やってはいけない保険の選び方 – PRESIDENT Online

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「熱心に勧めてくれたから」と高額な保険計画を結んでしまい、後で後悔するということは少なくありません。ファイナンシャルプランナーの長尾義弘さんは「どんなに親切な営業職員であっても、義理で保険を買ってはいけない」と苦言を呈します――。

※本稿は、ムック『NEWよい保険・悪い保険2022年版』(徳間書店・タウンムック)の一部を再編集したものです。



※写真はイメージです – 写真=iStock.com/fatido

「どこで相談しても同じ」は大間違い

保険はどこで加入したらいいのでしょうか? ということを聞かれることがあります。しかし、同じ保険商品で同じ保障内容なら、どこで契約をしても同じ保険料です。保険料の割引はありません。割引をしてはいけないと法律で決まっているからです。

では、条件は同じなのだから保険会社の営業職員でも保険乗合代理店からでも、どこで契約をしてもいいかというと、そうではありません。すでに保険商品が決まっている場合には別ですが、保険を相談するところによって、すすめられる保険商品が違ってきますし、そもそも、すすめられる保障内容も異なります。

そうすると、相談をする相手によって保険料は月額数万円違ってきて、保険料総額になると数百万円、数千万円の差が出ることもあります。ですから、保険を相談するところはとても大事です。

では、どこで保険の相談をするのが一番いいのでしょうか?

今回は、保険契約する場所、つまり保険の入り口についてお話をしてみましょう。

生命保険は比較検討が難しい金融商品

生命保険は、とても複雑な金融商品です。なぜ、複雑なのかというと、保険会社によって保障内容や特約などさまざまで比較検討が難しいからです。それに検討することが多いからかもしれません。

検討する項目というのは、まずどんな保険が必要なのかということから始めます。保険とは、不安を解消してくれる商品なのです。不安って何かと言うと、もし死んだら残された家族が心配とか、病気になって入院したらお金がかかるのが心配、がんになったときの心配、介護になった時の心配。などなどさまざまな心配があります。

心配事をすべて保険で解決してくれるわけでもないし、すべてを保険で解決しようとしたらお金がいくらあっても足りません。ですから、まず保険のジャンルを選びます。

そして、どのくらいの保障額にすればいいのか? というのも検討する必要があります。必要保障額というのは社会保障で足りない分を保険で補うというのが正解なのですが、そのために社会保障って何があるのか? ということを知っておく必要もあります。

そうなると保険を選ぶにあたって難しいので、誰か専門の人に相談したくなってしまいますね。

保険会社の営業職員だと他社の商品と比較できない

では、いったい誰に相談をすればいいのでしょう? もっとも多いのが生命保険会社の営業職員です。

生命保険文化センターの調査によると、保険の加入経路は55.9%が保険会社の営業職員です。やはり対面による相談が安心できるのでしょうね。

では、営業職員から加入するのは、いいのかというと、お勧めできる相談者ではありません。

なぜなら、保険会社の営業職員は、自社製品しか販売できません。他の商品と比較することができないからです。商品の比較をせずに契約をするというのは軽率だと思いませんか?

また、営業職員はいろいろと親切に説明をしてくれるかもしれませんが、それは営業のためです。親切な営業職員だからといって、義理で保険契約をするのは、待ってください。保険の総額を考えると数百万円、数千万円という商品です。義理で契約するにしては高額な商品なのですよ。



※写真はイメージです – 写真=iStock.com/Pitiphothivichit

無料相談は保険を売るのが目的です

では、数社の保険会社と契約できる乗合代理店では、どうでしょうか?

乗合代理店とは、保険の無料相談ということで、駅前とかショッピングセンターの中にある来店型の保険代理店です。たしかに数社の保険会社の商品から選んでくれてオススメの2〜3商品を提案してくれます。無料で相談できるのでいいのかと言うと、そうではありません。その理由は「無料」というところです。

「無料」だといってもボランティアで相談にのってくれるわけでありません。結局は保険の販売が目的です。保険を販売すると保険会社から手数料を受け取ることができます。それが店の売り上げですし、給料につながっていきます。つまり保険代理店のクライアントは、お客ではなく保険会社なのです。

ですので、販売側としては手数料の高い商品を中心に勧めたいのが心情です。または、「この人には保険は必要がないかな」と思っても、「保険は必要ありません」とは、言わないはずです。最終目的は保険を販売することなのですから。

「和牛」のプレゼントにはご注意を!

