どう見る2022年マネー相場

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マネー相場の予想ほど難しいものはありません。専門家のさもありなんとする予想がこれから1-2週間、ずらっと並ぶと思いますが、基本的に予想というのは過去を見ながらその枠組みで未来を見ることになります。つまり人間版AI予想と同じです。なぜなら金融市場を揺るがすような事件は事前に知る術がないからです。また日本の金融機関は予想そのものに冒険心がないのでコンサバティブになりがちです。

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その中で私は「2022年の相場は乱高下する」とひと月ぐらい前に述べたと思います。また昨日の10大予想で「株価予想は困難」と申し上げました。そのポジションに変わりはありません。理由は2020年3月からの上昇相場が無限に続くことはなく今年は節目を迎えそうだからです。

強気と弱気が交錯する理由はコロナ明けに対する読みが不一致だからともいえます。言い換えればコロナだからこそ、この1年9か月の相場があったともいえるのです。変な話ですが、オミクロン株がどう影響するかについて世界であぁでもない、こうでもないと揉んでいる間は株式市場は一定の枠組みの中で健全な動きをするといえるのです。

ではその「コロナ規制」から自由を得た時、ベクトルは360度違う方向に飛び散るでしょう。これが予想できないポイントなのです。例えば消費が好調、だから企業業績は好調、人件費もうなぎのぼりのシナリオもその前提条件はコロナ規制の中での動きだから、ということを忘れてはいけないのです。消費者は「ないものねだり」をしていると言ったらよいでしょう。

では今年の相場付きはどうなるのか、ややあまのじゃく的に見ると買われすぎたアメリカ株、頭を押さえられた日本株、暴落した中国株が逆回転をする前提に攻略することになるとみています。

まず北米株ですが正直今、買えるものはないです。全く食欲がわかない、それが正直な意見です。敢えて言うなら鉄鉱石やリチウムなど一部の資源株と動乱に備えた金関連株はまだピーク感がないのですが、それ以外はHOLDかSELLで対応を考えています。1-3月期の決算をどう見るか、なのですが、10-12月決算を超えるのは容易ではないとみています。ではマネーは何処に向かうか、ですが、不動産か国債への一時的な振り向けが妥当だと思います。全般的に北米株は守勢に入る、これが私の予想です。

次に日本株ですが、ゴールドマンサックスあたりは日本株は光り輝くと予想しています。一方、日本の専門家の予想は比較的ばらけるのですが、日経平均35000円から23000円程度とばらつきがあります。仮に北米市場が頭打ちになるなら日本株が「孤高高」になることは予想しにくいところです。北米株と日本株の連関性は下落に対してレバレッジを伴う同調性、上昇に対してはリンケージが外れる(北米上昇も日本は停滞)のがこのところの傾向です。

かつてはざっくり、日経平均とダウは円とドルの違いを超えて同じぐらいの指標値でした。ダウが2万㌦なら日経平均も2万円といった具合です。ところが今は8000ポイントも引き離されてしまいました。同調していれば日経平均は今頃38000円で史上最高値が期待されたところだったのです。ついていけなかった理由は市場参加者が外国人投資家に席巻され、国内機関投資家の相対的減退、企業の持ち合い解消も含め市場への参加率の低下、個人の外国株への浮気など日本株の魅力減退そのものなのです。間接的には日銀の買い入れが相場をつまらなくした部分もあります。

その間、世界規模で打ち出せる夢と希望のリーダー的産業の育成が欠如しました。個別企業ではなく、産業レベルです。それとあまりにもボラティリティが大きいのも問題です。たとえば再生エネルギーの最大手東証一部のレノバは年末に秋田沖の洋上風力発電の競争入札に敗れ3日間で株価が半分以下になりました。レノバの株価は落札できなかったただけでここまで叩かれるのか、そしてアナリストはそんな程度の分析しかしていなかったのか、というレベルの低さを物語ったのです。

これが日本株の最大の悪い癖とも言えます。言い換えれば市場の厚みがなく、マネーが目先しか追っていないのです。かといって買い上がる時はお祭り騒ぎで全てのデータを無視する好都合ぶりを見せます。市場が育っていない、その一言に尽きます。

岸田政権はわくわくドキドキさせる政権ではなく、ちっとも面白くないので株価予想も間引くべきでしょう。2-3年先には日経平均は4万円に達すると思いますが、今回の波動でそこまでは達することは困難だとみています。ただ、企業業績は底堅さがあります。「地域的な包括的経済連携(RCEP)協定」も発効し、アジア地区における日本の有利さが出ますので想定を超える事件が起きなければ底堅いながらもやや広いレンジでの動きとなるのではないでしょうか?

最後に中国株ですが、中国の好き嫌いと投資マネーは全く別次元で考える必要があります。中国の政権と企業の能力は切り離してみるべきでしょう。そして確実に言えることは中国株は業績と比べ、極めて安い、これはほぼ断言できます。

では風向きは変わるのか、です。昨年の中国株売り叩きは習近平氏のイデオロギー任せで経済の自立性を全く無視した数々の方策や発言がボディブローのように効いたものです。アメリカ上場の中国株は一年で数分の一になったものがほとんどです。

一方、企業ですので政府などから特殊な力がかからない限り企業業績こそ尊重すべき唯一の論理性を持った事実です。よって中国株でも業種や政治的絡み合いを見ながらバーゲン価格を拾っていくには絶好のチャンスだとみています。

習近平氏も3期目の就任を目指すのであれば経済の低迷は避けなければなりません。、今年の秋までの習氏の行動パタンは2つの極端な選択のどちらかしかないとみています。1つは強引で力づくの政策実行、もう1つは2-3歩下がって反習近平派との調整を進めるという流れです。少なくとも経済の悪化は国民を敵に回すことになるので一定の配慮があるとみています。

利下げに転じたのもその一環で恒大集団の救済も政府主導で行う可能性があります。清算会社と健全会社に仕分け、健全会社を国営企業が取り上げ、引き続き完成販売や資産売却を進める一方、現経営陣は清算会社でそのみそぎを行わせ、乗り切るつもりではではないか、とみています。

他にも2022年の為替や金利の読み方は気になるところですが、そちらについてはまたこのブログでおいおいカバーしていきたいと思います。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年1月3日の記事より転載させていただきました。

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