失敗しないヘッドセット選び。ノイズリダクション付きを使ったら、騒音(犬の鳴き声)がかなり小さくできた 【テレワークグッズ・ミニレビュー 第24回】

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 テレワークが定着したINTERNET Watch編集部では、それぞれの住環境の中で、仕事環境を改善すべく日々工夫を凝らしている。この連載では、そんなスタッフが実際に使ってオススメできると思ったテレワークグッズのレビューをリレー形式で紹介していく。


Web会議のクオリティを左右するヘッドセット、失敗しないヘッドセットとは?

 昔、ようやくみんなが携帯電話やPHSなどを持ち始めたころの話だ。母が急用で兄に連絡しなければいけないことがあった。ちょうど兄が社会人になって携帯電話を持ち始めたころだったので、携帯に電話するようアドバイスすると、母は手書きの電話帳を出してきて「あった、あった、この番号だ」と電話をダイヤルし始めた。そして呼び出し音が鳴り始めたところで急に不安そうな顔で聞いてきた。

「これ、誰が出るの?」

 思わず吹き出しつつも「兄貴しかいないだろ」と答えたわけだが、母にとっては人生初の携帯電話。当時、電話と言えば固定電話で、「●●さんいらっしゃいますか?」と繋いでもらうのが当たり前の時代だった。それからすると、携帯電話というのは会社の人が出るのか、はたまた電話交換所の人でも出るのか? と不安になるのも分からなくはない。

 なぜこんな話をしたかというと、コロナ禍になり始めたころの話だ。筆者は初めてオンライン会見を取材することになった。恥ずかしながらそれまでWeb会議ツールなど使ったことがなかったので、なにをどう準備してよいのかも分からない状態。とりあえず手持ちのノートPCにはカメラもマイクも付いているからなにもいらないと教えてもらい、リアル取材の感覚で開始時刻の30分前には案内のメールのURLをクリック。促されるままにソフトをインストールしてどうやら準備は整ったようだ。確か画面には、ホストが入室を許可するまでロビーで待ってなさいみたいなメッセージが出ていたと思う。そして画面が変わるのをじっと待ちながら思った。

「これ、誰が出るの?」

 それまでのリアル会見であれば、最初に受付で名刺を渡して会場入り、というのが普通であったから、オンラインでもそういったものがあるのかと思っていたワケだ。会場には早めに入っておくのが鉄則で、まさか開始時刻ギリギリまで画面が切り替わらないとは思わず、このまま入れなかったらどうしようかと不安になったものだ。

 まるで初めて携帯に電話した母と一緒だが、といっても当時はほかの参加者も似たようなものだったと思う。会見が始まってからも「挙手ボタンがみつからない」とか「ミュートの仕方が分からない」とか、参加者だけでなく主催者も含めてだれもが不慣れだったし、失敗してもそれが許される雰囲気であった。

 あれからまだ2年も経たないが、状況はだいぶ変わった。今では会社の会議室にもWebカメラやスピーカーフォンが置かれるようになり、Web会議はビジネスに必要不可欠なツールとなった。

 そして、みんながWeb会議ツールを普通に使いこなせるようになった分、以前よりも失敗が許されない雰囲気になった。手持ちの機材を組み合わせて、「とりあえずWeb会議できればOK」といった状況から、Web会議なんてスムーズにできて当たり前、というフェーズに変わってきたと言えるだろう。

Web会議のトラブル、「声が遠い」「聞こえない」

Web会議のキモ、ヘッドセット選びは悩みのタネだ

 Web会議で多いトラブルといえば、音に関するものだろう。相手の話している声が聞こえにくい、ノイズが大きい、声が途切れるなどというのは、聞かされる方にとっては不快なだけでなく、場合によっては話が伝わらずビジネスに支障を来す。

 やっかいなのは「原因が自分の環境にあるかもしれない」ということだ。相手が同僚であれば気軽に確認もできるが、客先などが相手だとそうもいかない。それは相手にとっても同じこと、Web会議で失敗しないためには、ヘッドセットなどの音まわりにはこだわっておきたい。

