神田沙也加さん 遺書報道の衝撃 – 篠田博之

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写真:Motoo Naka/アフロ

神田沙也加さんの報道についての事務所と両親の要望

 年の瀬に衝撃の事件が相次いだ。ひとつは12月17日に起きた大阪ビル放火殺人事件だ。そしてもうひとつは18日に松田聖子さんの娘、神田沙也加さんが亡くなったことだ。

 21日に沙也加さんの事務所はこういうコメントを発表している。

《本日、ご親族のご希望により、密葬という形で家族にて葬儀を執り行わせていただきましたことをご報告申し上げます。

警察による詳細な検証の結果、事件性はなく、転落による多発外傷性ショックが死因であるとの報告を受けました。転落の原因につきましては、神田本人の名誉と周囲の方々への影響を踏まえて公表を控えたく、お含みいただけましたら幸いです。》

 そして最後にこう付け加えた。

《なお、ご親族やご友人のプライバシーに関わるような記事の掲載、過剰な取材行為、インターネット上での根拠のない誹謗中傷に関しまして、お控えいただけますよう改めてお願い申し上げます。》

 両親始め関係者の心痛を思えば当然のことだろう。

 その夕方、神田正輝、松田聖子両人も囲み会見に応じた。父親の神田正輝さんは「暫くの間そっとしておいていただけたらありがたいと思います」と話した。続いて松田聖子さんが「本当にみなさん、お寒い中、申し訳ありませんでした。ありがとうございます」と涙をこらえながら頭を下げた。

厚労省も素早くマスコミにメッセージ

 2人が立ち去ろうとした時に芸能記者が「今のお気持ちは…」と声をかけた。それがネットを始め、非難の嵐になった。2人が会見に応じたのは「そっとしておいてほしい」という気持ちを伝えたかったからと思われるのだが、その言葉の直後にこの質問が投げられたからだ。会見を報じたワイドショーでも、この記者の行動に批判的なコメントが相次いだ。

 ネットでは「遺族の気持ちを少しは考えろ」という批判が拡大し、そもそもこんな時にマスコミが会見を開かせること自体が間違いだという声もあった。

 22日朝のフジテレビ系「めざまし8」では司会の谷原章介さんがこのニュースを伝えたうえで「今のこの、神田さんについての報道は『めざまし8』では一線を引いて終わらせたいと思います」と語り、「本当に失礼いたしました」と頭を下げた。

 この件については、19日という早いタイミングで厚労省が「メディア関係者各位」というリリースを出した。こう書かれている。

《昨日12 月18 日、女優の神田沙也加さんが逝去され、死因が自殺である可能性があるとの報道がなされています。著名人の自殺に関する報道は、その報じ方によっては、著名人をロールモデルと考えている人(とりわけ子どもや若者、自殺念慮を抱えている人)に強い影響を与え、「模倣自殺」や「後追い自殺」を誘発しかねません。

 ご承知の関係者の方も多いと思いますが、昨年は 11 年ぶりに自殺者数が前年比で増加しました。いのち支える自殺対策推進センター(JSCP)が日次データで分析したところ、7 月19 日と9 月27 日から10 日間程度、自殺者数が急増していることが明らかになりました。いずれも、著名人の自殺と自殺報道が強く影響しているとみられ、自殺報道は極めて慎重にしていただく必要があります。》

 神田沙也加さんが亡くなったことについては、それ以降、報道も減っていった。ただ報道を見ていて多くの人が気になったのは、テレビやネットニュースなどが必ず末尾に「いのちの電話相談室」などの連絡先を付けていたことだろう。毎回それがつくので、むしろそっちの方が目立ってしまい、「あれ、もしかして自殺だということなのか」と思った人も多いと思う。さらに、これだけ告知したためか、電話してもつながらないという声が多く、いったい何のための連絡先告知なのかという声もある。

 厚労省のリリースにあったように昨年も三浦春馬さんの自殺の後、同様の状況になったのだが、このやり方、報道機関も機械的にやるのでなく、もう少し考えてはどうだろうか。

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