では、お金のプロであるファイナンシャルプランナー(FP)に相談するのはどうでしょうか?

相談料が有料のFPは、相談者がクライアントになるので有利なアドバイスを心懸けるでしょう。ただ、FPでも、無料の保険相談という人もいます。これは、保険の販売を中心にしている人かもしれません。保険を売ることが仕事ですね。注意が必要です。

ネットの中には、保険の無料相談のサイトがあり、保険の相談を依頼すると「牛肉」や「お米」のプレゼントがもらえるというのがあります。「無料相談なのに、プレゼントまで!」なんて美味しい話と思ってしまいますが、注意してください。

これは、保険の相談依頼があったときに、サイトに登録しているFPに相談の情報を販売し、その情報を買ったFPが相談者にコンタクトを取る仕組みです。FPの方は相談者の情報を買っているので、何としても保険を売らないと元が取れません。なので、熱心に保険をすすめられることになります。不要な保険まで勧められる可能性があるので注意が必要です。

保険の広告がない情報誌による情報収集が必要に

では、ネットや通販から選ぶのはどうかいうと、これはオススメです。ただし、自分で選ぶので、ある程度の保険の知識が必要になってきます。もちろん、チャットやオペレーターに相談はできると思いますが、必要な保険をチョイスしたり、保障内容を選択するのは自分で決めることになります。

死亡保障額はいくらにするのかとか、保障期間はいつまでなのか? 特約を付ける場合には、どれを付けるのがいいのか? ということも、決めます。

ですので、保険の知識がないと、ちょっとハードルが高くなることもあります。そのためには、保険の情報収集をあらかじめしておく必要があります。

その情報は、雑誌やムックなどの利用するのがいいと思います。雑誌やムックで保険のランキングが掲載しているものがあります。ただ保険の広告が掲載されている情報誌はあまり参考にしない方がいいでしょう。広告を掲載しているということは、決して公正中立とは言えないからです。ぜひそのことを知っておいてください。

ネットのランキングは売りたい商品順になっている?

インターネットで、保険サイトが多くあります。保険の比較サイトです。保険の比較をしながら、資料を請求したり、相談や申込みができるようになっています。

ただ、こういった保険比較サイトは、サイトで扱っている商品だけの比較です。ですから専門家がよい商品だと評価している商品が入っているとは限りません。



ムック『NEWよい保険・悪い保険2022年版』

ランキングというのも、資料請求のランキングとか問い合わせのランキングです。サイトの上位に表示している商品がランキングでも上位になりやすいです。つまりネットのランキングというのは、ある程度売りたい商品のランキングでもあるのです。保険の比較サイトの収益は、広告料とか販売手数料なのです。そうであれば売りたい順になってしまうのは、仕方がないことでしょう。

保険は同じ商品ならどこで契約しても同じ保険料と、最初に述べました。しかし保険選びでもっとも大切なのは、どの商品を選ぶかということです。その商品を選ぶための情報をどこで得るのかで、保険商品の選び方がガラッと変わるのです。

できるだけ、公平中立の立場でアドバイスを受けることができ、納得できる商品を選ぶようにしてください。

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長尾 義弘(ながお・よしひろ)
ファイナンシャルプランナー、AFP、日本年金学会会員
お金のしくみ、保険のカラクリについての得する情報を発信している。徳島県生まれ。大学卒業後、出版社に勤務。いくつかの出版社の編集部を経て、1997年に「NEO企画」を設立。出版プロデューサーとして数々のベストセラーを生みだす。著書には『最新版 保険はこの5つから選びなさい』『かんたん!書き込み式 保険払いすぎ見直しBOOK』『老後資金は貯めるな!』(河出書房新社)、などがある。
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(ファイナンシャルプランナー、AFP、日本年金学会会員 長尾 義弘)

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