書き出し小説大賞第229回秀作発表

真冬のトングは冷たい。

タカタカコッタ

電球をはずしている天使がいた。

劇団斉藤

安定しないパフェをひたすら削っていく。

もろみじょうゆ

弱いWi-Fiを拾っている間に人生は終わる。

たこフェリー

タバコをくゆらせ、元魔法少女は使い魔と共に月夜に消えた。

七世

寄り添ってくれる曲より、無邪気に振り回してくれる曲がいい日もある。

キキ

久しぶりに帰った地元は、どこか傾いている気がした。

みよおぶ

目で「母熊がいる」と伝える。

ろっさん

どうやらバグパイプおじさんが近づいてきたようだ。

ビールおかわり

今すぐにでも走り出しそうな人が面接にやってきた。

もんぜん

倒れていく歯医者の椅子の上で、二頭の赤べこの下顎を眺める。池の中から水を飲みに来た赤べこを見上げるとこんな感じだろうなと思う。

井沢

崖沿いを歩くのが好きだ。下であれ上であれ。

井沢

時は移ろい、私服がユニクロとしまむらに置き換わって行く。

ぐるりん

私は泣くので、おろおろしてください。おろおろしてくれるだけでいいんです。

正夢の3人目

焼肉屋でカルビを注文しなかった日の帰り道。少年の僕が遠くで手を振っていた。

トニヲ

「私ね、干支がないんです」着ぐるみの女に耳打ちされた。

suzukishika

ひとりの舞妓さんがコンビニのバックヤード奥に消えた後、すっぴんの女性店員が現れた。

さくさく

中身を補充したシャンプーのポンプを何度も押し、押す指先に重みを感じられるようになるまでの、短い時間。

紀野珍

立て続けの全休符に、今、不安を感じています。

髙橋きよてん

トロフィーは重さだ。

ぴすとる

小銭をばらまきながら、笑顔で駆け寄って来た。

寂寥

犬を追い越し雪にダイブした。

g-udon

走行しているうちに、最初の位置に戻ってきた初めての二段階右折。

菅原かつを

バカ。自由帳。極太マジック。

寂寥

「そうか、答えを写せばいいじゃないか！」

傍上

「ハンバーガーに人差し指をぶっ挿してさ、いろんな方向から食べるとウマいぜ。」

寂寥

ねりけし大食い世界記録が大きく塗り替えられようとしている。

モンゴノグノム

初めて「美女木ジャンクション」と聞いた時は、鼻血が止まらなかったものさ。

モンゴノグノム

ヤマダ電機へヤマダ電機の社員のコスプレをして行っている。

いそうろう

モノマネをしすぎて地声がわからなくなった。

午前0時

目を覚まし、砂時計を横にした。

ぴすとる

曇天の過ごし方がわからない。

にら将軍ハルナ

塗れるだけ塗る。

正夢の3人目

伏線回収って何曜日なの。

ベランダ

ドローンの上に乗るが、飛ばない。

いずも

バカが砂場の砂を全部出した。

prefab

全身、鉢巻き。

morin

蟹を離さない。

morin

三点倒立。極まれし土下座。

ろっさん

なんにでも頷いた。

ビールおかわり

五時間目の寝言が美しい

タクタクさん

だからタピオカは発見した人の名前じゃないし、蓮根は最初から穴があいてるんだって。いや工程の話じゃなくて。

うにねこ

バカは45人くらい集めることで、本来持つ力を発揮することができる。

七寒六温

あいつに国宝を持たせたのは誰だ！

インターネットウミウシ

その日その瞬間まで俺だけは死なないし、宝くじは当たると思い込んでいた。

ミミズグチュグチュ