 ということで前置きが長くなったが、今回はそんな音まわりのトラブル解決に役立ちそうなエレコムのノイズリダクション付きヘッドセットのレビューをお届けしたい。ノイズリダクションとはノイズキャンセリングと違って、相手に周囲の騒音を聞こえにくくして、自分の声だけをクリアに届けるというものだ。

理想のヘッドセットを求めていろいろ使ってみた

 コロナ禍になって最初に筆者が使ったヘッドセットは、昔のiPhoneに付属していたイヤホンだった。当時はまさかこんなにもコロナ禍が長引くとも思っていなかったし、とりあえずお金を掛けずに手持ちのものでなんとかしようと試みた。

 しかし社内のWeb会議で声が遠いと言われてしまう。マイク部を持って口元に近づけてしゃべれば問題ないのだが、それでは会議中片手がふさがってしまう。そこで手持ちのビデオカメラ用のマイクを繋いでみたりいろいろと試行錯誤してみたのだが、やはり声が遠いとのこと。もはや手持ちの機材では難しそうなので、いよいよアナログ接続ではなくUSB接続の専用ヘッドセットを買うことにした。

とりあえず手持ちの機材で使えるモノ、ということで引っ張り出したiPhone用のイヤホン

ビデオカメラ用の外部マイクなども試してみたが、いまひとつだった

 当時は、大きいヘッドセットをつけるのに抵抗があったので、できるだけシンプルなデザインのモデルが欲しいと思って選んだのがゼンハイザーの「SC 60 USB ML」だった。ゼンハイザーというブランドと、業務向けの製品というところの信頼感で選択した。

 この選択はうまくいって、その後会議で声が遠いと言われることはなくなった。見た目的には実はプラスチッキーでチープなのだが、カメラ越しにはそんなことは分からず、むしろ存在感の薄いシンプルな感じに好感が持てた。

 ただし、問題もあって、複数の会議が続いたりして長時間つけっぱなしていると耳が痛くなってくる。イヤーパッドの部分が薄く、挟み込む力が直接耳に伝わる感じだ。

ゼンハイザー SC 60 USB ML。業務用ヘッドセットのエントリーモデルとの位置づけ

シンプルなのは良かったが、長時間だと耳が痛くなってしまう

音量とミュートを操作できるリモコン

 そんな中、気になったのが同僚の環境だ。ヘッドセットもつけていないのに声がよく聞こえるので聞いてみると、なんとネックスピーカーを使っていたのだ。

 詳細については過去にレポートが上がっているのでご覧いただきたいが、話を聞くとなかなか良さそうなので、筆者も同製品のOEMの一つであるJVCケンウッドの「NAGARAKU」を購入した。

 これがすこぶる快適だった。当然ながら耳を塞ぐことはないので圧迫感もないし、マイクのブームを出し忘れて声が遠いなんてミスもない。とても軽いので、会議のあとにうっかり外し忘れることもしばしば。バッテリーもかなり持つので、ときどき思い出したときに充電するぐらいで問題ない。おかげでゼンハイザーの出番はなくなったかに思われた。

JVCケンウッドの「NAGARAKU」。これはとても便利でオススメできる製品の一つ

ネックスピーカーだがマイクも内蔵していて、ヘッドセットとしても十分に使える

装着したところ。軽いのでいつも外すのを忘れる

 しかし問題が発生した。それまで社内会議では一度も途切れたことがなかったのだが、オンライン取材の途中でBluetoothの接続が途切れたのだ。しかも質疑応答で私の質問に対して答えてくれているところだったのでタイミングが悪い。

 電源を入れ直したら再び接続できたのだが、音声が切れるタイミングによっては致命傷だ。それ以降は途切れたことはないのだが、それでもやっぱり失敗できない取材の際は、有線接続のゼンハイザーを使うことにしている。

ノイズリダクションで犬や子供の泣き声も大丈夫!?

