武蔵野市議がヘイトスピーチ危惧 – 川名 ゆうじ

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毎日新聞が、「ヘイトスピーチに襲われた街 住民投票条例案がきっかけ 東京・武蔵野市」の動画を公開している。ヘイトスピーチ解消法が施行されている今にあって、ヘイトとは何かを考え、なくしていくことが必要だ。

■法律で禁止されているのに

「表現の自由」、「言論自由」は守るべきものとは思うが、差別発言とは異なるのではないか。発言する人の自覚にかかっているともいえる。対象となった人がどのような思いになるかで考えるべきものだ。
 
 例えば、法務省のサイトには『特定の国の出身者であること又はその子孫であることのみを理由に, 日本社会から追い出そうとしたり危害を加えようとしたりするなどの 一方的な内容の言動が,一般に「ヘイトスピーチ」と呼ばれています 』と書かれている。

 そして、ヘイトスピーチの何が問題なの? との疑問に対しては『人々に不安感や嫌悪感を与えるだけでなく,人としての尊厳を傷つけたり,差別意識を生じさせることになりかねません。一人一人の人権が尊重され,豊かで安心できる成熟した社会の実現を目指す上で,こうした言動は許されるものではありません。
 民族や国籍等の違いを認め,互いの人権を尊重し合う社会を共に築きましょう』とも書かれている。

■武蔵野市で起きたこと

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 ヘイトスピーチ解消法の正式な名称は、「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」。
 第二条には、不当な差別的言動の定義として、『専ら本邦の域外にある国若しくは地域の出身である者又はその子孫であって適法に居住するもの(以下この条において「本邦外出身者」という。)に対する差別的意識を助長し又は誘発する目的で公然とその生命、身体、自由、名誉若しくは財産に危害を加える旨を告知し又は本邦外出身者を著しく侮蔑するなど、本邦の域外にある国又は地域の出身であることを理由として、本邦外出身者を地域社会から排除することを煽動する不当な差別的言動をいう』としている。

 この前提を理解したうえで、武蔵野市で行われていたことを考えることは重要だ。左派右派の問題ではない。

 ヘイトスピーチは、街頭での発言だけでなく、ネット上も対象となる。
 法務省人権擁護局は、平成31(2019)年に地方法務局長などへ「インターネット上の不当な差別的言動に係る事案の立件及び処理についての依命通知を出し、「プロバイダ等に対し,その旨の情報提供を行い,約款に基づく削除等の対応の検討を促すことが望ましい」としている。そのさい、精神的苦痛を受けた者から意見を聴取することは必要なく社会通念に照らして客観的に判断する他にないともしている。
 
 苦痛とは、言葉によるもの、特にネット上も含むことになる。
 実際に訴訟などへの道は険しいようだが、民事では訴訟が起こされており、判決が注目されている(※1)。

■アメリカで起きていることは武蔵野市にも?

 ヘイトは武蔵野市だけの問題ではないのはご承知のとおりだ。

 アメリカでも問題となっており、アジア系住民へのヘイトクライムは、去年の2.6倍になっているという(※2)。NHKのBS1スペシャルで2021年12月30日に放送された「”アジアンヘイトクライム”と戦う」(※3)の中では、日本人も対象になったことや、直接暴力を受けている映像が放送されていた。
 イギリスでもアジアの人へのヘイトが増えており「自分の国へ帰れ」との罵声があったり暴力も起きたりしているという。日本で行われていることが、海外では日本人へ向けられていることも起きている(※4)。この動きは世界でも日本でも止めるべき時期だろう。

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 アメリカでは、ヘイトクライム防ぐための法律が2021年5月に成立(※5)してはいるが、起きてしまう背景には、新型コロナウイルス症がひとつの要因となったようだが、社会的な貧困、不満の蓄積が弱者や少数へ向けられていることがあるとされており、そう簡単には解消ができない印象がある。同じのようなことが日本、武蔵野市でさらに加速するかもしれない。
 当然だが、ヘイトは肉体的苦痛だけでなく、ネット上の発言による精神的苦痛も含まれる。

■ヘイトを考える年に

 ヘイトスピーチ解消法第四条2には、『地方公共団体は、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組に関し、国との適切な役割分担を踏まえて、当該地域の実情に応じた施策を講ずるよう努めるものとする』とも書かれている。

 努力義務とは言え、武蔵野市で検討すべき事態になってはいないか? 規制はなるべく少なくすべきとは思っているが、なぜ、そのようなことが起きているのかも考えたうえで、対策は今後の大きな課題だ。

 住民投票条例では、多くのご意見をいただいた。真摯なご意見はあったが、ヘイトと受け取れる例は少なくなかった。この記事にもそんな反応が来るのだろう。
 条例の賛否ではない別次元として、ヘイトを考えていく必要が来年はありそうだ。偏見、差別をなくしていく決意が必要だ。

  ◆

 2021年大晦日。よいお年をお迎えください。笑う門には福来る。そんな年にしていきましょう。

※1 「日本国は我々のもの」「帰れ」とブログ書き込み 在日女性が40代男性をヘイトと提訴(11/19) BuzzFeed Japan / YahooNews
※2 アメリカ アジア系住民へのヘイトクライム 去年の2.6倍に(2021年5月6日) NHK NEWS WEB
※3 「“アジアンヘイトクライム”と戦う」(初回放送日: 2021年12月30日) NHK BS1スペシャル
※4 「お前が中国ウイルスだ」 イギリスでも増えたアジア系へのヘイト BBC News japan

※5 米 ヘイトクライム防ぐための法律 バイデン大統領署名し成立(2021年5月21日) NHK NEWS WEB

【参考】
法務省 ヘイトスピーチ、許さない。
毎日新聞 ヘイトスピーチに襲われた街 住民投票条例案がきっかけ 東京・武蔵野市

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