毒にも薬にもなる日米連携

アゴラ 言論プラットフォーム

1月21日、岸田首相とバイデン大統領が電話会談で意気投合、様々なことを話し合い、バイデン氏はとても有意義だったと述べました。今春にはバイデン氏が初のアジア訪問で日本で2+2の会合を開催することも決め、岸田首相にとっても夏の参議院選に向け成果を示すことが出来そうです。

Oleksii Liskonih/iStock

ただ、私がかなりうがった見方をすれば「傷をなめ合った」のではないかという気がしてならないのです。バイデン氏は今、完全な四面楚歌です。国内は共和党だけではなく、民主党内部も分裂、自身の目玉政策である200兆円のBuild Back Better Planは身内をまとめられず、留保状態にあります。秋の選挙では上院、下院とも民主党は主導権を失う公算が見えてきており、頼みの副大統領はもっと不人気です。

対外政策についてみれば欧州がアメリカに対して冷たいように感じます。ウクライナ問題も同胞であるアメリカと欧州、ウクライナそれぞれの主張が微妙に違う中、アメリカの強引さと様々な利害関係がある英独仏に温度差がある状態です。中東とイスラエルはトランプ時代からの振り戻しですきま風、イランの交渉も進まず、アフガンでは汚点、中国は吠え続け、北朝鮮は花火を打ち上げています。

その中で日本は保守のリベラル派である岸田首相なので思想的には非常に近く、そもそものウマは合いやすいところで「俺のことが分かってくれるか?、フミオ?」「もちろんですよ、ジョー」といった感じだったのでしょう。個人的には発音しにくいフミオではなく、フミーのほうが受けはいいと思いますけどね。

毒にも薬にもなる日米連携、これはどういうことかといえば私は日本がそろそろアメリカを利用するときが来たのだと思っているのです。つまり70年代に一時話があった世界の派遣のバトンタッチの焼き直し版です。当時の派遣のバトンタッチとは20世紀初頭に英国からアメリカに派遣が移り、ポンドからドルの時代になったそれを言います。もちろん、今、アメリカが演じる世界のリーダーの主役交代はあらゆる意味でできません。但し、アジアの盟主として日本が果たせる役割は大きいはずです。

こういう見方をすると批判を受けるかもしれませんが、地球上で一番人口が多いのはアジアで37億人で約6割を占めます。一方欧州は9%で、北米は5%にとどまります。また白人とアジア系の数もざっくり4倍の開きがあります。ところが実質的には世界は白人支配の構造になっています。これを緩和するためにも日本がアジアでのリーダーシップをとらねばならないし、老化現象が激しいアメリカからすれば「日本よ、もう少し頑張ってくれよ」というのが本音のはずです。

白人とアジア人は肌の色の問題ではなく、価値観と宗教的背景がかなり相違します。それが白人にはなかなか理解できないこともあるのです。このギャップを埋めることができる候補が日本だと私は以前から考えています。これが日米提携を通して一部でも禅譲してもらえる可能性はあるのです。これを生かすか、殺すかは日本次第です。

一方、毒の方は日本がアメリカ迎合主義に陥っている点です。これは戦後からあまりにも強い文化、社会、経済的影響を受け続け、アメリカにNOを言えない国になってしまった点です。独立国家でありながら自分では自立しているとは言い切れないのです。それが日米安保です。好む好まざるにかかわらず、日本はこのおかげでエコノミックアニマルになり、無防備で何かあればアメリカ頼みが可能でした。例えば尖閣問題一つにしてもアメリカに「尖閣は日本のものだよね」と同意を求め安堵する流れです。「自分ことを自分で主張できないんかい?」という声は出ません。

一方、北方領土が返還されない最大の理由の一つはウクライナ問題と同根で、あそこを日本に返したらアメリカ軍がそこにミサイルを設置してシベリアに向けるだろう、というプーチンの脅しに対抗できないわけです。韓国が朴槿恵時代にゴルフ場を潰して中国に向けてミサイルを設置して中国と韓国が疎遠になったのと同じです。別にアメリカはその気があれば北海道でそれを作ってもいいわけでロシアの詭弁に過ぎないのですが、それを言い切ることができないのが今の日本です。

とはいえ、個人的にはここまでがっちり作り上げた日米連携ですから、それはしっかり続けていくことが有益かと思います。ただ、今後はいつまでもアメリカの言うなりになるのではなく、日本の立場をしっかり説明し、外交上、強いニッポンを演じてもらいたいと思っています。あと20年もすれば戦争も戦後も知らない日本人が主流になるのです。あの時の話がまるで明治維新の時と同列で語られる時代は来るのです。その時、「なんで、日本ってアメリカにぺこぺこするの?」と子供に聞かれてお父さんは何と答えるのか、ここが私が憂うところであります。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年1月31日の記事より転載させていただきました。

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