Intel参入で三つ巴に。AMDはRadeon RX 6000Sシリーズと6nmダイで激化するノートPC向けdGPU市場に対応

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Radeon RX 6000Mシリーズの下位2SKUは世界初の6nmで製造されるダイを採用

 AMDはCES 2022が開催されているメディアデー(1月4日、現地時間)に、オンラインで製品発表会見を行ない、2022年に投入を計画している複数の製品を発表した。発表されたのは新しいSocket AM5を採用するデスクトップPC向けのRyzen 7000シリーズ、RDNA 2の内蔵GPUを採用したノートPC向けのRyzen 6000シリーズ、そしてデスクトップPC向けの新しいGPUとなるRadeon RX 6500 XTとRadeon RX 6400、ノートPC向けのRadeon RX 6000Mの追加SKUとRadeon RX 6000Sとなる。

 それぞれの発表内容に関しては以下のレポートが詳しいので、そちらをご参照いただきたい。ここではCESでの追加取材で判明したノートPC向けRadeon RX 6000Mシリーズの追加SKUと、Radeon RX 6000Sについての詳細などについてお伝えする。

Intelも加わって激化するノートPC向けのdGPU市場、AMDの新しい武器はRadeon RX 6000Sシリーズ

AMD グローバル・ゲーミング・マーケティング部長 ササ・マリンコヴィッチ氏

 今回AMDはノートPC向けの外付けGPU(以下dGPU)として、Radeon RX 6000Mシリーズの追加SKU(Radeon RX 6850M、6650M XT、6650M、6500M、6300M)と、新しいシリーズとしてRadeon RX 6000Sシリーズ(Radeon RX 6800S、6700S、6600S)を発表した。

 Radeon RX 6000Mシリーズの追加SKUに関しては、新しいSKUの追加なので特に驚きはないが、製品名末尾にSが付くSシリーズはどんな製品なのだろうか?

Radeon RX 6000Sシリーズ

 AMD グローバル ゲーミング マーケティング部長 ササ・マリンコヴィッチ氏は「Sシリーズは電力効率と電力あたりの性能に特化した製品になる。それにより20mm以下の厚さのノートPCをOEMメーカーが容易に設計できる」とSシリーズの狙いを説明する。

 Sシリーズを単純化して言ってしまえば、これまで提供してきたMシリーズ(Radeon RX 6000Mシリーズ)よりも、TDP(熱設計消費電力)の枠をやや引き下げたdGPUと考えることができる。

【表1】Radeon RX 6000Sシリーズのスペック(AMDの資料より筆者作成)
Radeon RX 6800S Radeon RX 6700S Radeon RX 6600S
グラフィックスパワーレンジ 60~100W 50~80W 50~80W
コンピュートユニット(Cu) 32Cu 28Cu 28Cu
シェーダープロセッサ 2,048 1,792 1,792
ゲームクロック 1,975MHz 1,890MHz 1,881MHz
GDDR6メモリサイズ 8GB 8GB 4GB
メモリスピード 16Gbps 14Gbps 14Gbps
【表2】Radeon RX 6000Mシリーズのスペック(AMDの資料より筆者作成)
Radeon RX 6850M XT Radeon RX 6800M(*) Radeon RX 6700M(*) Radeon RX 6650M XT Radeon RX 6650M Radeon RX 6600M(*) Radeon RX 6500M Radeon RX 6300M
グラフィックスパワーレンジ 130W~165W 130W~145W 90W~135W 80~120W 80~120W 80~100W 35~50W 25W
コンピュートユニット(Cu) 40Cu 40Cu 36Cu 32Cu 28Cu 28Cu 16Cu 12Cu
シェーダープロセッサ 2,560 2,560 2,304 2,048 1,792 1,792 1,024 768
ゲームクロック 2,463MHz 2,300MHz 2,300MHz 2,162MHz 2,222MHz 2,177MHz 2,192MHz 1,512MHz
GDDR6メモリサイズ 12GB 12GB 10GB 8GB 8GB 8GB 4GB 2GB
メモリスピード 18Gbps 16Gbps 16Gbps 16Gbps 16Gbps 14Gbps 16Gbps 16Gbps
製造プロセスルール 7nm 7nm 7nm 7nm 7nm 7nm 6nm 6nm

(*)は従来からあるSKU

 例えば、SシリーズのトップSKUとなるRadeon RX 6800Sは、32Cuで8GBのGDDR6メモリというスペックで、チップの性能やスペック的にはMシリーズのRadeon RX 6650M XT相当になっている。前者のグラフィックスパワーは60~100Wになっているのに対して、後者は80~120Wだ。

 つまり、最小でも最大でも40Wほど低くなっているのが特徴だ。現代のノートPCではdGPUのTDPは、OEMメーカーがGPUメーカーが提示しているレンジの中で自由に選択できる。

 例えば、OEMメーカーが最小で設計すると、Radeon RX 6800SはGPUに対して最大60Wを供給し、そこから発生する熱を排熱できるように設計すれば良いのに対して、Radeon RX 6650M XTでは80Wになるので、20W分の差が出ることになる。

 この20Wというのは決して小さい差ではなく、20W増えればそれだけ大きな放熱機構が必要になるし、ACアダプタや電源回路も余裕を持って設計しなければいけなくなる。そう考えれば、AMDがSシリーズを導入した狙いは、ゲーミングノートPCでも進む薄型化に対応するものだと分かる。

Radeon RX 6000Mシリーズ全8製品のうち下位2製品は6nmで製造される新しいダイ

Radeon RX 6800SはノートPC版のNVIDIA GeForce RTX 3080を1080pゲームで平均して10%上回るとAMDは主張

 今回のCESでも多くのノートPCベンダーが、薄型化したゲーミングノートPCを発表していた。そうしたノートPCにdGPUとして採用するために必要な切り札がRadeon RX 6000Sシリーズだと言える。

 CESではAMDも、NVIDIAも新しいノートPC向けのdGPUを発表したほか、IntelもArcブランドでノートPC向けdGPUのOEMメーカーへの出荷を発表するなど、従来の2社による競争から3社による競争に切り替わっている。

 つまり、今後競争が激しくなるノートPC向けdGPU市場にAMDが手を打ってきたわけだ。マリンコヴィッチ氏によれば、Radeon RX 6800SはノートPC版のGeForce RTX 3080 Laptopと比較して、1080pのAAAタイトルで平均して10%性能が上回っているという。

下位2つのSKU(Radeon RX 6500MとRadeon RX 6300M)は6nmプロセスルールで製造される。Navi 24というコードネームのダイだと見られている

 なお、Radeon RX 6800Mシリーズの追加SKUに関しては、Radeon RX 6850M、6650M XT、6650M、6500M、6300Mが追加SKUとなる。

 マリンコヴィッチ氏によれば、このうちRadeon RX 6500MとRadeon RX 6300Mが6nmで製造される新しいダイになり、それ以外の以前からある3つのSKU(Radeon RX 6800M、6700M、6600M)を含めて残りのSKUは7nmで製造されているという。

 今回発表されたもののうち、7nmで製造されている上位のSKUは以前から提供されているものの派生品であり、6nmに関しては新しいバリュー向けのダイが利用されている可能性が高い。

 AMDいわく、この2製品は世界で初めて6nmで製造されるdGPUになるということだ。AMDは今回この新しい6nmで製造されるダイのコードネームを明らかにしなかったが、OEMメーカー筋の情報によれば「Navi 24」の開発コードネームで呼ばれてきたダイであるとのことだ。

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