新型コロナの「武漢研究所流出説」が中国への忖度で握りつぶされていたことが政府の文書により判明

GIGAZINE
2022年01月13日 14時10分
メモ



アメリカ大統領の首席医療顧問であるアンソニー・ファウチ氏をはじめとする政府の有力な専門家たちが、新型コロナウイルスの起源は「中国の武漢にあるウイルス研究所から流出したもの」である可能性を早い時期に認識しつつも、中国への配慮などから黙殺していたことが科学者同士のメール文書から明らかになったと報じられています。

House Oversight letter and email transcriptions – DocumentCloud
(PDFファイル)https://www.documentcloud.org/documents/21177759-house-oversight-letter-and-email-transcriptions

Scientists believed Covid leaked from Wuhan lab – but feared debate could hurt ‘international harmony’
https://www.telegraph.co.uk/news/2022/01/11/scientists-believed-covid-leaked-wuhan-lab-feared-debate-could/

Republicans Release Text of Redacted Fauci Emails on Covid Origins
https://theintercept.com/2022/01/12/covid-origins-fauci-redacted-emails/

新型コロナウイルスの起源についてはコウモリヘビといった野生動物由来だとする説が唱えられていますが、一部の科学者はウイルスが最初に発見された中国・武漢市の研究施設から漏れ出たものではないかとも指摘していました。この「武漢研究所流出説」は当初陰謀論として猛反発を受けましたが、2021年5月に科学者18名が再調査を要求したのを皮切りに見直しの動きが世界中で進められています。

新型コロナウイルスの「武漢研究所流出説」が世界を動かすまでの戦いとは? – GIGAZINE


イギリスの一般紙・The Telegraphは2022年1月11日に、「各国政府の政策に強い影響力を持つ有力な専門家らが、新型コロナウイルスが研究所から偶発的に流出した可能性は高いと考えつつも、中国との関係悪化に対する懸念から議論を控えていたことが、電子メールの公開により明らかになりました」と報じました。

伝えられるところによると、イギリスの医療系公益団体・The Wellcome Trustのジェレミー・ファーラー所長からアメリカ国立衛生研究所のフランシス・コリンズ所長とアメリカ国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長に宛てられた2020年2月2日のメールには、「新型コロナウイルスはセキュリティが低い研究所でSARSコロナウイルスのようなウイルスから急速に進化したもの」という説が「可能性の高い真相」として言及されていたとのこと。


ファーラー氏はまた、アメリカ・スクリプス研究所の免疫学者でSARS研究の第一人者でもあるマイク・ファーザン教授の見解を引用して、「彼は新型コロナウイルスに見られる『フリン切断部位』という部分の特徴が、研究室外で発生したウイルスであると説明するのを難しくしていると述べています」と書いた上で、「私は、ウイルスが研究所から漏れ出した可能性と自然界から偶然出現した可能性の割合は、70対30か60対40だと思います」とコメント。新型コロナウイルスは、SARSコロナウイルスをヒトの細胞の中で繰り返し継代培養した結果、誤って人から人へと急速に感染するようなウイルスになってしまったものである可能性があるとの見方を示しました。

ファーラー氏はその後のやりとりで前述の割合を50対50に改めました。他方で、一連のメールでは新型コロナウイルスのフリン切断部位が自然界では珍しい点についてイギリス・エディンバラ大学のアンドリュー・ランボー教授が同意していることや、アメリカ・テキサス大学のボブ・ギャリー氏という研究者がウイルスの自然発生説に納得していないと述べていることなども分かっています。

これに対し、ファウチ氏は「これ以上の議論は科学界全体、特に中国の科学界に不必要な害を与えるでしょう」と反応。コリンズ氏も「国際協調を損ないかねません」として議論を早々に打ち切り、話題を陰謀論やデマの押さえ込みに移しました。


今回明らかになったメールのやりとりは、アメリカ連邦議会の下院監視委員会が、以前の情報公開請求により公開された文書の修正があまりに多すぎることから、政府に改めて文書の開示を求めたことにより公開されたものです。共和党所属の下院議員であるジェームズ・コーマー氏は「この文書は、ファウチ氏のような専門家が以前話していたよりもはるかに真剣に武漢研究所流出説を受け止めていたことを示すものです」と述べました。

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