 ということで、ゼンハイザー「SC 60 USB ML」とJVCケンウッドの「NAGARAKU」の使い分けが筆者のWeb会議のスタイルとなったわけだが、これでも1つ問題があった。

 それが周辺のノイズだ。我が家にはペットがいるのだが、宅配便のトラックの音や、インターホンに反応して吠え始める。これがWeb会議でも聞こえてしまって迷惑を掛けることがしばしば。すぐに鳴きやんでくれればいいのだが、宅配などで妻が出て行くとその間ずっと吠えていたりする。

 そんなときはミュートにしておくのだが、いざしゃべろうとするときにミュートのままだったりすることもあるし、そもそもミュートにしていると、なんか発言しなくていいような気分にさえなってしまうという弊害がある。

 そんなところに登場したのが、エレコムのデュアルマイクノイズリダクションUSBヘッドセット「HS-HP101UNCBK」というわけだ。レビュー用に商品を貸していただけるというので早速試してみた。

 最大の特徴はデュアルマイクノイズリダクションシステムだろう。ブームの先に付いた口元のマイクのほかに、本体側にもマイクを内蔵していて、その2つのマイクの音の差からDSPが周辺の雑音だけを除去し、声だけをクリアに伝えるというものだ。スペックでは最大約35dBのノイズ低減が可能とのことで、これは地下鉄車内(80dB)で通話しても、相手には図書館で会話しているような静けさで聞こえるとのこと。

エレコムのデュアルマイクノイズリダクションUSBヘッドセット「HS-HP101UNCBK」

 実際に聞いてもらえば分かると思うが、効果は絶大だ。百聞は一見にしかず、いや、百文字は一聞にしかず、実際にZoomを使ってみて、ノイズリダクション付きの「HS-HP101UNCBK」とノイズリダクションのないヘッドセットで比べてみた。

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デュアルマイクノイズリダクションUSBヘッドセット ELECOM「HS-HP101UNCBK」の実力を検証してみた(1分32秒)

 仕事部屋の隣のリビングに愛犬がいるのだが、リビングのテレビに動物の映像を流してわざと吠えさせている。しかし改めて動画で撮って確認すると、犬の鳴き声は結構うるさいことに気が付かされる。一方エレコムのノイズリダクション付きヘッドセットだと、犬が吠えているのは分かるものの、比べるとかなりボリュームが抑えられていて、話の内容が伝わらないような状況にはまずならなさそうだと言えるだろう。

 これまで犬が吠え始めてしまったときにはマイクをミュートにしていたのだが、これならその必要もなさそうだ。また、会社のWeb会議用のブースが埋まってしまっている場合にも、周囲の音を気にせずに利用できそうだ。

 接続はUSBなので電波が途切れる心配もなく、イヤーパッドの部分も厚みがあって長時間の会議でも耳が痛くなりにくそうだ。また、見た目的にもほどほどの大きさで、黒を基調にしたビジネスユースとして使いやすいデザインになっている。

 同製品には片耳モデルの「HS-HP100UNCBK」もあるが、テストしたのは両耳モデル。両耳モデルには「L」と「R」の表記があって、その通りにつけるとマイクブームやケーブルが左側に来る。ただし形状的に前後の違いはなく、マイクブームもどちらにでも動くので、左右逆向きにつけることも可能だ。Web会議であればモノラルなので、「L」と「R」が逆になっても問題ないだろう。

 マイクブームはフレキシブルになっていて、口元に近づけることもできる。また本体は折りたたみ可能なので、カバンに入れるときにはコンパクトにすることも可能だ。ただし、収納ケースなどは付属していない。

 ケーブルにはリモコンが付いていて、ハードキーでボリューム調整やミュートが可能。ただ、リモコン部分がそこそこ大きいので、クリップなどで固定できるようにするともっと使い勝手が良くなりそうだ。

装着状態。決して大きすぎず、デザイン的にもシンプルでビジネスユース向けと言える

 もちろんBluetooth接続のネックスピーカーの方が軽いし、気軽に使えるが、Web会議での一番の課題であるノイズをここまで低減でき、ビジネスユースとして恥ずかしくないデザイン、電波の切れる心配がない有線接続。しかもエレコムというブランドの信頼感もある。取材や客先との打ち合わせなどでは、間違いなくエレコムの「HS-HP101UNCBK」を使うだろう。ビジネスで失敗できない人には強くオススメできる製品だと思う。

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