀬江ノ島間は特急ロマンスカーなどを除き、各駅停車による折り返し運転のみとなる。特急ロマンスカー・VSEは3月11日で定期運行を終了する。箱根観光専用の特急列車として2005年3月にお目見得した。展望席や大型の窓が特徴で小田急の代名詞となっていた。今後はイベント列車として運行する予定という。
東急は13%値上げを申請
東急電鉄は1月7日、2023年3月の運賃値上げに向け国土交通省に運賃改定の申請を行ったと発表した。運賃を12.9%引き上げ、普通運賃の場合、距離に応じて10~60円値上げする。新型コロナウイルスの影響で利用者数は減少しており、今後も回復しないとみて値上げに踏み切った。

