新型コロナ「5類格下げ」って何?

アゴラ 言論プラットフォーム

新型コロナをインフルエンザと同じ5類にすべきだという議論が高まっています。これはきのう維新が問題を提起しましたが、わかりにくいので、ちょっと解説しておきましょう。

Q1. 5類って何ですか?

政府は去年1月、コロナを新型インフルエンザ等感染症に指定しました。これは感染症法の「1類感染症」であるエボラ出血熱などとほぼ同じですが、次の表のように1類より強い(外出自粛要請はコロナのみ)扱いです。症状がなくても隔離(就業制限)されますが、医療費はすべて無料です。

東京新聞より

5類はインフルエンザと同じで、普通の開業医にみてもらえます。保健所にいちいち報告する義務はなく、入院させる必要もありません。

Q2. どうして格下げが必要なんですか?

コロナは保健所に申し込んで発熱外来という特別の病院でないとみてもらえないので、オミクロン株のように陽性が多くて重症の少ない病気だと、病院がパンクします。これが病院や保健所の負担になっているので、5類に分類して普通の開業医でもみられるようにすべきだという専門家が多いのです。

Q3. でもオミクロンの感染は増えてますよね?

オミクロンの検査陽性者数は増えていますが、症状は鼻や喉などの上気道が中心で、肺炎は少なく、WHOも「オミクロンの重症化リスクは低い」と認めています。

Q4. 重症化率が少なくても感染が多いと死者は増えるんじゃないですか?

結果がすべてです。きのうのコロナ死者は全国でたった2人。死亡率でみると、図のようにアメリカの1/500で、2020年より差が大きい。重症や死亡が増えるのは多少タイムラグがありますが、死亡率が500倍になることは考えられません。

FT.com

Q5. 政府はなぜ5類にしないんですか?

「人命軽視だ」とマスコミの批判を浴び、内閣支持率が下がるからです。5類に格下げすべきだという議論は2020年からあり、安倍首相も8月末の退陣のとき「2類以上の扱い(指定感染症)を見直す」と言及しました。

しかし菅首相は見直さず、コロナに慎重な姿勢をとったことで批判を浴びて失脚しました。それをみた岸田首相は、外国人の全面入国禁止というゼロコロナに振り切ってしまいました。

Q6. 厚労省はなぜ格下げをいやがるんですか?

今は保健所の全数検査で感染を監視できますが、5類になるとサンプル検査になって保健所を通さないので、もともと弱い厚労省の権限がほとんどなくなります。

コロナの指定を変更するのは政令だけでできますが、感染症法の分類を変更するには法改正が必要になります。また特措法の対象からはずれるので、外出自粛など行動制限の法的根拠がなくなるのも大きいと思います。

Q7. 感染が増えているとき格下げすると、十分な対策ができないんじゃないですか?

それは逆です。陽性は増えていますが、ほとんどは軽症・無症状なので、全員入院させると医療が崩壊します。ボトルネックになっている保健所をバイパスし、開業医でも扱える医療態勢をとるべきです。

「5類に落としても開業医はコロナ患者をいやがる」という反論がありますが、検査は開業医でもできます。重症患者を公立病院や大病院に集約し、軽症患者は自宅療養でいいのです。

Q8. なぜそういう役割分担ができないんでしょうか?

医療法では行政に配置転換の権限がなく、患者の受け入れを命令することもできません。日本医師会の政治力が強く、行政の介入を許さないのです。これを変えるには医療法を改正して行政の介入権限を明記する必要がありますが、岸田首相は法改正の先送りを決めました。

Q9. 法律を改正しなくても運用で改善できるんじゃないですか?

厚労省も保健所の調整介さずに医療機関にコロナ治療を認め、事実上の5類相当に格下げしたようです。このように役所が権限を握ったまま、実際の扱いは手加減して民間をコントロールするのが、日本の役所のいつものやり方です。

これだと役所の裁量が大きくなり、法律にもとづかない「要請」や「指導」で行動制限が行われます。また1類相当の扱いが、緊急事態宣言などの過剰な行動制限の根拠になっています。感染症法を改正して、コロナを正式に5類にすべきです。

Q10. 政治家は何をしてるんですか?

コロナに甘い顔をすると支持率が下がるので、去年の総選挙ではこの問題は争点にもならなかった。立憲民主党などは「緊急事態宣言を出せ」といっています。しかし安倍元首相は、今年初めのインタビューで「5類として扱うという手はあります」と語りました。

Q11. 5類に落とすと医療費が3割負担になって貧乏な人がかわいそうでは?

平年は1000万人がかかって1万人ぐらい死ぬインフルが3割負担ですから、日本ではそれと被害がほぼ同じコロナの医療費を無償にする必要はありません。でもそれが政治的に通らないなら、感染症法に新しい分類をつくり、ワクチンは(インフルも含めて)無償にしてもいいと思います。

維新も今までこの問題にふれなかったのですが、初めて問題提起したのはいいと思います。国会でも議論してほしいものですが、その原則は費用対効果のバランスです。インフルとほぼ同じコロナに、今までのような過剰対応をしていると、経済的被害だけではなく、社会がこわれてしまいます。

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